68話 シンプルな疑問
ある日の魔法学の時間みんなが屋外競技場で魔法を使っている。みんな自分の得意な魔法をどうな風にすれば魔力効率が良いのか、どうイメージすれば威力が上がるのか、どんな感情を込めれば良いのか試行錯誤していた。
ヤハスは雄叫びを上げながら火魔法を使っている。その雄叫びに比例して魔法は大きく威力はかなりのものになっていた。だが、魔力効率は悪いのか3回も魔法を打つと魔力切れ寸前といった感じでばてていた。
ヤハスとは違いリベルは静かにゆっくりと火魔法を打った。最初は魔力効率を上げるためなのかと思っていたが、それは良い意味で裏切られた。リベルの火魔法はカカシに当たった瞬間轟音と共に火魔法が爆弾のように爆発した。イメージを確固たるものにするために静かにゆっくりとイメージしていたのだと思った。最初は蝋燭ぐらいの小さな火だったものを衝撃が加わったもしくは、標的に当たった瞬間に爆発するイメージはそんなにすぐにできるものでないとその場にいる皆が理解した。リベルは自分の魔法の完成度に大きくガッツポーズをしていた。それを見て皆負けじと魔法を打った。
その様子を俺たち使い魔は側から見守った。見守ったと言ってもアフィー、ナーガ、ハリスは全然興味がないのか各々好きなことをしていた。アフィーは翼を広げて毛繕いをし、ナーガはそばにあった木に登って、ハリスは空を見上げながら眠っていた。使い魔それぞれ個性に溢れているなと思う反面、そんな態度で良いのかと疑問にも思った。エクサフォン学園に来る前に聞いた話では、ここエクサフォン学園は入るだけで超エリートであり、入ってからは魔法に人生を捧げるみたいな感じだった。でも入ってみたら案外そんなことはなくて拍子抜けだった。
俺は再びみんなの魔法を集中して見た。そこで初めての気づきを得た。共通点はみんな手のひらから魔法を出していること。そして魔法を打つ瞬間瞳孔がキラッと光るのだ。今まで特に気にしていなかったが、これは大きな気付きだ。対人戦のことを考えれば相手の目を注視していれば魔法を打つ瞬間がわかるのだ。たとえ相手が手のひらから魔法を打つタイプじゃなかったとしても目を見ていれば打つタイミングはわかる。避けられるかは置いておいて、かなり対人戦には有利になるだろう。
次は相違点だ。それは人によって魔法を打つまでの工程や時間、構え何一つとして同じところがないということだ。ヤハスのように派手に魔法を打つ人もいれば、リベルのように静かに打つ人もいる。これには、性格やどういうものが好きなのかなど人間性に関わるところや魔法のイメージの難しさや込める熱意の違いなど魔法の考え方の違いが起因していると解釈した。この魔法の考え方の違いを人間性のように言うなら魔法性であろう。
「リフォン戻るよ!」
「ニャー!」
考え耽っているといつの間にか授業が終わっていたようだ。俺は急いでリベルの元に走った。
(何か考え事してた?)
(あぁ、1人1人魔法の打ち方や打つまでの時間が違う事実を頭の中で整理していたんだ。共通点と相違点も…)
俺は共通点で1つ大きな見落としをしていた。それは魔法を打つ際誰も魔法の名前を言っていないのだ。魔法学の教科書を思い出してもこのようなイメージをすればこのような魔法が使えますと書かれているだけで、魔法の名前が付いていなかったのだ。前世の俺はあまりアニメや漫画に触れることができなかったが、どのような作品であっても技名が付いているのにこの世界では一切名前が付いていない。その事実をリベルにも確認した。
(な、なぁリベル、さっき火魔法をカカシに打ってただろ当たった瞬間に爆発するやつ。あれって名前とかあるのか?)
(名前なんてないよ。)
リベルは当たり前のように答えた。逆に俺が聞いてきたことに対して訝しんでいたようにも感じた。前世と今世では魔法に対する考え方が全く違うことがわかった。それをリベルに聞いた。
(もしさ、さっきの火魔法に名前付けてって言ったらなんて名前にする?)
(魔法1つ1つに名前なんて付けてたらキリがないよ。それに魔法は魔法であってそれ以上でもそれ以下でもない。リフォンみたいに命ある生き物だったら1つ1つ大事にするけど、魔法は事象だからリフォンみたいに大事にしないんだ。)
リベルは俺を抱き抱え俺の頭頂部に頬を擦り付けてきた。そんなことは気にせず俺は自分の世界に入り込んだ。
魔法1つ1つに名前を付ける面倒さや考える時間などを考えれば魔法を付けない理由になる。でも簡単な魔法には名前を付けて、イメージせずとも魔法を打てるようになる。みたいな感じにしたら効率的だと思うが、きっとイメージせずに魔法を打つということが無理なのだろう。きっとイメージせずに魔法を打つと感情任せに魔法を打つことになり危険が伴う可能性が出てくるのではないか。これは自分で試すしかない。思い立ったが吉日という言葉を思い出し今日の深夜に実行することにした。
次回もお楽しみに