表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/135

88話 シュルラーでの休日

今日は魔法の特訓もしなければ魔物の討伐にも行かない。所謂今日は休日だ。この世界に転生してきて休日と言えるような休日はあったけど、猫の姿だから買い物にも行けなかったし自由に休日を堪能できていたわけではなかった。だから今日は自由に休日を堪能できる日というわけだ。俺は何をしたいのか思いつかなかったので街を歩きながら考えることにした。


外に出ると冒険者が数多くいた。パーティなのか一定数で固まって行動している人たちや朝からお酒を飲んでいる冒険者もいた。パーティは基本的に三人から五人が多いように感じた。どのパーティにもガタイの良い人がいた。その人は近接戦闘を得意としている人なのだろうと思った。今朝会ったルイバディも近接戦闘を得意としていそうな人がいたのを思い出した。そんな考え事をしていると誰かにぶつかってしまった。


「す、すいません!」


頭を下げて謝った。俺はぶつかった時の筋肉質ながらも柔らかい感触にドキッとしてしまった。


「いやこっちこそ…ってアンタ今朝アタシたちを助けてくれた坊やじゃないか!?」


「え?」


俺が顔を上げるとそこには今朝の女戦士さんがいた。


「やっぱりそうだ!いやー今朝は本当にありがとうね!」


大通りでかなりの声量で感謝された俺は周りから注目されてしまった。周りの冒険者たちは口々にあれってルイバディのと言っていた。俺はその反応からルイバディがシュルラーでかなり名の通った冒険者なのを理解した。


「あっあの俺用事があるので失礼します!」


俺は嘘をついてその場から離れようとしたが、それは悪手だった。


「それならアタシもついて行くぜ!」


なんとその女戦士さんが俺の左側に周り右肩に腕を置いてきたのだ。これだけ俺のことを良く思ってくれている人から逃げるのは良くないと思い俺はそのまま歩いた。しばらく歩くと女戦士さんが口を開いた。


「そういえばアンタの名前ってなんだ?」


「え?あー言ってませんでしたね。俺はリフォンです。そう言うお姉さんの名前は何ですか?」


俺は自分だけ名前を知らないのは気まずくなると感じて名前を聞いた。


「アタシはアイリーだ。よろしくリフォン!」


「はい、よろしくお願いします。」


俺はアテもなくただ歩いているとそれを感じ取ったのかアイリーさんが話しかけてきた。


「今どこに向かってるんだ?」


「えーと…どこに行こうか悩んでるんです…」


俺はまた嘘をついてしまった。実際はどこに何があるのかもほとんど把握できていないから俺が今どこにいるのかも理解できていない。


「じゃあアタシの行きたい所に行って良いか?」


「別に良いですよ。俺も目的地が決まってる方が良いですし。」


「なら決まりだな!」


俺はそのままアイリーさんに肩を掴まれたまま歩いた。アイリーさんの歩みについて行くと大通りから外れた。俺はどこに行くのか分からず少し不安になってきた。このまま連れ去られるんじゃないかとも思えて心拍数が上がった。俺はどこに行くのかをアイリーさんに聞いた。


「こ、これってどこに向かってるんですか?」


「あー言ってなかったな。カラバザールだよ。」


俺はどこかで見たような気がする名前に少しだけ安心感を覚えた。そのまま少し歩いているとシュルラーに来て初めて見つけた飯屋に着いた。


「ここだよ。」


ここは俺が恐怖心に負けて行かなかった飯屋だった。俺は大丈夫かと心配だったがアイリーさんは俺の肩を強く掴んだ。


「大丈夫だよ。初めてここに来る人はみんな恐怖を感じるもんだ。それにアタシがついてる。」


アイリーさんの言葉に安心感を覚えた俺の心拍数は徐々に下がっていき平常心を取り戻した。


「もう大丈夫かい?」


「はい大丈夫です。」


アイリーさんは親切に俺が落ち着くまで待っていてくれたのだ。アイリーさんの手が肩を離れ飯屋のドアに向かった。するとアイリーさんはドアを八回ノックした。するとドアの向こうから声が聞こえてきた。


「合言葉は?」


「パラングーフ」


アイリーさんがそう言うとドアが開いた。するとアイリーさんが俺の肩を掴み直した。俺はその腕に全幅の信頼を寄せていることに気がついた。そのまま俺たちはカラバザールに入った。中に入るとそこは普通の飯屋だった。でも店主らしき人に奥の部屋に案内され俺たちは地下へと降りて行った。


そこには競技場で殴り合いをしている男の人たちや出店でアイテムやアーティファクトなどを売っている人など様々な人がいた。俺が呆気に取られているとアイリーさんが説明してくれた。


「あそこで殴り合ってるやつらは元冒険者の選手だ。観客はどっちが勝つかに賭けて一喜一憂を楽しんでる。その辺りにある出店は迷宮やダンジョンに行って持ち帰ったアイテムやアーティファクトを売ってるんだ。ギルドに買い取ってもらうやつもいるけど、ここの方が中抜きがないから高値で売れるんだ。」


「ここって違法じゃないんですか?」


俺は心配だったことを聞いた。違法性のある所なら近づかない方が良いのはどの世界でもそうだろう。


「違法じゃないよ。それにここは冒険者たちの娯楽や売買の場だから危険な人はいないよ。暴れたりしたら追い出されるからな。」


「こんな雰囲気なのに以外です。」


「初めて来た人はみんなそう言うよ。」


俺たちはぐるぐると出店を見たりしたが何か良さそうな物はなかった。アイリーさんも俺と同じで今回はハズレだと残念そうにしていた。そのまま俺たちはカラバザールを後にした。


「また何か欲しい物が見つかったらアタシを呼びな。アンタはアタシたちの命の恩人なんだから遠慮はするなよ。それじゃあ!」


「ありがとうございました。」


俺はアイリーさんと別れ宿に戻ることにした。

次回もお楽しみに


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