大学行きたいけど、本当にこれでいいの?
10時、2度目の「おはようございます」for you all。なんとか講義には間に合いそうだ。ただ1つ物凄く思うことがある。
現状:上は男物下着、下男のトランクスを履いた美少女が同じ身長のものだからと男の頃の服を着ている。センスは女の子でも全然通用すると思う。てか、めちゃくちゃ似合ってる。鏡の俺結婚してください。そして意外と上重い。あと、デカくてムラムラする。
上適当に買った(いや、でも、優斗が選んでくれた)コンビニのブラと言われしもの、下、優斗が選んでくれたコンビニのパンツに代えようと思ったけど、脱がないと無理じゃん。
「ゆ、優斗。あの、あれだ、その、それだ」
「どれだよ、アニキ」
なんでこんなに言葉が出ないんだ?いつもの気を遣わなくていい、楽な関係だろ?なんで、ドギマギすんだ?結婚できてしまう性別だから?高鳴ってしまう胸、的な?やめろ、俺に青春なんか似合わねぇよ。
誰だよ、2回目の大学で女子10人に囲まれながら、そのうち3人が別の人と付き合って、そのうち2人の彼氏は俺が良く話す人で、咲の彼氏は俺と優斗の共通の友人で、結果独り者のモテ男は?
何このハーレム独り者とか言う寂しい生き物は?
黙って妄想世界にアクセスしてると優斗が「アニキ、大丈夫?その、よくしゃべるアニキが黙ってるの凄い、違和感」と、何とも不器用だけど、思ってくれてる事が伝わる言葉をぶつけられた。普段俺のことを良く見てるコイツだからこその言葉。その事実というかなんというかで「あー、それは、あれだよ。ほら、お昼どうしようか?学食いく?」と適当な話題しか振れなくなる、俺。もっとあっただろ。
「それも良いけど、俺は家で食べる。金ないし」
「なんで金ねぇんだよ。食事に金使えよ。心配になるだろうが、俺が。生きててくれないと俺が寂しいんだよ」
迷いのない本音だった。
コイツ、横にいると安心するし、面白いし、ワードセンスいいし、たまに本気で抱かれたくなる。でも、男だからと線を引いて1歩引いてるのかコイツ。他の人の恋愛には聡そうなのに、自分のことになると不器用。自分よりも人を思い、人の痛みがわかる、たまに言葉事故って痛みに突き刺してくるけど、そこも可愛いのだ。だから、気付けバカヤロー。
「アニキ、その美少女な見た目と美少女ボイスでそれ以上、言うな。襲いそうになる。可愛い」
「か、可愛い言うな。その…少しは…嬉しい…けど」
お互いにドギマギしちゃうのなんで?昔、「俺、女になっても違和感ねぇわ。身長女子平均、握力女子、身体能力大体女子だし、上と下が変わるぐらいだろ?」とか考えてたやつ、誰?
俺だよ。
そら、上と下しか重量は変わってない気がする。もっとデカいのあんだろ。胸とか。……ちげえよ。
結婚できてしまう事になる。報われないと思ってた恋心が報われてしまう可能性だ。しかも、アイツ童貞で女子慣れしてないからこの見た目と声でイチコロかもしれない。あとは、金。コイツ趣味に金使うと自分の分がなくなるという中々に残念な人だからなぁ。
だから、俺が横で大金持ちになって、コイツをギャフンと言わせて、ギャフンからの「一緒に住もう」とかならんか。
「アニキ、行かないと遅れそうなんだけど、下着どうした?」
「えっ?い、今は男物で全部間に合わせてる。その、優斗の前で着替えるの、前は普通に大丈夫だったけど。なんか恥ずかしくて」
「そこに扉あるだろ?その奥なら見えないから持ってって着替えて来い。さすがにその見た目でノーブラトランクスは駄目だ」
「そ、そうだよな。着替えないとな、多分ブラぐらいつけれるし、女のパンツだって妄想したことも見たこともあるから全然…大丈夫…だよな」
持ってから、今まで以上に女であることを意識した。別に下着ぐらい何でもない。実家ぐらしだから妹の洗濯物がリビングにあったり、スーパーのバイトでキャミソールを畳んだりもする。
それとは違うんだ。俺が着るのが、物凄く違和感。あの、メンタル男なんだ、今。よし、女になろう。
「あ、えっと、大丈夫だよ。きっと、ね?いざとなったら守ってくれるよね?」と裏声の女声出して女スイッチをいれる。全然怖くない。普通だ。女の子が女の子の下着を履いてるだけ。
逃げるように扉の奥に向かい、男の頃の早脱ぎで着替える。パンツだけが変わるんだから。上はそのままつければ良いんだけど。これ、彼氏持ちベースかよ。
ホック後ろにつけてんじゃねーよ。とりあえずパンツだけ履いて、スボンを履いてベルトを極限まで閉めて、出る。
「優斗ごめん。これ、届くんだけど、見えなくて付けにくいから付けて」
きっと戸惑っていることだろう。そう思ってたのに「ほい。付いた。よし行くか」と物凄く普通に付けてた。おかしい。なんでこんなにドキドキしてるのに、アイツは平然としてるんだ?
