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9話 目が覚めると

異世界に転生した俺はリフォンという名を貰い猫生を送る事になった。でも優雅に生きて死ぬだけでは面白く無い。異世界に転生したのに勿体無い。異世界を思う存分堪能してやる!

「?!」

 リベルが勢いよく上体を起こした。

(もう大丈夫なのか?魔力を使い過ぎて倒れたけど?)

(ああ。そうか倒れてたのか…)

(何で残念そうなんだ?)

(リフォンは知らないのか。実技試験で魔力切れを起こしたらその時点で不合格なんだ。)

 リベルは顔に両手を当て大きな溜息をついた。

(でも試験官は二人とも合格だよって言ってたよ。)

「え?!あっ。」

(ごめん。驚き過ぎて。僕たち合格なの?)

(らしいよ。)

 リベルは嬉しさからか不思議なのか分からないが呆然としていた。

「リベル君?起きてる?」

 実技試験の試験官の声がした。

「は、はい!起きてます!」

 リベルは扉の向こうにも聞こえるぐらい大きく返事をした。

「失礼するよ。」

「どうぞ。」

 時間を見ると実技試験から三時間も経っていた。

「気分はどうだい?」

「ま、まあ。悪くは無いです。」

「チョコ食べるかい?元気出るよ。」

 そう言うと試験官は板チョコを差し出した。

「あ、ありがとうございます。」

 リベルは少しずつ板チョコを食べているとその様子を見ていた試験官が問うた。

「何でそんなに怪しんでるだい?二人とも合格だって、使い魔に教えただろう?」

「ニャー!」

 俺は元気に返事した。

「だけど僕は魔力切れを起こしたんですよ?普通なら不合格なのにどうして?」

「普通なら不合格だった。でも二人は普通じゃない。魔法防護がかけられたカカシを壊す主人と、二種類の魔法を使える使い魔しかもかわいい猫。ね?普通じゃ無いだろ?」

 俺の容姿は別に普通だろと心の中でつっこんだ。

「実技試験の責任と合否は全て私に一任されている。私は二人の実力と才能を買って合格にしたんだ。魔力切れなんて学園の教師でもなるよ。君みたいに出力最大を二つ同時に使えばね。とりあえず明日から学園に通えるから私の所に来てね。それじゃあお大事に。」

「あ、ありがとうございました。」

「あっ!忘れてた私の名前はマリー・シュスティー。よろしく。それじゃあねかわいい猫ちゃん。」

「ニャー。」

 なぜか分からないが俺に出会った人は俺を撫でて行く。猫の容姿が素晴らしいのは分かるが普通他人の猫を躊躇無く撫でるだろうか。

(明日からって言ってたけど、そんな急に学園生活が始まるのか?)

(いや、僕たち新入生は年度で言えば来年度からだね。でも入試で試験官に目を付けられたり好まれたりした受験生は、その試験官とマンツーマンで魔法の指導をしてもらえるって噂があるんだ。噂だから本当にあるとは思っていなかったから驚きだよ。)

(ところで国王推薦はいつもらえたか分かるんだ?)

(入学してからだね。教師から直接教えられるんだ。)

(もうそろそろ宿舎に戻らないか?ここは薬品?消毒液?臭くて嫌なんだ。)

(ごめん気付かなかった。すぐ戻ろう。)

 リベルが俺を抱き抱え扉を開けるとそこにはハーリーがいた。

「あれ、ハーリー?どうしたの?」

「実技試験の時に倒れたでしょ?だから大丈夫か気になって…」

 ハーリーはモジモジしていた。そんなハーリーを気遣うように俺は鳴いた。

「ニャー。」

「ふふ、あなたは優しいのね。」

 俺の事を撫でながらハーリーは言った。

「リベル。あなたに渡したい物があるの。受け取ってくれる?」

「構わないよ。」

 ハーリーは一通の手紙を差し出した。

「これをリベルのお父様に渡して欲しいの。」

「何か訳アリって感じ?」

「…そうなの。」

 ハーリーは何か言いづらそうだった。

「もし良ければ僕にも話して欲しい。」

「分かった。」

「立たせてるのも悪いからどこかフリースペースのような所でゆっくり話すよ。」

 俺たちはしばらく歩き机と椅子があるフリースペースに着いた。

「ここならちょうどいいね。」

「さっきの話なんだけど…実は私の家は子爵家の領地にあって、メガフォーン家に多額の税を納めてるの。その額が異常だから公爵家であるペタフォーン家のリベルに手紙を渡してもらおうと思ったの。利用するようでごめんなさい。」

「話してくれてありがとう。お父様にこの手紙と僕からも君たちを救うように手紙を出してみるよ。」

「本当?!ありがとう!」

 ハーリーはリベルの手を強く握り締め感謝を表している。

「あ、ありがとうございます。」

 ハリスもリベルの手を握り感謝を伝えている。二人の態度から見るにリベルが唯一の頼みの綱なのだろう。

(なあリベル、グロウが何か言ったところで変わるものなのか?)

