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Side蜜子

真海と会ったのは中学生の頃だ。

私立図書館で出会って、そこから腐れ縁のような、友達が続いてる。

あるいは心地好い呪いのような。


射殺そうとするような鋭い目付きと、不快感を隠さない声と表情。何よりも決壊したダムのような悪態。必要以上にキツくなくなったが、口の悪さは変わらない。


「真海はずーーーーーっっぅっと、ぶっきらぼうだもんね。」


我ながらそれを一纏めに『ぶっきらぼう』で片付ける辺り、私もなかなか大雑把だ。


「あ゛?」


「初めて会った時も初対面だって言うのに、私の事バカバカ、バカバカ言って来たし。」


「地球の裏側って言おうとして、ブラジルとベネゼーラを混同してブラゼェラとか言うからだ。」


「何よー。発音良く言おうとしただけだもん。」


「発音じゃねえよ。名詞が別物って話だ、バカ。」


「だからー、そう言うとこだってぇ。間違いとか正論をそのまんま突きつけるんじゃなくって、もうちょっと笑いに変えるとかさ。」


私の言葉に、真海の顔は見る見るしかめっ面になる。


「だっる…」


「ダルそうな顔しないの!」


子競り合いしながら、麺を食べ進める。

はじめは勢いの良かった私もだんだんお腹いっぱいになって後半ペースダウンし、少しずつ食べていた真海は終始一定のペースで食べ進め、ほぼ同時に完食した。


「美味しかったー…、ご馳走さまでした!」


「ごちそうさまでした」


真海は食べ終わった私の顔を見る。

口、付いてる。と、自分の口許を指先で示すジェスチャーで伝えてきた。


「え、ありがとっ」


鏡を見るため、私はトイレに向かう。

鏡で顔を確認し、綺麗に拭き取ってからトイレを済ませて席に向かう。


「お待たせ~」


席に目線を向けると、真海が幼女の頭を掴んで、テーブルの角にぶつける所だった。

テーブルの角が歪み、幼女からは凄まじい音がする。店内が静寂に包まれる


「てめぇコラ、クソガキ。いきなり出張ってきてうるっせぇぞ…」


黒髪の間から見えるこめかみに血管が浮いている。どう見てもと言うか、どう見なくても明らかにブチキレていた。


「ええええ…どう言う状況???」


とりあえず席に戻る。


他の客や店員の顔をわずかに視線を向けて確認すれば、皆、変な顔をしていた。しかし、それもつかの間。店内は騒然とし始める。

真海が子供の頭を更にガンガン、ガンガンぶつけ始めたからだ。


(マズイ…)


「消えろ!ボケが!」


「ちょっと、ちょっと!ヤダァ、真海、虫ー?嫌いだからっておっきい声で騒いじゃ駄目だよ、みんなビックリしちゃうでしょー??」


我ながら苦しい言い訳だ。

頭部の一部が崩れた少女は捕まれたままゆらゆらしてる。


「ほら、行くよ。まったくぅ~」


すみませぇん、と愛想笑いを浮かべながら方々にペコペコして真海を出入り口に引っ張る。


「おい、会計…」


「いい!いい!しとくから!あんた外出てっ」


真海と少女を放り出し、店員に向き直る。


「すみませぇん、ご迷惑お掛けしましたぁ。」


眉尻を下げて、申し訳なさを顔に張り付けて店員に謝罪する。

何とかこの場を納める事に徹した。

唸れ私の処世術。


「いえ、お連れ様大丈夫ですか?」


「大丈夫です~、すみませぇん。本当。ご迷惑掛けて~」


真海のお陰で、私は特に自分に非がなくても、場を納めるために頭を下げる技が身に付いていた。


「ご馳走さまでしたー美味しかったですぅー」


ペコペコしながら会計を済ませて店を出た。


「もぉ~、真海何やってるの~?駄目じゃん、大きな音立てちゃー。声も粗っぽいしー。」


煙草を吸ってる真海に近付く。

幼女、幽霊は何処かに消えていた。


「あれ?さっきのは?」


「追っ払った。」


紫煙を吐き、真海は短く答える。


「ふーん?何かウザ絡まれた?」


「…そんなとこ。」


真海は何だか不機嫌にイライラしている。


「良いけどさ。じゃ、気分変えて~、旅行の話しよっ」


今度、真海と行く予定の旅行の計画を練りため、今日は集まった。ついでに買い物も行く。


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