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93話 カラバザールでの買い物

「それじゃあ早速行こう!」


「はい!」


俺はリベルとジュナに手を引かれこけそうになりながら宿を飛び出した。


「カラバザールって初日に入らなかった飯屋ですよね?あそこがそんな施設なんですか?」


ジュナの疑問に俺はアイリーと見た光景やカラバザールに入る方法など詳しく説明することにした。


「まずカラバザールに入る方法があるんだけどドアを八回ノックして合言葉を聞かれたらパラングーフって応えるんだ。そうしたら中に入れてもらえる。地上の建物はただの飯屋で店主に案内されて奥の部屋に行くとカラバザールに行けるってわけ。中に入ってからはその時のお楽しみってことにしておいた方が良いぞ。」


リベルとジュナは鼻息を荒くして俺の話を聞いていた。その様子からカラバザールへの期待が最高潮に達しているのが分かった。


「分かった早く行こう!」


「そうですね早く行きましょう!」


再び俺はリベルとジュナに手を引かれ歩き出した。二人の歩幅や速度がいつもより早いことからも興奮しているのが分かる。俺は二人の歩幅に合わせるためにかなり頑張って歩かなくてはいけなかった。


しばらく歩きカラバザールの前に着いた。二人はカラバザールにどっちが先に入るか言い合っていた。俺は二人を後ろ目にカラバザールのドアを八回ノックした。


「合言葉は?」


「パラングーフ」


ドアが開いた。二人は先を越されたと頬を膨らませて怒っていたが、俺はそんな二人の手を引きカラバザール内に引っ張った。店主は二人が入るまで待ってくれていた。強面な店主だったが、俺たちのやり取りを見てその強面が綻んでいて笑みが顔を覗かせた。この店主は子ども好きなのが分かり俺は、店主に対する印象が百八十度変わった。


「ついてきな。」


無愛想な顔に戻り俺たちを奥の部屋に連れて行ってくれた。十五歳でお酒が飲める世界とは言え、まだ子どもの俺たちをカラバザールに入れることに俺は抵抗を覚えた。でもこの世界ではこれが当たり前の光景なのだと再認識した。


「すごいすごい!地下にこんな空間があるなんて!」


「ホント凄いですね!」


リベルとジュナはカラバザールの魅力に取り憑かれたようになっており鼻息をさらに荒くした。俺はこの二人を抑えるのは骨が折れるとため息が出そうになったが、二人を止めないと有り金全部使ってまでアイテム、アーティファクトを買うのではないかとハラハラして全力で止めることに尽力した。


「宿出るまでに言ったこと覚えてるよな?」


俺は二人の首根っこを掴み威圧的に問いただした。


「「え?」」


二人はそんなことを気にしてすらおらず俺は心底呆れた。二人は魔法やアイテムのこととなると周りが見えなくなることが致命的な欠点だと確信した。


「無駄な物、高すぎる物、実用性が見出せない物は買わないこと。これを守って無駄な出費を抑えることって言ったよね?それが守れないなら強制送還だからな。」


「「は、はい…」


俺が威圧的に問いただしたことは今までなかったから二人は驚いた顔をしていたが、きちんと俺の話を聞き従ってくれた。


「最高でも金貨一枚。でも金貨一枚以上を払う価値があることを俺に説明して納得したら買っても良いことにする。だからと言って何でもかんでも持ってこず、本当に必要だと感じた物だけを選ぶこと良いな?」


「「はい!」」


二人が元気よく返事をすると様々な売店に行きアイテム、アーティファクトを吟味した。俺は待っている間ベンチに座って競技場を眺めることにした。身体中に切り傷のある男と肋に大きな咬み傷がある男が殴り合っていた。切り傷は鋭利な刃物ではなくガタガタの傷だったことから、魔物の体での切り傷だと判断した。咬み傷は横十センチ縦二十センチほどの大きさからワイバーンの咬み傷ではないかと判断した。ワイバーン討伐に向かったシータから話を聞けていないから俺はその男の出番が終わったら声をかけようと決めた。そんな考え事をしているとリベルがやって来た。


「リフォンコレ見て!」


リベルの手には魔法石が乗せられていた。その色は紫で俺とリベルの目の色だった。俺は何となくリベルが持って来た理由は分かったが、念のために説明を聞くことにした。


「コレは?」


「防御の魔法石だって!性能は確かめていないけどこの大きさならかなりのものだと思うんだ!」


俺はそんな曖昧な情報で大金を叩いて良いのかと疑問に思い値段を聞いた。


「値段は?」


「二金貨と五銀貨!安くない?」


俺はリベルの金銭感覚に絶望した。国王に大金貨十枚貰ったとは言えそんなにポンポンと高価な物を買っているとすぐに無くなってしまう。金貨十枚で大金貨と同価値なのだから五個買うだけで持ち金の約十分の一になってしまう。貯金から桁が一つ減る恐ろしさをリベルは知らないようなので俺はリベルに力説した。


「あのなリベル、今俺たちは冒険者なんだ。公爵家じゃないんだ。金がいくらでもあるわけじゃないんだ。コレ一つ買うだけで何日分の食費になると思う?きちんと考えてくれよ。俺はもう自分のことを守れるんだ。風魔法で容量が膨大なリュックとかなら買うけど…」


俺がそんな話をしているとジュナがリュックを抱えてやって来た。俺は嫌な予感がした。俺の発言がフラグになったと咄嗟に理解した。俺がその場を離れようとするとリベルが俺の手を掴んだ。俺は逃げられないと確信してジュナの説明を聞くことにした。


「リフォンさんコレ凄いですよ!これには風魔法がかけられていてリュックの中の空間がとても広くなってるんです!リュックの口に入る大きさなら何でも入れられますよ!」


ジュナの説明は冒険者にはダイヤモンドのように輝いて見えるだろう。ダイヤモンドを目の前にしてその魅力に取り憑かれない人は多くないだろう。かく言う俺もその魅力に取り憑かれてしまった。俺は値段を聞く前にジュナの肩に手を置きこう言った。


「買ってこい。」


俺がそう言うとジュナの表情はパァッと明るくなった。


「金貨三枚です!」


俺はジュナに金貨三枚を手渡して背中を押した。ジュナは出店に戻り店主に代金を渡してリュックを持ち帰って来た。俺がこのファンタジーリュックに想いを馳せていると二人が不思議そうな顔で見つめてきた。こんなにファンタジーな物に二人は当たり前のように反応していたことに俺は肩を落とした。


「それじゃあもう買いたい物はないな?」


「うん。」


「はい!」


「それじゃあ帰ろうか。」


俺は何か忘れている気がしたが、今はそんなことよりファンタジーリュックのことで頭がいっぱいだった。

次回もお楽しみに


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