 俺はテレパシーで聞いてみた。公爵家とは言えその領地は子爵家の者だから何も変わらないと思ったのだ。

(変わるよ。エクサフォン国は権力が何よりも強いんだ。実力よりもね。だから公爵家の言い分に子爵家は絶対に従わなければならないんだ。)

(絶対的な権力ってなんか怖いね。グロウみたいに人が良い人ばかりじゃないだろうし。メガフォーン家がそうだから。)

(うん。そうだね。でも国王様はお父様から聞いた話によると性格が良くて人情家なんだってだからエクサフォン国がこれだけ繁栄しているんだと思うよ。)

「さっきからずっとテレパシーしるけど何を話してるの?」

「「?!」」

 二人同時に肩が跳ねた。

「ご、ごめんね。リフォンと話すのが好きだから。」

「ふーん…何の話してたの?」

 何だか不貞腐れているようだった。

「メガフォーン家に対してお父様が何か言ったところで聞くのか?ってリフォンが聞いてきたからその説明をしてたんだよ。」

「リフォンって本当に使い魔?やけに賢くない?」

「僕のリフォンだからね!」

 リベルはハーリーが言ってる意味で捉えずポジティブに捉えた。

「まぁいいわ。手紙の件本当にありがとう。これから先合格発表まで一週間あるけど二人はどうするの?一度家に帰るの?」

「いや僕たちは夏までこっちにいるよ。兄さんもいるからね。」

「そう。それじゃまた会うことがあったらお茶でもしよ。」

 ハーリーは小さく手を振りどこかに去って行った。

(この後どうする?)

(とりあえずリーン兄さんに現状報告かな。)

 俺たちは宿舎に向かった。

(そういえば、マリー教官?先生?はまた明日って言ってたけどどこに向かえばいいのか言ってなかったよな?)

(確かに…まぁリーン兄さんに聞いて分からなかったら、教員室に向かえばいいんじゃないかな?)

 そんな話をしていたら宿舎に着いた。初めて来た時より明らかに空気が重い事に気がついた。

(リベル、なんか空気重いよ。)

(そうなの?僕には分からないな。)

(早く部屋に向かおう。)

(分かった。)

 俺たちは足早に部屋に向かい部屋に入った。

「あーーー、絶対落ちたーーー。」

 隣の部屋から嘆きの言葉が聞こえてきた。俺たちは空気が重い理由に気がついた。

((そういう事かー。))

 俺たちはテレパシーで会話するのにはとっくに慣れていたが、被ることは無かったのでお互いにビックリし少し笑った。

(リーン兄さんに電話するね。)

(じゃあ俺は寝とくわ。)

(おやすみ。)

 ジリリリ!ジリリリ!

 リーンは暇だから寝ていたのにけたたましい轟音に叩き起こされた。

「誰だよこんな時間に。はい?」

 リーンは不機嫌そうに出た。

「リーン兄さん?ちょっと聞きたいことがあるんだけど良い?」

「なんだリベルかどうした?」

「今日試験終わったんだけど、マリー先生?が実技試験の試験官だったんだけどその人に明日から私の所に来てねって言われたんだけどどこに行けばいいのか知りたくて。」

 リーンは電話越しに聞いたその内容に目を見張った。

「それって事前指導か?流石俺の弟だ!今からそっちに行くから部屋番号教えろ!」

「事前指導?何それ?」

「そっち行くから部屋番号教えろって!」

「108だよ。」

 チリーン!

 電話切れたと同時にすごい勢いでリーンが走ってきた。

 ガチャン!

 走っている時と同じ勢いで扉が開きリーンが入ってきた。その扉を開ける衝撃で俺は目が覚めた。

「凄いぞお前ら!」

 リーンは俺を抱き上げてリベルと一緒にハグをした。俺はリーンとリベルの間に挟まれて潰れるかと思った。

「リーン兄さん落ち着いて!」

「すまない、興奮し過ぎてた。」

「ところで事前指導って何?」

 俺はリーンが興奮している理由と事前指導が何か関係があるのだろうと真剣に聞いた。

「そうだったな、事前指導は教師が気に入った受験生や実力を見込んだ受験生のみを文字通り学園に通う前に指導出来るんだ。もちろん受験生に拒否権はあるがエクサフォン学園の教師は世界トップクラスの魔法使いたちだ、だから断るやつなんていないと言っても過言では無い。その事前指導に二人が選ばれたんだよ!お母様でさえ事前指導には至らなかったんだ!今すぐお父様とお母様に手紙を出すぞ!」

 リーンは一人で話を進める俺たちを置いてけぼりにした。

「よし書けた!出してくる!」

「ちょっと待って、これもお願い。」

「?何か分からんがまぁ良いだろう。」

 リベルはハーリーに渡された手紙とリーンが手紙を書いてる間に書いたハーリーの手紙を念押しする手紙を渡した。

(あんなリーン初めて見たぞ。)

(そうだろうね。僕も一回しか見たこと無いからね。)

 俺たちはしばらくリーンが帰ってくるまでのんびり待った。何もしていないのと俺の体温でリベルは眠くなったようで俺を胸の中に抱き抱え眠りについた。俺もあったかくなり眠くなったので寝た。

「寝顔かわいいな。」

 目を覚ますと椅子に座り微笑んでるリーンがいた。

「おはようリフォン。」

「ニャー。」

「マリー先生はいつも魔法競技室っていう所にいるよ。マリー先生は魔法演習の先生だから。学園に通い始めたらそこは何度も使うから覚えておいて損は無いよってリベルに伝えといて。」

「ニャーン!」

 リーンは俺の頭を撫で静かに部屋から出て行った。俺はもう一度リベルの胸の中で眠りについた。

次回もリフォンの猫生をお楽しみに。


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