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90話 バルン討伐

「うわあああ!すげえええ!」


「いやっほーアタシ飛んでるぜー!」


「きゃあああ!怖いけど最高!」


「うおおお!はえー!」


「ははは、速すぎます!ももも、もう少し速度を落としてください!」


ティスタ、アイリー、ユナ、ドール、フィーア各々面白い反応が見れて俺は心底嬉しかった。ジュナもリベルも慣れてしまったから真新しいリアクションを見れて新鮮なのだ。


「大丈夫だよ!手を握ってる限り落ちることは断じてないから!」


俺はフィーアを落ち着かせるためにとみんなに注意喚起のために言った。


「そそそ、それって手を離したら命はないってことですか!?」


安全装置的な意味で伝えた言葉を真逆の意味で捉えてしまったフィーアは酷く恐れてしまった。俺は何とかして落ち着かせようと画策したがダメだった。ティスタに助けを求めてやっとフィーアは落ち着いた。


「いやー楽しかったね!」


ティスタがルイバディのみんなに問いかけるとフィーアを除く三人は元気よく返事をした。


「「「ね!」」」


「全然楽しくないですよ…」


フィーアはもう疲れてしまったのか膝に手をついている。


「「あはは!」」


そんな様子を見て俺とジュナは笑ってしまった。


「それじゃあここからは俺たちが案内するよ。」


ティスタが先導してくれて俺たちは森林の中に入った。しばらく歩くと周りから野生動物の視線を感じた。ビリヤー山脈ではあまり野生動物がいるような感じはしなかったが、ここはバルンの被害や他の魔物の被害が少ないのか野生動物がいるようだ。小さな野生動物は人間に向かってこないので俺は恐れることなくティスタの後をついて行った。


「どれぐらい奥まで進むんだ?」


「俺たちが前行ったところまで行ってみるよ。そこまでは歩いて三十分ぐらいだよ。でももしかしたら住処を変えてるかも知れないから少し時間がかかるかも。」


「結構かかるんですね。ちなみにバルンってどれぐらいの大きさなんですか?」


ジュナがティスタに聞くとティスタは親切に応えた。


「だいたい三メートルぐらいだけど大きな個体だと五メートルを超える個体もいたらしいよ。でも今ではそんな個体はいないらしいよ。」


俺はあやふやな情報に眉を顰めた。その情報の真偽は分からないがいないに越したことはない。


「そういえば俺たち陣形とか決めてないけどマズくないか?」


ドールがそう聞くとティスタは忘れていたのかマヌケな声を出した。


「あっ…」


「しっかりしてくれよ…」


アイリーはティスタのミスにため息をついた。


「今からでも決めましょう。」


ユナは前向きに今から決めて少しでも戦闘に集中できるように提案した。


「二人は完全に近接戦闘は無理なんだよね?」


ティスタはユナの提案を飲み俺たちのことを聞いてきた。


「「はい。」」


「なら二人はフィーアと同じタイミングで魔法を使って欲しい。俺とアイリー、ドールが前衛でユナとフィーア、リフォン、ジュナが後衛だ。異論はないな?」


「「はい。」」


俺とジュナのシンクロにティスタは仲が良いなと言いたげな目をしながら俺たちに微笑んだ。それからしばらくルイバディの戦闘方法や今までの討伐経験などを聞きながら歩いていると急に獣臭が漂ってきた。俺はその瞬間ビリヤーのことを思い出した。みんなも匂いに気がついたのか一気に警戒体制に入った。


「住処は変えないね。今からはリフォンたちは後ろにアイリー、ドール前に。」


「あいよ!」


「俺たちが守ってやるから安心してな。」


三人の背中がいつも以上に大きく見えた。俺は本当の冒険者を見た気がする。そのときティスタたちの奥から低く地響きのような唸り声が聞こえてきた。その声は建前で隠している俺の心の奥底にまで届いてきて俺は足の震えが止まらなくなった。