てか、男の頃の服を着ると胸がめちゃくちゃ主張する。まるで「我、ここにあり」みたいな主張。いいか、世の男子諸君。デカい胸の女を求めるのは、やめろ。その子の肩の痛みとか腰の痛みとかを背負える覚悟がないならば。あと、普段から肩も腰も痛いから変わらないとか言ったやつ誰だよ。
俺だな。
まじでバカヤロウと言いたくなる。男が辛いから女になりたいと祈るやつ、1回この現実見てから言えよ。まず、胸に米の1キロを持って歩いたり走ったりしてみてほしい。きっと苦しみがわかるはずだ。
さて、講義に行くのは良いんだけど、物凄く嫌な予感がする。多分これ世の男が放っておいてはくれないだろう。まず、可愛すぎるし、胸デカいし。デカいし、デカい。さて、新たな美少女として生きる始まりの旅路。さぁ、扉を開けていざ新たな世界へ。
歩き始めて数分、沈黙を破るように優斗が「とりあえず、今日はそれでいいけど、服、買った方がいいぞ。物凄く男の目に毒」と目を反らす。知ってるからな、目で胸をチラチラ見てるの。
「そ、そうか。安かったらな。さすがに何万も使うの怖い」と俺は相変わらずケチである。でも、襲われるのは嫌だし、優斗には可愛い私を見せて、「ほら、攻めだろ?」と納得させたい。
「昨日バズった初配信できっと金、入るだろうから買えよ。その服装は毒」
「ひっどーい。これでも頑張ってるんだよ」と悪戯で頬を膨らます、私。
横に立って一緒に歩いているだけなのに、まだ、出会って2年なのに、俺のほうが年上なのに、なぜかコイツが頼もしくて、元彼女の夢と別れてから意識してたのもあるけど、やっぱりドキドキしちゃう。
なんだか、そんな時間が心地良いような、少しだけ痛いような。あ、そういや昨日配信バズったみたいだなぁ。
まぁ、見た目違うし、大丈夫……だろうか。いけるよな。いけるいける。そんなすぐバレるわけないじゃん。擬態の天才…じゃないし、むしろどちらかと言うと物見櫓から敵の大将を声だけでビビらせられるくらいの声量ありそうだけど、声量あるからってそんな……ねぇ。
「久遠先輩、おはようございます」
「夢、なんで、バレた?配信か?配信なのか?それとも、なんだ?あれか?あの?あれがサムシングの寒すぎてサムシング的な?」
元彼女の夢の登場で動揺した俺は早口で捲し立ててしまった。
「違いますよ。信号ぐらいから聞こえてたんで」との夢の返答に「嘘だろ?信号まで、300はあるんじゃない?メートルで。大学の方じゃないだろ?」と完全に動揺した。ちなみによく童謡は歌うぞ。閉店ソングに使われてる奴とか田舎で5時に流れるあの歌とか。
「そうですね。手前の信号ですね」
「嘘だろ?どんな声量?そんな事ある?てか、なんで俺だと思った?」
「その声量ですよ。こんな規格外の声量、他の人ではできません」
「オッケー…わかった。ありがとう。おはよう。さて、大学行こうか、優斗」
と歩き出すと、「あー。優斗さんってこの人だったんですね。話は色々聞いてますよ、先輩から」と爆弾を投下する。
俺は誤魔化したくなったし、絶対ろくなこと言わないから「あ、まぁ、あれだ。優斗ってかっこいいよな。細かい所気を配ってくれるし、料理それなりにうまいし、握力、漢らしいし……」と優斗に向かって言ったけど、恥ずかしくなってきて段々声が細くなっていく。
「告白か?」
「告白ですか?」
2人の反応で墓穴を掘ったことに気付いた。
「違うからな」と否定しながら、すぐ横を歩いている優斗には小声で言った「まだ、でも、いつか……」は聞こえていただろうか。
そこから講義室までは無限に思えるような気まずさとヒヤヒヤと何かサムシングライクザットが入り混じった、まじマジックって感じのサムシングエモーションだった。
