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8話 入試本番

異世界に転生した俺はリフォンという名を貰い猫生を送る事になった。でも優雅に生きて死ぬだけでは面白く無い。異世界に転生したのに勿体無い。異世界を思う存分堪能してやる!

「リフォン起きて!」


 リベルは俺の体を揺すりながら起こした。


「ニャー。」


 俺は寝起きでも猫のフリを忘れない。


「朝御飯食べて時間会場行くよ!」


 リベルはもう食べ終えて俺のだけが残っていた。俺はいつもより急ぎ足で朝御飯を食べ終え試験会場に向かった。


「部屋番号を私に伝えて各々の試験会場に向かうように!」


 そこにはいかにも情熱的な人が受験生に呼びかけていた。


「リベル・ペタフォーンです。部屋番号は108号室です。」


「よし!リベル・ペタフォーン試験会場に向かえ!」


 その人は手に持っている書類とリベルの顔を見比べて出欠確認をした。


「はい。ありがとうございます。」


 リベルは早足で試験会場に向かった。その建物は三階建てでレンガ造だ。リベルが俺を抱き抱えその建物に入ろうとしたら止められた。


「ここに使い魔は入れません。左手の建物が使い魔専用の控室ですのでそちらをご利用ください。」


「すいません。」


 リベルは俺を連れて行こうとしたが俺は自分からリベルの手を振り払いテレパシーをした。


(自分で行けるから、自分の事に集中しろ。)


(うん。ありがとう。)


 リベルは試験会場に入って行った。


 使い魔はテレパシーが使えるから、それがカンニングになるのを抑える為に使い魔は別室待機なのだろう。


「おや?君迷子かい?」


 金髪の好青年に声をかけられた。雰囲気はリーンとリベルに似ている。


「ニャー。」


 俺は首を振りながら返事をした。


「迷子では無いのか。じゃあ俺が送って行こう。」


 リベルのように俺を抱き上げ胸に抱える。


「控室に行くのでいいのかい?」


「ニャ!」


「そうか。君は今年の受験生の使い魔なんだね?」


「ニャ。」


「君はモフモフでサラサラでずっと触っていたい毛並みをしているね。」


「ニャー!」


 俺は何でこんな見ず知らずの奴に抱き抱えられながら律儀に返事をしているのか分からない。


「さ、着いたよ。主人の試験が終わったら君の番だから気持ちの整理をしておきなよ。」


「ニャ。」


「じゃあね。」


 何の為に俺に話しかけてきたのか本当に分からない。でも万人に好かれそうな人柄だったからリーンとも知り合いかもしれない。


「ワン!」「ニャー」「ホーホー」「チュンチュン」


 控室に入った瞬間様々な動物の鳴き声がして耳を塞いだ。ここにいる使い魔で俺と同様に喋れる使い魔はいないのかなと周りを見ながら歩いていると、人間の肩に乗るぐらい小さな人型の使い魔がいた。


「かわいい…」


 その使い魔は俺に対してかわいいと言ってきた。


「ニャー!」


「あなたも喋れないのね残念。」


「ニャ?」


「何でも無い気にしないで。」


 周りは動物の使い魔だらけで心細かったのだろう。俺はそいつの隣に行き頭を擦り付けた。


「触らせてくれるの?ありがとう。」


 とても嬉しそうな顔をしながら俺を触っている。小さな手で俺の事を目一杯撫でている。俺の顔と同じぐらいの小さな体躯とは見合わないぐらい魔力を秘めていると考えると少しゾッとする。


「あなたの毛フワフワでサラサラでとても気持ちいいわね。主人に愛されているのが分かるわ。」


 俺たちがこんなにもだらだらしている間にリベルたちは大変な試験を受けていると考えると胸が痛い。


「さっきまでは周りの子たちに対して怖いとかの偏見を持っていたけどあなたのおかげでその偏見が晴れたわ。ありがとう。そうだ名乗って無かったわね私はハリスよ。よろしくね猫さん。」