「大丈夫だよみんなついてるから。」


フィーアが俺の背中を摩りながら優しく落ち着かせてくれた。恐怖心は消えなかったが、フィーアの声で少しだけ冷静になれた。


「ありがとうございます。少しだけですけど落ち着きました。みなさんはよくこんなに怖い魔物に立ち向かっていけますね。」


俺は消え入りそうな声でフィーアに言った。するとフィーアは何とも言えない顔で俺に言った。


「私だって怖いですよ。でもそれ以上に死にたくないから誰にも死んでほしくないからです。」


当たり前だ。誰だって怖いものぐらいある。その怖いものに立ち向かう勇気を俺は持っていないのだ。本来の俺より一回りも小さな女の子でも立ち向かう勇気を持っているのだ。一応大の大人である俺がこんなにメソメソしていては面目が立たない。少しでも今までの自分から変わるために俺は自分に喝を入れた。


「ありがとう。」


俺はフィーアの言葉を聞いて自然と感謝の言葉が口から出ていた。フィーアが俺の言葉に疑問を抱いていたが、俺はそんなことは気にせず氷魔法のイメージに取り掛かった。氷柱のように円錐形に尖らし、横方向に落下するイメージを持たせた。一つでは足りないと思いそれを幾つも出現させた。さらに死に対する恐怖心とその恐怖心に対抗する俺の思いも氷魔法に込めた。


「来るぞ!」


ティスタが全員に聞こえる声で言うとティスタたちの目の前に約三メートルはある巨大なバルンがいた。俺はティスタたちに迷惑にならないように左右から氷魔法を発射した。


「グオオオ!」


見事に命中したが俺の氷魔法はバルンの分厚い肉に妨害され貫通することはなく致命傷を与えられなかった。バルンは攻撃された苛立ちからさらに大きな咆哮を上げてドールが構えていた大盾向かって自慢の爪を振り下ろした。その威力は凄まじく鋼鉄でできている大盾にくっきりと爪の痕が残った。


「俺たちが時間を稼ぐ!魔法の準備を!」


ティスタの一言に俺、ジュナ、フィーアは魔法のイメージを始めた。さっきの氷魔法はビリヤーの時と同じだったからバルンに致命傷を与えられなかった。だからもっと大きく頑丈で速度を上げるイメージを持たせた。さらにティスタたちを守りたい思いも乗せて威力向上に努めた。


「今だ!」


俺は氷魔法を横からジュナ正面から火魔法をフィーアは火と水の融合魔法を使いバルンの顔面付近で爆発させた。誰の魔法でトドメを刺したのかは分からなかったが、俺の氷魔法はバルンの脇腹を貫通していた。


「うおおお!良くやった最高だったよ!」


ティスタが俺の脇に手を入れ赤子を持ち上げるように俺を持ち上げた。俺は一瞬何が起こってるのか理解できなかったが、すぐにその状況が恥ずかしくなり降ろしてもらった。


「本当にありがとう二人がいなかったからまたやられていたかも知れないよ。」


「い、いえパーティとして勤めを果たしたまで…」


俺は恐怖心からの解放と魔力を多量に使った疲労感から気絶してまった。


目が覚めると肉の焼ける良い匂いがしていた。少し獣臭が混じっていたが確かに良い匂いで俺はよだれが出そうになった。


「おっ!目が覚めたかおはよう。体調は大丈夫か?」


ティスタは俺が起きた瞬間気づいてくれて常に心配して見ていたのだろう。人として出来すぎているティスタに感動しつつ俺は体調は万全なことを伝えた。


「大丈夫だ。疲れただけだから眠ったらスッキリしたよ。」


「そうかなら腹ごしらえをしないとな!ほらバルンのステーキだ。」


俺は木の皿に乗せられたバルンのステーキを受け取った。ビリヤーのステーキとは違いバルンのステーキは繊維質で少し固そうな印象を受けた。獣臭はないかどうか心配だったが、それは良い意味で裏切られた。新鮮だからか臭みは一切なく文句があるとするなら少し硬いぐらいだった。


「美味しい…」


俺の自然と口から出た言葉にみんなは微笑み、俺たちはそのまま談笑しながらバルンのステーキを楽しんだ。

次回もお楽しみに


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