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【初配信】Listening test

たまたま、予定を合わせられたから、2回目の大学の友人である真田優斗の家に来ていた。相変わらず、部屋は散らかっているし、ゴミも散乱している。男の1人暮らしすぎるだろ。


そんなことをふと気にしてしまうほど、俺は初配信を前に緊張していた。どうせ知られるなら実家よりこいつの家の方がいい。だって、被害俺にはないし、なんて言えないけど。


そして緊張を和らげるための日課、女性版リスニングテストの物まねを始める。開始ボタンってどれだっけ?えっと、これか?


「あー、あー。Directions. You will hear four sentences followed by three replies to this question. OK, now. I will start live streaming」


『始まってるぞ』

『開幕ポンで草』

『謎に発音良くて笑う』

『男か女かそれが問題だ』

『顔可愛い』

『こんなふわふわなのか』


「マジで?うそでしょ」

焦った俺は暫く黙り、コメントを見る。

『可愛い声ですね』

『リスニング?』

『始まってるよ』


深呼吸をして心を落ち着けてから、口を開く。


「えー、夢幻インフィニティです。何話すんだっけ?I have no idea but I'll try to find topics that we will talk about. Well, what shall we talk?何話せばいい?Does anyone have ideas?」


『ハーフかな?』

『困ると英語出るの草』

『視聴者のふるい落としかな?』

『てか、発音綺麗すぎない?』

『あなたの声が好きです。結婚してください』


「違うよ。ハーフじゃないよ。普通の家庭の普通の男の子。I just wanna enjoy talking with you all. Please give me a topic.」

『What's your hobby?』


「Umm...I like to read books ,listen to music, and write novels. I like another world stories, and love stories.ニホンゴ二モドスネ。ワタシニホンゴがmother tongueなのでニホンゴ話しやすい。エイゴムズカシイ」


『喋れてないぞ』

『得意なんだね、日本語』

『日本語お上手なことで』

『緊張かな』


「そう。ワタシとても緊張してる。俺は男。緊張で裏返ってる」

そう言いながら咳ばらいをして声を戻す。

『緊張で裏返っただけでこんなかわいい声出るわけないんだよなぁ』

『これ、万が一男だとして、この声なら抱けるぞ』

『かわいい声で鳴く男の子ごくり』

『おい、変態』

そんなやり取りをされていると知らない俺は声のチューニングをしていた。男の中段ぐらいに目指したい。普段の地声は男にしては高いから、いっそぶち上げてほぼ女の子の音域で挨拶をしてることもある。あと、男ってサンプルの記憶あんまりないから高いとか言われても知らんて。