「やっべ、ノーメイクじゃん。私」と俺が言うと、優斗が「しょうがないだろ?メイク道具買ってないだろうし、今朝女になったばっかだろ。それに、その、しなくても可愛いと思う。したのも見てみたいけど」とやっぱりなんか童貞感なんだよなぁ。俺が童貞感ないとは言わない。でも、なんだろうな、可愛い。
ちょっと、おい、俺の心乱して来ないでよ。男としてはモテた?こともあるし、こいつより縁はある気がする。でも、純粋が故の刃ある。
で、なんか照れた俺は「あんでぇー、ほんでーand then、安全に行きましょうねっと」と頬を染めながら、ヘタはスキップをしながら歩く。完全にボロ酔いしてる。
「そういえば、久遠先輩って声の幅すごいですよね。男性的な太い高い声も可愛らしい声も、女性の演歌?って感じの声ももちろん低い音も出て」と優斗に向かって捲し立てる夢に「ありがとう。そっちも高い声凄いよな。声量出るし、ボカロが多いかったな。しかも上手いし」と褒めて逃げる。
夢は、優しく涙もろく、脆い。その割にはすぐ復活してる気もする。強い芯の周りを無限にシャー芯が折れてるような感じだ。俺の場合どうなのかな。知らん。てか、歩きながら思った、イッタい。ナニコレ?さっきブラ付けた時なのか寝起きもともとか結構肩が痛い。あと腰も。いつも痛いけどだいぶ違う。やったことある人いないと思うけど、1キロの米を抱えてスキップする感じ。男なら軽いぞ。女の子でこの腕でいつも抱えて生きるのだ。痛そう。
「どうした?黙って、らしくないけど」
「そうですね。悩みですか?相談なら乗りますよ」
「優斗も夢もありがとう。ただ、慣れてなくて落ち着かないだけ」
「そうか。それなら良かった」
おい優斗、何が良かったんだ?っとっ聞きたくなったけど、知っている。「お前が苦しんでるわけじゃないならよかった」なのだろう。伊達に2年も濃密な時間を過ごしてない。
あと、なんか歩いてるだけなのに凄く注目を集めている気がする。俺も大学に女優が来たら見る気がするし、仕方がないとはいえあまりにも通行人からも見られている気がする。学内に入るとそれはさらに顕著になった。
ところどころから「あの子可愛くない?」とか「誘っちゃう?」とか「経験多そう」とか聞こえてくる。ちょっと待ていくらFランと言われてる大学だからってこんなことある?男が飢えすぎじゃない?とか思ったけど、よく考えたらAランだった前の大学でもこういう輩はいた。学部が同じだから一緒に来ていた夢も一緒に9号館に入る。
さて、エレベーターに乗ると真後ろから「こういう女抱きたいよな」とか「どうする?もんどく?」「いや、やめとこうぜ。経験豊富で歴代男に殴られるかも」なんて聞こえてくる。めちゃくちゃ吐きそう。
「あ、私3階なんでおりますね。お疲れ様です」
「お、おう。お疲れ、夢。頑張れ」と俺は夢を送り出しエレベーターを閉める。
「なぁ、優斗なんかめちゃくちゃ見られてない?」と優斗の袖を引く。必殺彼氏いるから無理ですムーブ。
「かもな。可愛いし」
「ちょ、そうじゃなくて。後ろの話題怖いし、触られそう」
「お、おう。了解」
そういいながら優斗は私を守るように立ってくれた。
漸く講義室の前だ。
「授業始まるし、隣座るだろ?」と俺が言うと、「別にとなりじゃなくてもよくない?」と返された。ちょっと待てよ。いつもはそれでいいだろうが、ちげぇんだよ。
「守れよ。アニキとしての俺の危機だ」
「了解。寝るなよ?バイトとかで疲れてるだろ?」
「寝るかよ。さすがに親に申し訳ないしな」
そして、座る。あれ?なんか低くない?いつもこう、アレじゃん。ほら、あの、サムシングライク、あー、低いのに高い的なダックスフンド体型。
思い出した、胴長短足。
「よっこらせっと。椅子変わった?なんか低い」
「それ完全に体型が違うからな」
「あーね」
俺は椅子の低さを感じるくらいの自分の足の長さに嘆息して、講義に備える。てか、まじで、どっこらせってなるほどに胸が重かった。
良し頑張るか。




