行政手続き
「んで、どうやってすんだ?とりあえずこうやってこうして、サムシングライクザット?ゆうとー!!」
「アニキ、どうした?付け方分からんとか?」
「そう。やって」
どうだ。自制心試されるだろ?ちなみにだいたい説明見たらわかるんだけど、胸が邪魔で下見えないんだよなぁ。
「ほい、完了。危ないから辞めろよ。そういうの。皆責任取ってくれるわけじゃないんだぞ?」
優斗、お前、私以外と付き合う気なのか?俺じゃダメなのか?
「わかってる。わかってる……」
痛い。
何これ?
これ……何が、流れてる?
BGMとか……?
雨降ってる……?
気付くと走り出していた。
「待てって、アニキどこに行こうとしてるんだ?危ないだろ?その格好で出るなよ」
優斗が着の身着のまま追いかけてきた。
そう言えば、自分の格好見ていなかった。
「だって、私じゃ……優斗幸せにできないから」
「俺だって…アニキを幸せにできるかわからん。でも、俺はアニキに幸せでいてほしい。ほら、おいで?」
なんでこいつはパパみたいなことをしてるんだろう。俺の父親がこうしてくれるかというと多分しない。母親も期待してくれるけど、頑張らないといけない。
「でも……走り出しちゃったし、申し訳ないし、……手続きもあるし、やらなくちゃいけないこと多いから」
本当に頭の中がゴチャついて来た。早く手続きしなくちゃ、戸籍と保険証とマイナンバーと免許証と、コイツとの婚姻届と……。
違うだろ!!!!!!!!!!!
「まだ、……ちがぅ。コイツの人生だもんな。ゆぅとが選ぶ人が幸せならいいな」
「アニキ、口に出てるぞ。婚姻届が何だって?」
「にゃっ、ちゃ、そ、そんな、聞き間違いだよ、金地院崇伝だよ。家康の側近の。あと、南光坊天海。ば、バカだなぁ、だまされるなんて」
「誤魔化せてないからな。とりあえず、親御さんと手続きしなくちゃいけないだろ?服も実家から持ってきたほうが良くないか?」
「で、……でも。親、わかってくれないと思う。ゆぅとが来るなら一緒に手続きしたい。1人だと……こわぃ」
気付くとなぜか優斗の手を握っていた。
「アニキの手冷たいな。冷えてないか、とりあえず1回入れ。冷えてるだろ?」
「冷えて……ない、もん」と意地を張ると、優斗に「そうか。なら、一緒に飯行くだろ?ラーメンとか」と家の中に連れ込まれた。まさかそんな簡単に担がれるとは思わなかった。
少なくとも40キロはあるはずだ。おかしいだろ?なんでそんな、スッと持てるの?
なぜかお姫様抱っこで家の中まで戻されて、なぜか用意されたスカートとTシャツに着替えさせられた。さすがに着替えは自分でしたけど。
着替える前の服から優斗の香りがして、幸せだった。やっぱり安心するんだよなぁ、アイツの匂い。どことなく童貞っぽくて、洗濯下手くそ故の生乾きの匂い。
なんで、恋愛も洗濯も下手くそなのに、俺の事だけこんなに……。
あ!!わかった。俺の元カノの夢と繋がりたいんだろ。そうと決まれば、夢を呼んだほうがいいか。
…………できるかぁ!!!!
アイツには俺の気持ちバレてる。だって言ったし。あの当時、別れた後だったから、優斗が好きってこと伝えてたし。
優斗には申し訳ないが、夢に気を使わせるわけには行かない。流石に申し訳ない。
「着替えたか?お腹空いてるだろ?」と優斗が戸を叩く。俺は、「おう、着替えた」と返しながら、戸を開ける。
「綺麗だぞ。似合ってる。飯、行くだろ?」と急かして来る。俺は準備をして靴を履く。
なんでこいつこんなにかっこいいんだろう。確かに男だったときもエスコートしてくれた。俺ってそんなに可愛いのか?
なぜか手を握られている。なんで?おれ、歩けるぞ。
コケると思われてる?さすがにもう慣れたはずなんだが?
でも、手を離す理由もないし、暖かいし、とりあえずこのままでいいだろう。
「ゆぅ…と、もし…手続き…1人嫌って言ったらうちの実家まで来てくれる?」
「アニキ、昨日ボロボロになってただろ?心配だから連れて行け。仲間だろ?」
そうだ。俺らは親友である前に仲間だ。大丈夫。
「そうだな、仲間……だよな」
小声で出た「まだ、……そうだよな。彼女……なりたいな」は聞こえていただろうか。
ラーメンはしょっぱかった。なんか、分からない雫が落ちてきて、何かサムシングエモーショナルなサムシングがこう、アレしてきて、こう、アレだ。
アレ!!!
で、手続きなんだが、優斗に俺の実家まで運ばれ、なぜか優斗が俺の両親と話をして、なぜか優斗が俺の手続きを一緒に見てくれた。
ちょっと待て、……その紙は未だ早いだろ。
「ちょっと…優斗…。それ、早くないか?……なんか婚姻…って書いてるように見えるけど?」
と俺が焦ると「アニキは1人で置いとくと危ないからなぁ。横で見守る権利を公式に貰いたいな、と」となんかイケメンなことしてきた。
イケメンは違うだろ!!!!俺の気持ちは?お前はそれでいいのか?優斗。違うだろ?なぁ。それはそんな軽い紙じゃねぇよ。なんでそうなってんだよ。告白しろよ。
「えっと……優斗、それで良いのか?お前は。俺、困らせるぞ?心配かけるぞ?性格可愛くないし、もっと可愛い子いると思うし、初彼女もまだ、…だろ?なんで婚姻……」
どんどんと声が小さくなってしまう。だってお前、彼女できたことない優斗が、なんで俺を選ぶんだよ。大学生だろ?彼女とセフレ作ってヤリまくりたい盛りだろ?何が悲しくて元男の女の子と出会って2日ぐらいなのに婚姻届出そうとしてんだよ。段階踏めよ。
「アニキは嫌か?俺はアニキがいいし、親御さんに頼まれたんだよな。アニキをよろしくと」
「ちょっと待て……。それは、あの、結婚?」
「そう、結婚。よろしくな。今日改名して、可愛くなるんだろ?夢幻桜輝奈子さん?」
「ちょっ……まっ。どこでそれを?」
「アニキ、小説書いて話してただろ?なんとなく気になって読んだ。アニキの事もっと分かるかと思って。夢幻桜輝奈子ってお前だろ?身長盛ってないし、同じDの意志積んでて、歴史好きだろ?配信もしたしな」
「ちょ……優斗。だから待てって。まだ……その一線超えてすらいないのに、婚姻って早くないか?とりあえず、買い物とか……告白、とか……キスとか……さ」
「そうか。なら、いつでも出せるように持っとく。これはお守り」
逆じゃね?なぁ、逆だよなぁ!!!!これ、俺ドキドキしっぱなしなのに、優斗戸惑ってないのズルくないか?
「わかった。私も……優斗なら、嫌じゃない。むしろ嬉しい……かも」
「3番でお待ちの夢幻桜輝奈子様、健康保険証とマイナンバー、手続きできたのでウェブの方の登録もお願いしますね」
空気読めよ!!!!
市役所で甘々したのも悪いけど、さぁ!!!!!
「あ、はい。ありがとうございます」
すごすごと受け取ってしらーっと帰る。
その後免許証も更新した。写真写り可愛すぎて心の中で数発抜いた。ありがとう神様。
でも、……やっぱり………………
ふざけんな!!!!!!




