5話 「ぱぱはどこですか?」
「真央に、まだ6つの子供に…!実の親の死に目を見せるおつもりですか?あなた達は…!」
涙を流し、必死に訴えかける表情に、嘘はなかった。見栄でもなかった。
ただただ、己の子を奪われる恐怖するだけの姿だけではなかった。
そこには実の子に親の死に目に会わせたくない、辛い思いに合わせることが何よりも恐怖する母親の姿があった。
「…………」
「真央は賢い子です。でもまだ6歳なんですよ?
そんな子供が自分の力で出会いに行った父親が、目の前で死ぬ姿を見るなんて…あんまりじゃないですか!!」
来夏は問う。
「もしかして、1月のあの日って…」
「………1月8日…えぇ、そうですよ。」
「あの人の…真央の父親の命日です。」
重く、冷たい沈黙が流れる。
「これで納得して頂けましたか?」
涙を流しながらもこちらを確かに力強く見つめる母親がいる。確かに子を守ろうとする母親がいる。
「分かりました。」
「ご依頼、賜りました。」
「お母様、こちらご依頼書です。サインと料金についてですが…」
紳はこの時を待っていたと言うように、
予め用意していたセリフを発した。
「…後悔は、ありませんね?」
「……はい。」
「貴方はそのサインを書くと、自動的に全項目の確認事項に承認したとみなされます。」
「そして…己の子供の努力を踏みにじる事となります。」
「なんと言われようが構いません。
親の風上にも置けない私に、ご立派な矜恃など、
もう涙とともに流してしまいましたから。」
覚悟は決まった。理由は以上。全て涙が流した。
そこには愛があり、矜持があった。
後は真央が過去に行く前に、会えなくするように、
細工すればよい。ただそれだけの事…
そこに来夏が叫ぶ。それも場違いな声で。
「ちょっと待ってください!!!」
「まだ方法はあります!!!」