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77話 実戦訓練

あれから数日間ジュナはリベルに教えてもらった技術を意識して練習したおかげでかなり上達している。と言ってもまだ学園の生徒には及ばないが、一般冒険者と肩を並べる程度の実力はあるだろう。知らんけど。


(そろそろ実戦訓練する?)


(は、早くない!?)


(いや僕たちの時間は限られているんだから早くするに越した事はないでしょ。)


(そうだけど…流石にあの歳で実戦訓練は酷じゃないか?)


(なら僕たちが付き添ったら良いんじゃない?)


(まぁそれなら…)


ということでジュナの実戦訓練をすることとなった。俺は心配だったが、その心情は良い意味で裏切られた。


「今日は実戦訓練をする。今からビリヤー山脈で逸れビリヤーを探す。そしてその逸れビリヤーをジュナ一人で討伐する。僕たちが後ろで見てるから危なかったり、討伐は無理だと判断したら僕たちがビリヤーを討伐する。これで良い?」


「師匠たちの力は借りません。俺一人だけの力でやります。」


俺たちのことを師匠と慕ってくれるのはとても嬉しいが、まだ10歳にも満たない子どもにビリヤー単独討伐は認められない。それはリベルも同じ考えらしく認めなかった。


「それはダメだ。」


「どうしてですか?」


「ジュナは魔法しか知らない。その知ってる魔法もまだまだ序の口だ。そんな状態で一人にするなんてできない。」


「分かりました…」


「これはジュナのためを思ってなんだ。だから僕たちは君に危害が加えられないように後ろで待機しておくんだ。分かってくれた?」


「はい。師匠たちの期待に応えられるように頑張ります!」


「(頑張れ!)」


リベルは口に出し、俺は心の中で応援した。本当なら俺も口に出して応援したかったができない。不便だと改めて実感した。


「すごい飛んでる!飛んでる!」


リベルがジュナをお姫様抱っこしてジュナが俺を抱き抱える。それで三人で風魔法で飛行することが可能になった。最初はリベルがジュナをおんぶしてさらにジュナの上に俺が乗るパターンやリベルがジュナを抱えてさらにジュナが俺を抱えるパターンを試したが、どれも安定性や安全面に問題があり今の形に落ち着いた。


「僕たち二人とも風魔法は使えないんだけどアイテムのおかげで風魔法が使えるようになってるんだよ。」


「そのアイテムって高いの?」


「もちろん。だから人のものは勝手に触っちゃダメだよ。もしそれがとても高価で壊しちゃったりしたらお父さんお母さんが弁償するんだからね。」


「分かった。」


リベルは魔法の才能どころか教育もできることに感動してしまった。


「ねぇあそこ!」


ジュナが指差す場所を見ると逸れビリヤーがいた。


「早く下ろして!下ろして!」


「ちょっ、ちょっと待って下すから暴れないでバランス崩れて落ちちゃうから!」


リベルとジュナは俺に風魔法を付与してもらってるにすぎない。だから俺から離れたら地面まで一直線なのだ。俺は素早く丁寧に高度を下げて森に降りた。


「おい!こっち向け!」


ジュナが大声を出してビリヤーの注意をこちらに向けた。俺たちが体制を整える前にジュナが叫んだから俺たちは急いで準備をした。


ジュナとビリヤーは一定の間隔を取りながら見合っている。いつビリヤーが飛びかかってきてもおかしくない状況にも関わらず、ジュナは手のひらに火の玉を仕込んで準備万端のようだ。野性の勘なのか最適解を自分で見つけ出したのか分からないが、その対応は明らかに初めて魔物と相対した人ではなかった。ジュナなら勝てると思った刹那ビリヤーが飛びかかってきた。ジュナはそれに合わせて手のひらをビリヤーの首元に向けて火魔法を使った。


「ふぅ…」


その一撃は見事に急所を捉えておりジュナの初単独討伐は成功に終わった。


「すごいね!初めてでしかも一撃で討伐するなんて。」


「えへへありがとうございます!師匠たちのおかげです。」


俺は何も教えれないことに憤りを感じた。リベルたちのような親しい人たちには俺が喋れることを教えても良いだろうが、親しくない見ず知らずの誰かに喋れる事は知られてはならない。でも俺は誰とでも話したい。いろんな人と仲良くなりたい。友好関係を広げたい。そんな小さな願いですら叶わないのはあまりにも辛い。こんな事なら猫じゃなくて人間で転生すれば良かったのかな。でも猫の神様の意思は尊重したい。俺がそんなジレンマに頭を悩ませているとジュナが話しかけてきた。


「どうしたの師匠?何か悩み事?」


俺は喋ってしまいそうになった。でもグッと我慢した。リベルはそんな俺の心情を読み取ったかのような一言を言ってきた。


(自分で伝えても良いんじゃない?)


(え?でも…)


(僕は良いと思うよ。ジュナは良い子だしそんなに口外するような性格じゃないと思うよ。)


(でも…)


俺は決めかねていた。クラスのみんなにも喋れる事は約一年間隠してきたのに、ついこの間会ったジュナにはすぐに喋ってしまうとクラスのみんなを裏切ったように思えてしまう。俺が思考を巡らせているとジュナが言った。


「師匠大丈夫?俺何か悪いことした?」


「今リフォンは悩んでるんだよ。もうちょっと待っててくれない?」


「分かった。師匠、その悩み解決したら俺にも話してくれる?」


「ニャー。」


俺はその場では猫返事でやり過ごすことにした。アールノン家の一室に戻って再び考えることにした。


今後様々な人と出会うだろう。その出会いが良いものか悪いものかは分からない。でもその一期一会の出会いを猫だけで終わらすなんて勿体無いと感じる。相手が人なら自分だって人として相手したい。でも俺はリベルの使い魔で猫で…そこで俺は一つ重要なことを忘れていた。俺には猫の神様の加護がある。それに猫を被るという加護があると女神に教えてもらったのを思い出した。魔神城では自分の見た目をリザードマンに変えた。その時リザードマンの姿を想像しろと言われたような気がする。なら人間の姿を想像したら俺は人になれるのではないか!?思い立ったが吉日と言うし俺は早速試すことにした。

次回もお楽しみに


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