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87話 パーティ

俺は女神との会話から目が覚めた。早速精神強化魔法を試そうとしたが俺は致命的なミスをした。それはイメージの仕方だ。火や水などの魔法は物体として存在しているからイメージしやすいが、今回は精神強化で実在している物ではなくどうイメージすれば良いのか分からない。俺はその事実に気づき膝から崩れ落ちた。せっかく女神に教えてもらったのに結局俺は腑抜けで臆病なままだ。どうしようか悩んでいる暇を惜しみ精神強化魔法を手探りでやってみた。精神的に強くなった自分をイメージしてみたりリベルの精神力を思い浮かべ、猫を被る要領で自分に覆い被せてみたりしたが全て不発だった。女神が言っていた通り場数を踏んで慣れるしかないのかと落ち込んでいるとリベルが目を覚ました。


「おはよ。」


「早いねどうしたの?」


リベルは俺が精神強化魔法に手を焼いていたことを見ていたかのような口ぶりで少し驚いた。見られて困ることはないが女神のことがバレるのは少し面倒くさそうだからバレないように気をつけないとと思った。俺が黙っていることを不審に思ったのかリベルは俺のことを不思議そうに見つめてきた。察しの良いリベルに気づかれないように俺は誤魔化した。


「んえ?ごめんまだ寝ぼけてて…」


俺が欠伸をしながら応えるとリベルは信じたのか二度寝をした。まだ早朝だったこともあり俺も二度寝しようとしたが完璧に目が覚めており眠れなかった。俺は宿から出てシュルラーの外壁に飛び乗り朝日を眺めることにした。その光景に俺は癒された。最近心が休まるタイミングがなかったから良いリラックスになった。俺は心地良くなり飛んだ。体から無駄な力が抜けるぐらいリラックスできて最高な気分だった。しばらく何も考えずに飛んでいると肩を組み足を引き摺りながら歩く三人と誰かをおんぶしている五人組が目についた。明らかに怪我をしている様子だったので俺は近くに降り立った。


「大丈夫ですかー?」


俺が完全に降り立つ前に声をかけたから五人組は上から声をかけられているとは気づかず、お迎えが来たんだわと諦めている人や俺の声に怯えている人がいた。


「すいません怖がらせるつもりはなかったんです…」


そう言った瞬間俺は五人がかなり酷い怪我を負っていることに気がついた。俺は早く治療しないとと焦った。


「だ、大丈夫ですか!?い、今光魔法で回復させますから!」


俺は持て余している魔力を総動員させて五人を回復させた。回復してる最中その人たちが何か喋っていたが、五人の大量な怪我を見て気が動転していた俺には何を言ってるのか聞き取れなかった。とにかく夢中で回復させているとある程度傷口は塞がった。


「もう大丈夫だと思います。」


「ありがとうございます!でもどうしても俺たちを助けてくれたんですか?」


リベルとは異なるタイプの正統派イケメンが俺に問うてきた。俺は特に何も考えておらずどう応えようか必死で考えた。でもありのままを伝える方が良いと思いそのまま伝えた。


「えっと空飛ぶの気持ち良いなーって飛んでたら怪我してるみなさんを見つけて、それで助けなきゃって思って助けました。」


五人は一様にキョトンとしており俺は何か変なこと言ったかと冷や汗が出てきた。少しするとイケメンさんが肩を貸していた身長百八十センチはありそうな女戦士みたいな見た目の人が言った。


「助けてくれてありがとうな!あのままだったらヤバかったからホント助かった。礼は何を渡せば良い?」


「え…べ、別に見返りを求めて助けたわけじゃないので大丈夫です。」


俺はその人の気迫に押され少しどもりながら応えた。


「そう言われてもアタシたちは助けて貰ったから何か返したいんだ。お前何か欲しい物とかないか?」


俺は今何か欲しい物もないし見返りを求めているわけじゃないから返答に困った。そんな様子を見かねて大きなトンガリ帽子を被った小柄な女性が一つの妙案を思いついた。


「今何も求めていないのなら、困った時や欲しい物ができた時に私たちのパーティーを探してください。シュルラーを拠点としていますのですぐに見つかるはずです。そんなことより改めてお礼を言います。ありがとうございました。」