「あーー。よし。これが地声だな。Number 1。これだこれこれこれだよこれ」

物凄く低い。気付いたら男版のリスニングテストになっていた。帰って来た声だけど、これも地声の範囲だけどよく使っている音域ではない。まぁ、いいや。


試し「Hey Tom, how's it going?」と声に出す。

『トム誰だよ』

『Oh, couldn't be better thanks to your voice.』

『声と見た目で1人の体調をよくしてしまっているの強い』

『戻ったらしい』

『さっきの美少女返せよ』

『可愛い声のお姉さんお願いします』


せっかくなので可愛いお姉さんボイスで「そんな奴最初からこの配信に居ねぇよ、幻イリュージョンだろ」と返す。


『唐突なルー語で草』

『頭痛ヘデイクみたいじゃん』

『頭痛が痛いみたいな表現で草』

『可愛い声でルー語するとこうなるのか…目覚めそう』


「結構使ってる気がするんだけど。おそらくメイビーとか泣かないでベイビーとか」

『謎に韻を踏んでて草』

『そもそも言う相手いねぇだろ』


「い、いるに決まってるだろ?友達、多いし。It's not a lie.ほんとに居るんだよ。嘘じゃないからね」

『そうなんだ。友達多いんだね』

『イマジナリーフレンド?』

『自分自身は友達じゃないぞ』


「違うから、ホントにいるからな。まぁそれはいいや。えっと何話そう」

『身長は?これで男かわかるんじゃないか?』


「身長……171だよ。届かない……とか、なった事…あんまり……ないし。うん。友達が頑張ってくれるだけだしな。嘘じゃない」

『間が嘘なんよ』

『全部出てるぞ、本当の身長は?』

『絶対鯖読んでる』


「よ、読んでねぇよ。笑うんじゃねぇぞ。158だ。計算してみろよ。俺の身長に軽減税率の8%かけるだろ?171だろ?ちなみに、俺の好きなキャラのHPの実数値な」

『軽減税率湧いて草』

『【速報】夢幻インフィニティ食品だった』

『Is she or he food?』

『What are you talking about』

『可愛い。その顔で158だと、やっぱり女の子?』

『だよな。可愛すぎるし』


「いや、食品じゃねぇけど、皆に気軽に楽しんでほしい、俺という商品を」

『表現が詩的だけど、言ってることが「俺だって平均身長あるし、な?男だろ?」なのが草』

『それな』

『可愛い』

『博識可愛いけど、少しだけ少年』

『なんか虚勢張ってる犬みたい』


あまりにも女の子扱いしてくるから「違うぞ。ほら、この手を見ても女の子だって言えるのかよ」と手のひらを映す。我ながらこの可愛い手が好きなのだ。そう、俺は失念していた。女性の手をまじまじと見たことがないことを。そして、友達と手の大きさ比べたことなんてないことを。そして自分ですら可愛いと思うのに視聴者が男だと思わないであろうことを。


『可愛い』

『手、小っちゃい』


動揺してマウスが画面に映りこんでしまった。


『マウスデカくね?』

『可愛い手ですね』

『素材、ありがとうございます』


あれあれ?なんでこうなるの?俺の手、骨ばってるはずなのに。でも、確かに触り心地ぷにぷにで可愛いし、すべすべだし、完全に女の柔肌感はあった。高校の時のフォークダンスで触れた手の感触に確かに似ている。


『そういえば、体重どのくらいですか』


「ば、ばか。言えるはずないでしょ。秘密だよ秘密」

せっかくなので逆張りで、「オラ、女の子だというなら最大の女やってやろうじゃねぇか」との精神で声を作った。我ながらめっちゃ可愛い。もう、間が完全にアニメのキャラだった。


『反応が可愛いので、この際男でもいいや』

『この反応を間近で見てる友人がいるなら、嫉妬で狂いそう』

『可愛すぎるので、抱かせてください』

『I will promise eternal love for you.(あなたに、とこしえの愛を誓います)』

『Let me always be with you.(いつもそばに居させて)』

『海外勢も告白の嵐なんだが』


「ちょっと待て、俺はそっちじゃない。俺は男だし、心も男だ。そんな癖はない」

『焦り方がもう可愛い』

『これはこれであり』


「違うだろーー!!」

俺の絶叫が響き渡る。


「なにが違うの?アニキ」

俺にとって2回目の大学の親友で俺をアニキと慕ってくれている真田優斗が声を掛けてきた。てか、ウチの親、本当によく行かせてくれたよな。2つ目の大学なんて。


相変わらず、背が俺よりは、たけぇし、顔は整ってねぇな、性格もいいし、料理もそれなりにできるし、良いパパになりそうな男だな。


何を考えてんだ俺は。違う違う。えっと、告白をしようとしたんだっけ?違う。えっと。あれだ。


「あのサムシングがそれでThatがサムシングで、あれ」

『何もわからない支離滅裂』

『情報量ゼロ』

『アニキと呼ばれてるから、一応男だと思われる』


「男だよ。で、優斗はなんでここに?」

「俺の家だろ?『なんか暇だし、配信でもやらね?俺名前考えながら、適当に話しとくわ。なんか、ドリンクでも買ってきて』とか言って放り出したのアニキだろ?」

「あ、そうだったな。えっと、こいつは優斗だ。あの仙台真田の末裔だったらいいな。俺はその方が興奮する。伊達藤次郎様大好きだからな、俺」

「いつも言ってるよな。だから、紺地に金がいいと言ってたのか。学際の出し物」

「ちょっ。待て、配信中」


そう言って俺が焦ると、政宗は「どうも、インフィニティ(笑)の彼氏です。インフィニティってアニキ、名前の弄り雑じゃない?」と流れを全部見ていたかのようなことをしている。絶対そんなことはない。これ、コイツのテンションが高くて悪乗りする余裕があるときの声だ。普段はもっと内省的で現実主義で、俺なんかより物事をよく見てる。


『完全に彼氏さんの手のひらでコロコロされてそう』


「俺がコロコロさせてるんだ。いつもは俺がこいつをタジタジにしてるからな」

「確かに、俺より女の子に囲まれてるもんな。彼女出来たんだっけ?」

「いたよ。優斗には話しただろ?後輩と付き合ったけど価値観会わなくて別れたって」

「そうだな。しかも、アニキ忙しいもんな。サークル3つにアルバイトで週4働いてたんだっけ?」


『彼女いたのかよ』

『可愛いんだろうな、お前』

『どこのおネェさん?』

『あぁ、キマシタワー』


「どちらかと言うとバベルの塔が股にしっかりぶら下がってるわ」

「アニキって下ネタ好きなの?」と戸惑う優斗に「昔、言ったじゃん。他の人の大きさ気になってしまうとか欲強いのかなぁとか」と配信のことは完全に頭から消えていた。


『しっかり男だった』

『てか、優斗さんはイケメンとは違くない?』

『どこがいいの?』

『てか、胸毛見えてない?どんだけ』


優斗が「ほら、俺、叩かれるだろ?アニキみたいに可愛いわけでもないし、イケメンではないし、身長低いし」とどこか「わかってましたよ、俺が叩かれるの」みたいなこと言ってるけど、俺はコイツいいやつだし、かっこいいと思う。服のセンスだけ何とかならんのか?と思わなくもない。でも、なんかコイツらしくて憎めない感じのファッション。