「ニャー。」


 ハリスとは良い関係を結べそうだから覚えておこう。いつかリベルの友人になるかもしれないからな。

 待ち疲れて寝る使い魔が多くなってきた頃さっきの情熱的な人が来た。


「よし!お前たち、主人の試験が終わった次はお前たちも含めての実技試験だ!」


 次々と使い魔たちが主人に連れられ次の試験会場に向かった。


「リフォン?どこ?」


「ニャー!」


「ここにいたのか。そちらはお友達かな?初めまして。」


 ハリスは恥ずかしそうにモジモジしていた。


「ハリス?どこー?」


 ハリスはその声のした方に一目散に飛んでいった。


「どうしたのハリス?」


「な、何でも無い。」


 ハリスは人見知りなのだろう。


「ご、ごめんね。驚かせるつもりは無かったんだ。」


 リベルはハリスに対して謝った。


「ごめんなさい。この子人見知りなの。許してあげて。」


「ニャー。」


「かわいい猫さんね。あなたの使い魔なんですか?」


「そうです。リフォンって言います。」


「ハリス、あの猫さんはリフォンって名前らしいですよ。今後とも仲良くね。」


「うん。」


 ハリスは小さく返事をした。俺はハリスに呼びかけるように言った。


「ニャー!」


「よろしくねリフォン。」


 ハリスが初めて名前を呼んでくれて少し嬉しかった。


「お前ら!間に合わなくなるぞ!」


「す、すいません。今行きます。」


 俺はハリスの主人の名前が気になりリベルにテレパシーで聞いた。


(リベル、ハリスの主人と知り合いなのか?)


(席が隣だったんだ。名前はハーリー・スイートだよ。だからハリスって名付けたんじゃ無いかな?って僕は思ってるよ。リフォンと同じでね。)


(良い人そうだな。ハリスも俺の事を気に入っていたと思うぞ。主に毛を。)


(リフォンの毛は誰でもメロメロになっちゃうよ。)


 リベルは俺を抱き抱えて走りながらテレパシーをしている。そんなリベルを俺は器用だし体力もあって自慢の主人だと思った。


「後ろの二人を含めたら全員かな?」


 黒髪ロングの女性が呼びかけてきた。おそらくあの人が試験官だろう。


「「すいません。」」


 リベルとハーリーの第一声は一致した。


「別に遅刻じゃ無いから大丈夫だよ。揃った事だし今から実技試験を始めて行くよ。」


「「「はい!」」」


 その場にいたみんなが一糸乱れ無い返事をしてこの試験にかける思いや熱意を感じた。


「良い返事だね。それじゃ部屋番号順に始まるよ。101番から。」


「はい!」


「まずは自分だけで次は使い魔だけ最後に二人でって感じでも良いし、最初から二人でやって複数回の魔法を撃つでも良いよ。」


 自由度が高い分実力を求められる試験になっていて、みんなの前で魔法を使う緊張感と本番でいつも通りの魔法が使えるかのテストなのだろう。


「やります!」


 その受験者は手を前に突き出し雷魔法を使った。その魔法の威力は申し分無く、十メートル先にあるカカシを焦げさせるほどの威力だ。


「行くよ。」


 使い魔に呼びかけ魔法を使った。その使い魔は氷魔法を使った。口から吹雪を吹き、カカシを凍傷させた。


「最後行くよ!」


 主人は水魔法を使い、使い魔は先ほどと同じ氷魔法を使った。氷山の一角のようになったカカシを見て試験官は頷いていた。


「よし。次102番。」


 その調子で試験を続けていき俺たちの番になった。


(リベル、俺二種類使うけど良いよね?)


(ああ、もちろん。全力でやって良いよ。お父様から許可は貰ってるから。)


(前と言ってる事違わないか?)


(リフォンと僕なら狙われても自分で助かると思ったんじゃ無い?)


(まあ、いいか。)


「次108番。」


「はい!」


 リベルは手を前に突き出し、掌に大きな火を作った。その火からカカシに向かって火柱をぶつけた。


 ゴオオオ!


 その威力はカカシが見るも無惨な姿になっていた。


「良い威力だ!」


 試験官は目をキラキラさせていた。


「リフォン、頑張って!」


 俺はリベルに倣うように口から火柱を吹いた。俺もリベルと同様に隣のカカシを見るも無惨な姿になっていた。


「使い魔でこれだけとは素晴らしい。」


 試験官は興奮を隠せないようだった。俺はやりすぎたかと思った。


「リフォン行くよ!」


(僕が雷と火を同時に出すからリフォンは水魔法で良いよ。)


(分かった。)


 俺はリベルの水魔法でという言葉が引っかかったが気にしないようにした。


「はあああああ!」


 リベルは右手に火を左手に雷を出し俺も水魔法を使う準備をした。


 ゴオオオ!バチバチバチ!ブシャアアア!


 一度に三つの魔法を使ったから辺りは騒然としていた。カカシは消し飛んでいた。


「お疲れ様リフォン。」


 そう言うリベルはとても疲れた様子だ。俺はリベルに寄り添った。


「大丈夫だよ、魔力を使い過ぎて疲れただけだ。それより二人ともこの実力なら国王推薦間違い無しだね。今救護班を呼んでるから救護室で休んで来な。」


「ニャー。」


 話している間に救護班の人たちが担架を持ってやってきた。


「1.2.3!」


 リベルを担架に乗せ俺もリベルの上に乗せた。


「ゆっくり休みなよ!二人は合格だから!」


 試験官は俺たちにそう言った。だが一番喜びそうなリベル本人は寝ていてその報告を聞けなかった。

次回もリフォンの猫生をお楽しみに。


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