トンガリ帽子を脱いで両手に持ち頭を下げて感謝を伝えられた。俺はすぐに頭を上げてくださいと言ったが、その人は少しの間頭を下げたままだった。その人が頭を上げると俺はその人の提案を飲みその旨を伝えた。


「俺たちのパーティ名はルイバディだ。用がある時は冒険者ギルドに探していると伝えてくれたらどんな依頼よりも優先して馳せ参じるよ。」


「そ、そんなにしてもらわなくても大丈夫ですよ。」


俺が流石に申し訳ないと感じてそう言うと、弓を担いでいる女性をおんぶしているガタイの良い男性が言った。


「俺たちは命を助けられたんだ。それでも足りねぇぐらいだよ。あんたはもっと自分に自信を持ちな。そんな気概だと女にモテねぇぞ。」


俺は思い当たる節があり心にグサッと言葉の矢印が刺さった。


「そ、そこまで言うなら必要になればあなたたちの力をお借りします。」


「おうそうしてくれや!」


ガタイの良い男性がそう言うとおんぶされていた女性が目を覚ました。


「あれ?私たち…何で怪我が治ってるの?」


「彼が助けてくれたんだ。」


イケメンさんが端的に伝えるとその女性はガタイの良い男性の背から降りた。回復させるのに体力を消耗したから足元がおぼつかなかったが、パーティメンバーに支えられて俺の前に立った。


「あなたは私たちの命の恩人よ。本当にありがとう!」


そう言い終えるとその人は俺の頬に口づけをした。俺は顔が真っ赤になっていることを自覚できるぐらい顔が熱くなった。


「そ、それではこれで失礼します!」


俺はあまりの恥ずかしさにその場から飛んで逃げた。


宿に戻る頃にはすっかり日が昇っており二人は目を覚ましていた。


「「おかえり。」」


「た、ただいま。」


俺はまだ顔が赤くないか心配だったが二人は何の反応も示さなかったためおそらく大丈夫なのだろう。


「どこ行ってたの?」


リベルが聞いてきた。俺はあったことをそのまま伝えた。でも頬に口づけをされたことは黙っておいた。


「流石リフォンだね。誇らしいよ。」


「本当ですよリフォンさん!一番弟子として誇らしいです!」


「そ、そうかぁ?」


人助けをしたことは自分としても誇らしいが、それを近しい人に褒められるのは嬉しいもので明らかに俺の顔はニヤけていたであろう。リベルはそんな俺の頭を撫でた。最近猫の姿に戻っていなかったからリベルに撫でられるのが久しぶりでその心地良さに少し浸っていた。


「そういえば昨日バラサープをギルドに持って行ったら銀貨十枚だったよ。」


俺は銀貨と言われてもどのくらいかピンとこずリベルに説明を求めた。


「銀貨十枚って具体的にどのくらい生活していけるんだ?」


「基本的に冒険者の一日の出費は銅貨五枚程度だって言われてて、銅貨百枚で銀貨一枚の価値だからしばらくは生活できるよ。」


「結構な価値があるんだな。」


俺は思っていた以上の金額に驚いた。リーンが御者に金貨一枚をチップのような感覚で与えていたことを思い出し、貴族ってすげーと感じた。


「今日はどうしますか?一日のんびりしますか?それとも今日も何か魔物の討伐に行きますか?」


ジュナが今日の予定を聞いてきた。俺とリベルはどうしようかと考えているとジュナが自分の考えを提案してきた。


「昨日依頼書一覧を見ていたら五人以上の依頼が多くありました。難しい分報酬は豪華で金貨一枚と書いてある依頼書もありました!あと二人人を集める必要はありますが、その苦労以上の報酬が見込めます。どうですか?」


俺とリベルは即答はできなかった。俺たちの実力を他人に見せびらかすのは好ましくないからだ。俺たちは魔法的には強いが肉体的にはまだ子どもで、大人の男に魔物討伐途中に裏切られて殴られたりなど考えてしまった。したがって俺はジュナの提案を飲むことはできなかった。リベルの言い分は簡単でお金に困ってないから無理にリスクを負う必要はないとのことだった。俺たちの返答を聞いてジュナは残念そうにしていたが、これは俺たちの身を守る行動だと諭すと渋々納得してくれた。


「今日は休日にしようか。」


「さんせー。」


リベルの提案に俺は何も考えず賛成して今日は各々好きに過ごすことになった。

次回もお楽しみに


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