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67話 首輪の実験

あれから1週間が過ぎた。俺は普段の日常に戻り安堵の日々を過ごしていた。学園でもいつもの日常が続いていた。先生から魔法を学びそれを実践し自分のものにする。ガインから剣術を学び魔法使いの弱点である近接戦闘を克服していった。俺はその日常を大切にしている。前世とは違い何かを学べる面白さに気づいたのだ。座学ではソフィーやワーナーは退屈そうにあくびをしているが、俺には全く理解できないことだった。今日も1日が終わり寮に戻ろうとした時マリー先生が俺たちを呼び止めた。


「ちょっとごめん!今から首輪の実験するんだけどみんな来てくれる?」


「行けますけど…」


「しょうがないですね…」


みんな待ってましたと言わんばかりの顔をしていたが渋々了承した感じを醸し出していた。それを見てマリー先生は嬉しそうに笑った。


「ところで私たちは何をすれば良いんですか?」


ナサリーが不思議そうに聞いた。それもそのはずだ。学園の首輪は光魔法が用いられており、その首輪を外せるのは装着者本人と聞かされているからだ。でも今回は例外で俺が首輪を外してしまったから様々なケースで検証する必要があると考え、みんなに来てもらったのだろう。


「みんなには各々で首輪を外せるか試してもらいたいから来てもらったんだよ。」


「なるほど、リフォンが外せてしまったから私たちにも外せる可能性があると考えているのですね?」


「外せないとは思うけどもしかしたらって思ったのよ。」


「外せる可能性があるのは光魔法を使える方だけだとは思いますけど、リフォンという例外がありますからね。」


ナサリーは俺に疑いの目を向けてきた。俺はなんだよと言いたかったが、そこは廊下だったからグッと我慢した。しばらく雑談しながら歩きマリー先生の部屋に着いた。


「準備するからしばらく待ってて。」


そう言うとマリー先生は奥の部屋に行った。一瞬だけ中が見えたけど、そこにはフラスコや見たこともない実験器具と思われる物があった。俺たちはマリー先生の部屋で各々暇つぶしをした。大半は初めて来る教員の部屋に興味津々でキョロキョロしていた。俺は窓から中庭を眺めていた。小鳥たちが木の枝の上で戯れていたり、木陰で昼寝をしているハイネ先生がいた。ハイネ先生の意外な一面に吃驚してリベルだけにテレパシーで教えた。


(リベル、ハイネ先生が昼寝してる!)


(えっどこ!?)


リベルは急いで俺の隣に来て中庭を見渡した。ハイネ先生を見つけたのか顔を止め、ニヤニヤと笑い出した。


(なんか面白いね。)


リベルは楽しそうな笑顔だった。そんなリベルを見てたら俺の方までニヤニヤしてしまった。その瞬間子を持つ親の気持ちが少しわかった気がした。


「みんなお待たせ。」


奥の部屋から出てきたマリー先生は変なトカゲのような生き物を抱えて出てきた。


「わぁ!チプカニーだ!しかも黒色!?」


リベルを含めみんな同じような反応をしていて俺は困惑した。そのチプカニーと呼ばれているトカゲのような生き物は手のひらに乗るぐらいのサイズ感で特段変わった所はないように見える。何故みんながそんなに驚いているのか疑問が尽きない。


「リフォン、チプカニー知らないの?」


「えっ?うん。なんでみんながそんな反応してるのか分からない程度には…」


「なら私が説明するよ!」


アインが楽しそうに早口で説明し始めた。


「この子はチプカニーって言ってドラゴンの遠縁に位置してる魔物だよ。それでチプカニーは魔石を食べて育つの。その食べる魔石によって魔法への完全耐性を得るの。火の魔石を食べて育ったチプカニーは赤色、水の魔石を食べて育ったチプカニーは青色って感じになるの。でも先生が連れてきた子は黒色でしょ!?それが大問題なの!闇魔法以外の全ての魔石を食べて育ったチプカニーは黒色になるの!ということはこの子は闇魔法以外の魔法に完全耐性を持ってるってことになるの!自然界ではまずお目にかかれないちょー珍しい個体なの!だからみんなこんなに興奮してるのわかってくれた?」


