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73話 活動資材調達

俺たちはノリと勢いで王都を後にしたが、重大な問題が発生した。


「そういえば僕たち食料も持ってないし、武器もないよね。もしかしてヤバい…?」


「まだ飛んでる最中だから戻れるし戻ろうか。」


俺たちは急いで王都に戻った。武器はまだ何とかなるだろうが、食料は死活問題だ。2日3日の蓄えはないとまともに生きていくことすら厳しいだろう。


「リフォンあっち!あっち!」


リベルが指差している方向に飛んでいくと食料品店があった。人に見られるのはあまり良くないと思い裏路地に降りた。


(何が良いかな?)


(日持ちする野菜とか干し肉とかか?)


(なるほど…)


リベルはジャガイモやニンジン、干物を手に取った。


(何か他にはない?)


(俺もあんまり詳しくないからな。)


(冒険者の人に聞きに行く?)


(それも良いだろうけど年末だからあまり人がいないかも知れないな。)


(とりあえず買ってくるよ。)


リベルが会計を済ませている間俺は前世のことを思い出した。缶詰やレトルト、カップ麺など美味しい保存食が目白押しだったが、俺にとっては滅多に食べられない代物だった。


(リフォン行くよ!)


リベルが背負っていたカバンが明らかに重そうになっていた。こんな些細なことだが、これから先の旅が大変であることが理解できた。


(準備良いか?」


(良いよ。)


俺たちは再び風魔法で飛び武具店に向かった。学園でガインから剣は習っていたが、それ以外の近接戦闘を身につけていないのが少し心配だ。少し飛んでいるとリベルが指差して教えてくれた。また人目を避けて裏路地に降りた。


(武具店ウォーキンスだって。なんだかカッコいいね。)


呑気だなと思っていると中からドスの効いた声が聞こえてきた。


「いらっしゃい。」


カウンターには筋骨隆々で立派な髭を蓄えている大漢がいた。見るからに元冒険者だと分かる腕の切られてできた一生傷や剣から刀、フルプレートからチェインアーマーまで多種多様な武具が並んでいた。男の子なら興奮を隠せないのは火を見るより明らかだ。俺が心の中で小躍りしているのとは対照的に、リベルは真剣に剣と武具を選んでいる。命を預ける道具なのだから真剣に選ぶのは当たり前だ。さっきまで興奮していた自分が恥ずかしくなった。


(良いのはあったか?)


(どれも一級品なのに価格が抑えられていてどれを買うか悩ましいよ。ここを出たらクローズさんの所に行って何か良いのがないか探そうね。)


(分かった。)


俺は武具を楽しみながら眺めた。こんな状況になれば誰でも俺と同じように武具を見るだろう。それほど非現実的だった。


「お願いします。」


「これだけで良いのかい?盾や防具の類がないが…」


「やっぱり盾は持っておいた方が良いですかね?」


「熟練の魔法使いなら邪魔になるが、最初のうちは持っておいた方が身のためだな。」


「ならこれをお願いします。」


「少し値は張るがこっちの方が携帯が楽だぞ。展開式で中盾にも小盾にもなる。どうする?」


「ならそっちでお願いします。」


「毎度あり。」


店主の見た目はいかつくてかなり怖いがそれ以上に他人を思いやれる素晴らしい大人なのだと分かった。


「これはおまけしておいてやるよ。」


「ありがとうございます!」


リベルは手のひらサイズの黒い石のような物を受け取って店を後にした。次はクローズの店に向かった。


「さっき何をおまけして貰ったんだ?」


「砥石だよ。剣の手入れに必要な物だよ。あの人説明も丁寧だし、メリットとデメリットを明確にしてくれるから凄く信頼できる人だったよ。」


「見てて分かったけど、あの人は俺たちを心配してやってくれたんだと思う。多分普段は無愛想なんだろうけど心根は優しいんだと思う。」


そんな話をしているとクローズの店に着いた。


「いらっしゃい!今日はリーン様は一緒じゃないんだね。」


「はい。今日は来年度に向けてリフォン用のアイテムを買いに来たんです。」


「あんまり良いアイテムは置いてないけど、どんなアイテムが欲しいんだい?」


「防御系ですね。」


「ちょっと待ってて。」


クローズ洋服店と謳っておきながら使い魔用のアイテムも取り揃えているなんて素晴らしい。客のニーズをしっかり把握していて商売上手なのが素人にもよく分かる。


「これなんてどうだい?魔法を受けた時自動で魔力を消費して魔力の鎧を一部形成するって効果だよ。」


「物理系はないんですか?残念ながら魔法から作られるアイテムは物理に勝てないんだ。ごめんね。」


「分かりました。これだけ買います。」


「ありがとうね。」


「ありがとうございました。」


「ニャー!」


「ふふ、バイバイ。」


しばらくの別れだから愛想良く挨拶をした。リベルは外に出てからさっき買ったアイテムを耳につけてくれた。右耳に紫色の魔法石のイヤリングと左耳に白色の防御アイテムのイヤリングとなった。俺の体毛の白色と防御アイテムのイヤリングが統一感を出していて良い感じだとリベルが褒めてくれた。


俺たちは気を取り直して王都を後にした。まず向かうはビリヤーが数多く棲息しているビリヤー山脈だ。

次回もお楽しみに


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