新たな音を求め-過去との決着-
「そっちの男より、僕のほうが優しいですよ」
納豆視線男の発言に優斗が握る私の手に体重がかかってくる。コイツの痛みは俺が一番知っている。一度やってしまった事があるから。
優斗の好きな人と俺が好きな人が被って、余裕なく、しかも優位な立場にいると思い上がった俺は聞いてしまった。
「真田をどう思うか?」と。そして、俺は「何とも思ってないらしい」と聞いたまま答えたクソ野郎だった。
だからこそ、今、こんなに目に涙をためて殴らずにいるコイツの強さを俺は守らなければならない。これは俺の過去との決着だ。
だから、俺は強く強く、優斗の手を握り返す。
「遊ばない。私は、ここにいる優斗と幸せになるんだから」
「そうですか。知ってるんですよ。久遠さんが変態だってことも、アソコの大きさもね」
こいつはどこで知ったんだ?俺が女になったことを。どこで気付いた?そんなに分かりやすかっただろうか。たしかに声量でバレたことはある。
だが、それだけでバレるだろうか。バレるんだろうなぁ。
優斗の握る手が痛い。
「優斗、俺を信じれるか?その拳は振るわなくていい。これは俺の業だ。だから、その拳は、あの時てめぇの好きな人への気持ちを踏みにじったクソ野郎にぶつけろ」
そう言い放つと、俺は優斗の手を振り切り、こう、大音声をあげる。
「あぁ、変態だったよ。しかも結構俺のは立派だっただろうな。てめぇの小せぇ、肝っ玉よりはなぁ!!!!」
納豆視線男、過去に俺が女になったらどう?とかアソコの大きさの話とか、フェチの話とかをした。だが、止まるわけには行かない。
どこかのフリージング団長だって言っていた。
「お前たちが止まらねぇ限り、その先に俺は、いる。だから…止まるんじゃねぇぞ」と。
鉄火巻食べたいな。よし、帰ったら鉄火巻食べよう。
「言いましたね、では、その口で舐めてもらいましょうかね?久遠さんが舐めている俺のアソコをね!!」
こんなところで出すはずは無いだろうと思いながらも、スマホを構える。全ては証拠を抑え、動かすために。
マジでやりやがった。あー、コイツ頭のネジ飛んでるタイプかぁ。
パシャリ。
音が鳴る。全て抑えた。後は、揺するだけ。
「無様だねぇ。急所丸出し、足で踏まれるのはお好き?それとも蹴ってあげましょうか?」
「えっ?蹴ってくれるんですか?」
ド変態ドMのコイツならこう言うと思っていた。だから、納豆視線男改め、健史の股間を狙うふりして、コイツが今右手に持っているスマホを蹴り落とす。前蹴上げで。
なんとか私をブロックさせ、その上で履歴とトーク画面を消した。ちなみに私もブロックした。これは2人の揺るがぬ絆の証明がいるかもしれない。
そそくさと、私は優斗の腕に戻る。
「ゆぅと、怖かった。帰ったら抱きしめて」と目をうるうるさせると、肩と首と背中に重さが乗ってきた。
「帰ったらじゃなくていい。アニキは昔から無茶をする。怖い時は頼れよ。俺はお前を守れる男になるんだから」
そう言ってカッコつけてる優斗の手は俺よりも震えていて、「お前が、なぁ!!」と言いたくなった。でも、今は、このぬくもりが嬉しい。
その後手続きをしていくわけだが、学籍番号と写真で学生証の手続きができて、帰ってるわけだが、なんか生暖かい、いや、春の日差しのような視線を感じる。
「お二人さん、お熱いね。この前、倒れた子も元気そうだな、真田」と優斗の1つ前の学籍番号の佐竹が優斗に話しかけていた。
「お、おう。すまん。説明が遅れた、見た目変わってるけど、コイツが久遠で、今は輝奈子に名前を変えた」
「なるほど、夢幻桜か。順調か?」
何がだろう。関係性も順調だし、優斗の心はたまに不調だけど、まぁ…順調だし。怖いくらい順調だわ。
だから、俺は割り込んで、「順調だ。すまんが、これからは少し距離置くかもな。横で般若がキレてるから」と返す。優斗の手が少し震えていたから。
「そうだよな。幸せになれよ。ほんじゃ、お疲れサン」
佐竹の距離感って凄いなぁ。友達同士が男同士で付き合うようになったはずなのに、なぜあの距離感でいられるのだろうか。
まぁ、いいや。
「なぁ、ついでに婚姻届出しに行かないか?取られたくない…し」との優斗の言葉にそれでも俺は返す。
「まだ……早い」と。