「う、うんわかったよ…」


アインの気迫に気押され俺はいつのまにか後退りしていた。


「コラ!リフォンが怖がってるじゃないか!」


「イテテ…」


リベルがアインの頭頂部にチャップして俺を助けてくれた。


「ごめんよリフォーン、嫌わないでー…」


「大丈夫だよそんなことで嫌いになったりしないよ。」


「リフォンがいい子過ぎて私泣いちゃいそう…」


アインが感極まった表情で言ってきて俺はアインの頭を猫の柔らかい手でポフポフとしてあげた。そうしたらアインはえへへと笑い幸せそうな顔をしていた。


「そういうことだから1人づつ魔法を使ってこの子の首輪を外そうとしてくれない?」


「俺からやる!」


ハンスがやる気満々でチプカニーに近づき、火魔法を指に纏わせ首輪を外そうとした。でも全く歯が立たないという感じだった。首輪を外そうとするハンスの指と首輪の間に何かあるのではないかと思うほど、首輪に触れることが出来ていなかった。


「クソ!ダメか…」


「俺がやってみる。」


今度はカナタが挑戦した。カナタは首輪を焼き切るぐらいの勢いで火魔法を使った。俺はその勢いにチプカニーが大丈夫か心配になった。それほど火の勢いは凄まじかった。しばらくやったがやっぱりダメだった。そうやって光魔法が使えるメアリーとハーリーと俺が残った。


「私が先にやるわ。」


メアリーが光魔法で首輪を外そうとした。今までとは違い首輪に触れることはできるが、何かに拒絶されたように首輪から手が弾かれた。みんなは驚いていたが、マリー先生はやっぱりといった反応をしていた。


「私もやるわ。」


今度はハーリーがやってみた。メアリーのように弾かれることはなかったが外すことは叶わなかった。


「やっぱりダメね…」


マリー先生は俺のことをじっと見つめていた。その視線には疑いと好奇が含まれていた。その視線に耐えかねて俺は首輪を外そうと努力してる風を装うことにした。


「やってみますけど俺にだってどうやって外せたのかわかってませんよ…」


「それでもお願いできる?」


「はい…」


俺が火と水魔法以外を使えるのは誰にもバレていないから火と水を駆使して首輪を高温にしてから水で急速に冷やしてみたりしたが、首輪は外れなかった。流石に見えざる手と光と闇魔法が使えるのは黙っておいた方が無駄な労力を割かなくて済むと考えて誰にも言わないようにしている。でもそれだと俺がどうやって首輪を外せたのか謎が残ったままになるのでどうしたものか考えないといけない。


「ダメね…リベル君がどこかに行ってしまった不安と1人になった恐怖、その他諸々で魔法に不思議な力が宿って外れたと考えるのが1番良いかも知れないわね。」


「俺もあの時のことはよく覚えてないから何とも言えないです。」


「みんな今日はありがとう。気をつけて帰ってね。」


俺たちは首輪の件が解決しないまま返された。リベルにはちゃんと伝えておこうと思い言えてなかったことを伝えた。


(リベル、首輪外したの見えざる手なんだ…)


(リフォン本人がやったってことは何となくわかってたよ。でも見えざる手だったとはね…てっきり光魔法で外したんだと思ってたよ。でもそれは先生にも使えなくて正解だったかもね。)


(みんなに書く仕事するのは良い気分はしないけど、やっぱりこれはまだ黙ってた方が良いよな?)


(うん。話すべき時がいつかは来ると思うからそれまでは僕たちだけの秘密ってことにしとこ!)


(そうだな。)

次回もお楽しみに


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