「ああ?何言ってんだ・ならその身長よこせよ。その渋くてかっこいい低音よこせよ。俺だって好きでこうなったわけじゃねぇよ、母上のせいだ」

「アニキは、たぶんそのままの方がモテるぞ。可愛いし、あと、身長は10センチしか違わないだろ?なんなら、あの裏声使って匿名配信したらバズると思う」


「なら、やってやろうじゃないか。バズらなかったら高い酒奢れよ」

「それ、俺が金ないの知って言ってる?バズったら何かくれるの?」

「彼女にでもなんでもなってやらぁ」と啖呵を切り、完全に燃え上がった俺は思い切り可愛い声を作って「みんにゃ~。今日はお日柄もよろしいですわ。外にお花でも摘みに行きましょうか」とフリフリの仕草で、何もかもを女の子にしてみた。


『これは破壊力抜群』

『てか、ネットニュースになってる。性別不明、初見殺し系配信者として』

『てか世界トレンドにも”Infinitystream”が入ってる』

『早くない?』


「え?早くない?あと、俺がやったのリスニングテストと女声だけだけど」

そう言って優斗を見ると「そういうとこだぞ。アニキ。すぐ乗せられる」と微笑んでいた。酒でも飲んで忘れよう。俺、成人してるしな。大学も2回目だし。親には感謝しなければならない。1回目を3回生で中退して2回目の大学に入りなおさせてもらって、こいつと出会えたわけだから。


さて、終わるか。逃げよう。


「終わるぞ、じゃなー」

『急な終了で草』

『なんかあったんだろうな』

『この後、優斗さんに抱かれるインフィニティ』

『腐界は今日も深いな』


この後、「で、バズったけどどうする?」と優斗に詰められて「なら、あの、学際でメイドでもしようか?それとも、1発抜いとく?入れるのはなしな。俺そっちの趣味ないから」と提案する。


「可愛い声で『文化祭一緒に回ろ』を上目遣いで」

「いつもしてるだろ?カラオケで」

「カラオケはアニキの低音が良いんだよ」

「どれ?やりすぎてわからん」

「低くてドスの利いた声」

「アレなぁ。俺も好きなんだよなぁ。なぁ、もし、俺がこのまま肉体もどんどん女になったらどうする?」

「美少女だったら、『いただきます』よ」

「あーね」


俺は、少しだけ気付いていた。この大学入ってから少し背の高い男の子になぜかドキドキする自分がいることを。彼女と別れてトラウマになったからだろうか。


それより前から、少しずつコイツに惹かれていた気がする。しれっとする不器用な優しさ、エスコート、気前の良さ。男としてモテたのは俺だろう。でも、根本的に優しいのは此奴だった。名が体を表しすぎていると思う。


コイツから姓を奪い取れば少しは違うのだろうか。2人で度数の低い酒を開けながら、映画を見る。洋画は何が伝えたいかよくわからないけど、心に来るものが沢山あるし、銃の重さとか人を殺めてしまう痛さが手に残って来る。


それがホラーになると、怖くなって、寝れなくなるのが俺だ。


「ホラー見る?」

「う、うーん。いや、他のがいい」

「そうか。どれ見る?」


こうやって選ばせてくれる優しさも多少好きになっているんだろう。


「ホラー見てみようか。寝れなくなったら、手握って良い?」

「なんでだよ」


あ、俺、男だったわ。まぁ、いいや。


結果から言うと、それはもう怖かった。


「なんでしがみついてるの?アニキ」

「これ、あかん奴かも。でも、続き気になるし。トイレいけなくなったら連れてって」

「すぐそこだろ。見えてるし。行きなれてるだろ」

「そうじゃない。後ろからお化けがくるとか想像して怖いから」

「そういうところ、可愛い」


俺はこの前、優斗と歩いた道を思いだしていた。確か、温泉の帰りに細い道を通ってお化けが出そうな道だった。確か、その時も声が裏返って、しがみついたかもしれない。


その後頑張って寝た。流石に、これで朝起きて女でしたなんてことはないだろう。あったら、抱き着いて抱き締めて、抱いてもらおう。ここって鏡あるっけ。ああ、洗面台にあったな。雑然とした、絶妙に1人暮らしの男感のある洗面台と部屋自体。


どうせ泊まるだろうし、温泉も行った後だから下着はあるはず。お休み。

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