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97話 シュルラーとの違い

俺たちが子爵領に来て驚いたことは多々あるが、最も驚いたことは冒険者の扱いだ。シュルラーでは魔物討伐の依頼が溢れんばかりにあったのに、子爵領では雀の涙ほどしかない。子爵領は守るべき主人がいて主人を守る魔法使いや騎士がいる。街を歩いていても甲冑を着た騎士を見ることからかなりの数いることが分かる。そのような人たちが子爵領周辺の魔物を討伐していることから冒険者はいなくても大丈夫なのだろう。だから冒険者ギルドの依頼には採集系や騎士団の後衛担当など地味な依頼しかなかった。俺たちはそんな状況に落胆した。でも落ち込んでばかりいられず、俺たちは騎士団の後衛担当の依頼を受けることにした。貴重な体験だし騎士団の強さや戦術など様々なことを学べると思ったからだ。受付で依頼を受けると日時は来週の早朝からだと言われ俺たちは退屈な一週間を過ごすこととなった。


「どうする子爵領の散策にでも行く?」


リベルの提案に俺たちは何もしないよりは良いかと思い賛同した。


「行こうか。」


「そうですね。」


俺たちはまず宿の近くを散策した。近くには飯屋、武具店、アイテム店、ポーション店があった。俺は初めて見るポーション店に目が止まった。


「なぁリベル、ここ寄ろうよ。」


「うん良いよ。」


俺が何気なく言った一言にリベルは優しく微笑み返事をしてくれた。この微笑みにも慣れてきたが最初の方はこの微笑みに何度可愛いと思ったか分からないほどの美貌だ。リーンも甘いマスクなことから昔のグロウも今のイケオジとは違い美少年だったことが窺える。さらにその美貌にマイヤーの遺伝子も加わることで旨味の相乗効果のようにイケメンになったのだろう。そんな考え事をしているとリベルが俺の顔を不思議そうに見つめてきた。若干の上目遣いに俺が女だったらイチコロだったなと思い、リベルに話しかけた。


「どうした?」


「いや何か考え事してるのかなって思って見てただけ。」


「とりあえず入ろうか。」


俺たちが店に入るとそこにはゲームの中のアイテムのように丸底フラスコの中に液体が入ったポーションが陳列されていた。俺はその光景に少年心が刺激され明らかにテンションが上がった。店中を見渡しているとカウンターに座っている女性と目が合った。俺は流石に興奮し過ぎたとその人に会釈をした後深呼吸をして落ち着きを取り戻した。


「リフォンは何か欲しいポーションがあるの?」


俺はリベルに聞かれて困った。特に何か欲しいポーションがあったわけでもないしポーションの種類も知らない。珍しいという理由だけで入ったのだ。俺は何でも良いやと思いリベルにそのまま伝えた。


「珍しいから見てみたかったんだ。俺ってポーションとか見たことないから。」


「確かにそうだね。学園でもポーションを扱う前だったし、屋敷の保管庫も入ったことないもんね。」


俺は聞き捨てならない言葉が聞こえてきてリベルを問いただした。


「ちょっと待て、保管庫って何だ?そんなのがあるなんて聞いてないぞ。」


俺が問いただすとリベルはどう応えようか悩んでいた。俺は何か聞かれたらマズイことでもあるのかと思い風魔法で俺たちの周りの空間を覆った。


「これで外に音は漏れないから。」


俺がそう言うとリベルは安心したのか話してくれた。


「まず屋敷の保管庫は公爵家の大切な物がしまってる文字通り保管庫だ。そしてその保管庫は公爵家以外近づいたらダメだから話せなかったんだ。隠すつもりはなかったんだよ。でも知らない方が良いのかなって思って話さなかったんだ。ごめんね。」


俺は申し訳なさそうにしているリベルの顔を見てこっちまで申し訳なくなってしまった。


「リベルなりの優しさだったんだな。ありがとう。」


「ごめんね。」


俺は風魔法を解きポーションを見始めた。その中には治癒力上昇や負傷部位修復、筋力上昇があった。俺は見慣れない内容に首を傾げているとリベルが説明してくれた。


「治癒力上昇は光魔法の遅い番。ゆっくり回復していく感じ。負傷部位修復は怪我を負った部位に直接かけることで集中的に治す感じ。筋力上昇は一時的に興奮状態にする薬草が使われてて、よく前衛の戦士や騎士が用いる感じだね。」


俺はポーションの万能さに感心しながら聞いていると店主らしき女性が追加で説明してきた。


「そこに並んでるようなポーションの効果はどれも微々たるものだよ。それだけの知識を持ってるし、かなり作りの良い服を着込んでるんだ。どこかしらのボンボンだろ?アンタたちになら『本物』を売るぜ。」


どこか異様な雰囲気を纏ってるその女性は不敵な笑みを浮かべながら俺たちに言った。その様子に俺とジュナは二人で抱き合いながら震えていたが、リベルは堂々としておりその人に言った。


「『本物』ってどういうことですか?」


俺はリベルの豪胆さを見て情けない自分に憤りを覚えた。でも何も口を出せなかった。


「ここに置いてあるポーションは全部ボクが作った物なんだけど、素人にボクのポーションは不相応だから表には置いていないんだ。その分高価だけどそこにある物とは比べ物にならないほどの効果を約束するよ。()()()だけにね。あはははは!」


あまりにも唐突なダジャレに俺たちは何も言えなくなった。さらにその人の雰囲気も相まって関わったらダメな人な感じがしてきて俺は二人に小声で帰ろうと言った。でも二人はその人の異様な雰囲気に飲まれているのか、ダジャレを言った真意を考えているのか俺の声は届いていなかった。


「おや?ウケるとおもったんだがね。残念だ。それで買うのかい?買わないのかい?」


今度は普通に問いかけてきて俺たちはさらに困惑した。感情の起伏というか情緒の波が激しい人に会ったのは初めてで接し方が分からないのだ。俺は買わないと返答して今後関係が続かなかった時を考えてポーションを見せてもらうことにした。


「そのポーションを見せてもらえませんか?」


二人は俺の返答に驚きを隠せないようだった。それもそうだ。こんな怪しい人のポーション誰だって買わないだろうけど、俺の勘がこの人なら大丈夫だと言ってるのだ。


「見る目あるね。来な。」


俺たちはそのまま店の奥に導かれた。そこには地下に続く階段がありカラバザールを彷彿とさせた。

次回もお楽しみに


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