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68話 魔法の名前と魔神教団

深夜になった。リベルは寝息を立てて眠っている。俺は窓を開けて部屋から抜け出した。深夜は誰しも眠っているからいつも賑わっている学園に誰もいないような錯覚を受ける。しばらく歩き学園の中庭に着いた。ここは寮からも学園からも離れていて魔法の実験にはうってつけだ。


「よし。」


どんなことが起こるのかわからないし、真剣に取り組まないと自分が怪我をするかも知れない。だから俺は気合いを入れた。


まずは魔法の名前を考えることにした。前世では魔法と言えば西洋ファンタジーのイメージが強い。でもこの世界ではインド神話が魔法の基礎となっている。と言っても俺は簡単な英語しかわからないから前世の西洋ファンタジーで名前を付けることにした。


「ファイヤ!」


思った通り何も起こらなかった。火のイメージも何の感情も込めずに言ってみた。やっぱりこの世界では魔法をイメージすることそして、感情を込めることそれだけが魔法を使うトリガーなのだ。でも本当にそれだけなのか気になってしまった。次は名前を言いながらイメージをすることにした。


「ファイヤ!」


イメージした通り手のひらサイズの火の玉ができた。でもこれではイメージするという工程で魔法を使っていることになる。次はリベルとの楽しい日々を思い出して感情を込めてから名前を言うことにした。


「ファイヤ!」


今回はさっきとは少し違い火魔法が不安定だった。イメージを全くせず火魔法を使った弊害なのか、感情の起伏というか波の影響なのかはわからない。でもイメージをせずに魔法を使うリスクとその結果を知ることができたのは新たな発見だ。最後はイメージと感情どちらもきちんとして名前を言うことにした。


「ファイヤ!」


感情を込めたらイメージしただけの時よりも大きくそして、温度が高かった。何故温度が高いのかわかった理由は色だ。火の玉の色が赤色から橙色に変わっていたのだ。火の温度を体感できれば確証を持てるんだが、術者本人には影響を与えないのがこの時ばかりは憎んだ。


もう試せることがなく収穫はあまりなかったと思ったその時名前を変えていないことに気がついた。さっきまでのファイヤがダメだっただけで何か他の名前ならいけるかも知れない。そう気づいた俺は思いつく限りの英語で火魔法に名前を付けた。ファイヤボールやファイヤスピアなど拙い英語で思いつく限りの名前を言った。名前を言うだけではダメだと思い1度イメージして名前を言ったが、それでも点でダメで俺の体力と喉は限界を迎えていた。そのまま眠ってしまいたかったが、先日行方不明になったことを思い出し疲れた体に鞭打って寮に戻った。


「リフォン大丈夫…?」


俺はリベルの心配そうな声に目を覚ました。


「はぁ…良かった。起きなさすぎて死んじゃったのかと思ったよ。」


(ごめんごめん。昨日寝るの遅くて…)


「なら今日は部屋で寝とく?使い魔学もないし寝てても良いよ。」


(ついこの間行方不明になったやつに言うセリフか?)


「あっ!?」


リベルは善意で申し出てくれたのだろうけど流石にこれを良しとするほど俺は自分に甘くない。


「ご、こめん、なのかな?」


(俺にもわからん。けどハーリーとかクラスのみんなに今みたいなノンデリ発言は辞めておいた方が良いぞ。)


「ノンデリ?」


俺はリベルのことは気にせず朝御飯を食べた。俺たちはそのまま何気ない会話をしながらクラスに向かった。道中学園の警備をしている人たちが学園の外に向かって走っていくのが見えた。


(警備隊の人たちどこにいくのかな?)


(俺たちには関係のないことだろう。)


クラスに着くとみんながざわついていた。何があったのか聞きたくなって俺とリベルはみんなの輪に近づいた。


「何があったの?」


「魔神教団の奴らの拠点が見つかったらしいんだ。だから今王国魔法師団と学園の先生たちと警備隊とか総動員されてるらしいんだ。」


「え!?リフォン連れてきておいて良かった…」


リベルは大きなため息をつきながら膝に手をついた。


「良かったな俺がしっかりとした使い魔で。」


「本当に良かったよ。」


リベルは俺をモフモフしながら応えた。その様子にクラスのみんなは微笑んでいた。みんなが微笑んでいるのにリベルは不思議そうな顔をしていた。


「学園にいる生徒及び職員に伝達します。ただいま魔神教団と思われる組織の拠点が見つかったため、教員及び警備隊が学園にいません。不安になる気持ちもわかりますが、魔神教団の拠点に赴く前に学園長先生が学園を風魔法で防護してくださいました。この風魔法は何人たりとも通れません。ですので安心して学園で待機しておいてください。」


学校の放送を思い出す形式で情報伝達が行われ俺たちは学園で待機することとなった。と言っても普段の生活と何か変わることや不便になることはないため、みんな逆に安心していた。


みんなやることがないのかハンスは眠っていたりメアリーは自習をしたりしている。かく言う俺も眠ることにした。深夜の疲れと寝不足から気絶するように眠った。


「リフォン起きて!」


リベルの大声で俺は吃驚して目を覚ました。


「な、何だよ。」


「学園長が使ってた風魔法のテレポートで全員逃げちゃったんだって!」


「マジかよ…テレポート使えるってことは学園長ぐらいの魔法使いがいるってことだよな?」


「学園側は何も言ってないけどそうだと思うよ…」


明らかにクラスの雰囲気が残念ムードになっていた。それもそのはずだ。王都が総力上げて取り押さえようとしたにも関わらず逃げられたのだから。


「そもそもテレポートに対抗できる魔法とかないだろ?だから逃げられるのは仕方なかったんだって。これから先どうするかの方が大事じゃないか?」


「そうだね。でも僕たちにできることはないけどね。」


「そもそも俺たちが手を出すべきじゃないんだよ。どこかに逃げたってことは、誰も被害に遭わずに済むんだから。悪い点ばかり見つめるんじゃなくて良い点も見つめようよ。」


「そうだね。良いこともあるんだから逃げられたって落ち込んでる場合じゃないよね!」


リベルが何故ここまで魔神教団に執着するのか聞きたいが、言いたくない理由があったりするかも知れないからリベルから話くれるのを待つことにした。

次回もお楽しみに


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