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66話 真実と覚悟

俺はリベルから何があったのか聞くことにした。


(1から10まで話してくれないか?もちろん俺が悪かったことも理解している。でも詳細が知りたいんだ。)


(わかったよ。まず僕がリフォンに学園の首輪で魔法をかけた理由は、危険な目に遭って欲しくなかったからなんだ。)


(魔神教団か?)


(うん…)


(収穫は?)


(なかったよ…)


(そうか…じゃあ俺がリベルを探しに行ったりしなかったら何事もなかったんだな…)


気がつくと大粒の涙を流していた。はやとちりでいろんな人に迷惑をかけた。初めて自己嫌悪に陥った。前世では世界に対して恨みを持っていた。自分が不幸なのは全部世界のせいだと思っていた。いつも俺は被害者だと感じていた。でも今回は違う。俺のせいで他人に迷惑をかけて、さらに俺が地下街に行ったせいでみんなを危険に晒した。みんなに謝りたい気持ちで胸が張り裂けそうだ。


(リフォン泣かないで…)


リベルはそっと俺を抱きしめた。リベルがハーリーに抱きしめられた時のように優しくそして温もりのある抱擁だった。


(そんなにされたらまた泣いちゃうよ…)


俺はさらに涙を流した。小さい子供のようにボロボロと涙を流した。抱擁の幸福感と自己嫌悪、みんなに対する謝罪の気持ちで俺の感情はぐちゃぐちゃになった。リベルはそんな俺に何も言わず泣き止むまで抱きしめてくれた。


(ありがとうリベル…もう大丈夫。)


俺は涙を手で拭いリベルに一つお願いをした。


(みんなに謝りたい。)


(…わかった。でもどうするの?)


リベルは少し悩み返事をした。


(俺が直接謝りたいけどそれだと不自然だからリベルが代弁してくれ。)


(わかった。学園でみんなに謝ろう。)


俺が目を覚したのはハイネ先生に助けられた当日の夜だった。みんなはきっともう眠っているだろうから学園が最適だと判断したのだろう。リベルも疲れからか眠たそうな顔をしていた。


(そう言えばリベルに謝ってなかったな、ごめん。もう二度とこんなことはしない。)


俺は頭を下げながら謝った。


「僕の方こそごめんね。心配させたよね。辛かったよね。こんな主人でごめんね…」


リベルは泣きながら言ったせいかテレパシーではなく口に出てしまっていた。そんなリベルを見ているとまた涙が出てきた。その夜俺たちは互いを慰め合うように抱き合って寝た。


「リベル起きて、もう朝だよ。」


リベルの声を聞けて目覚めることができる朝がどれだけ幸せなのか改めて実感した。


(おはよ。)


俺は幸せなモーニングルーティーンを済ませ学園に向かった。教室に着くまで知り合いとは誰ともすれ違うことはなかった。みんなに謝る前に会って気まずい雰囲気になるのを避けれてほっとした。リベルも不思議に感じたのか首を傾げていた。教室に入ろうと扉を開けたその瞬間みんなが俺とリベルに抱きついてきたのだ。みんな口々に良かったやお帰りといった心温まる言葉をかけてくれた。俺はまた泣いた。こんなにも俺のことを想ってくれる人がいるのに自分がどれだけ愚かな行為をしたのかを痛感した。俺は決意した。自分の口から謝ろうと。


(リベルやっぱり自分の口から謝りたい。みんなに真実を語りたい。ダメか?)


俺はダメだと言われる恐怖から小さな声で問いかけた。リベルは俺のことを気遣うように言った。


(良いよ。リフォンがその方が良いと思ったんでしょ?)


リベルの優しい声に俺は覚悟を決めた。みんなが落ち着いてきた頃を見計らって言葉を発した。


「みんな聞いて欲しい。」


初めて聞く声にみんな戸惑いを隠せていない。でもマリー先生とハイネ先生は俺のことをしっかりと見ていたので目を見開いて驚いていた。俺は教壇の上に乗りもう一度言葉を発した。


「みんな聞いて欲しい。」


「「「しゃ、喋ったーーー!!!???」」」


みんな面白い反応をしている。俺のことを全身くまなく観察するアイン、ワーナー、メアリーや固く握手をするマリー先生とハイネ先生、互いに見つめ合い現実をまだ理解できていないハーリーとハリス、ポカーンと俺を見つめているヤハス、ハンス、カナタ、ラーヤ、ターガー、ソフィー、そして俺とリベルに嫉妬の眼差しを向けているナサリーだ。しばらく待ってみんなが落ち着き俺のことを見てくれた。俺はそのタイミングでみんなに頭を下げて謝った。


「ごめんなさい。愚かな俺をどうか許してください。」


俺は拙い前世の記憶を頼りに精一杯謝った。でもみんなの反応は思いもよらぬものだった。


「そんなこと気にしなくて良いよ。」


「リフォンが無事で良かった。」


「あなたは何も悪くないわ。学園の首輪がもっとしっかりしていたら何も起こらなかったもの。ごめんね怖い思いをさせてしまって。」


みんなの優しさに包まれてまた泣きそうになったが、流石にこれ以上泣くのはカッコ悪いと思い必死で耐えた。リベルはそっと俺の頭を撫でてくれた。


「良く頑張った。」


リベルは俺を抱き抱えてくれた。俺はリベルの腕の中で誰にも気づかれないように涙を流した。


「僕からも謝ります。僕がしっかりしていればリフォンはこんなことにはならなかったし…」


リベルの謝罪をマリー先生が止めた。


「生徒の失敗を認め再発防止に努めるのが教員の役割、だから今からは私たちの番よ。」


マリー先生はリベルに着席を促し話し始めた。


「今回の件は私たち学園側に落ち度があったわ。みんなに改めて謝罪をするわ。」


マリー先生とハイネ先生が深々と頭を下げた。クラスのみんなは頭を上げてくださいと言ったが、先生たちは少しの間頭を下げていた。それは教員としての覚悟と生徒と接する大人としての責任を表していると感じた。


「そして再発防止のために使い魔用の首輪を改善するためにみんなに協力して欲しいの。もちろんリフォンも含めてね。理由はいくつかあるわ。まずリフォンが喋れることはこのクラス以外には知られない方が良い。そしてリフォンとの関係値もかなりある。みんな魔法に詳しく私たちの手助けになる。だからみんなに協力して欲しいの。お願いできるかしら?」


「もちろんです。」


「否定する理由がないわ。」


「私たちにできることなら何でも手伝います。」


みんな肯定的で安心した。


「リフォンは?」


「もちろん手伝いますよ。そもそも俺が原因ですから…」


「決まりねみんなこれから忙しくなるわよ。」


マリー先生は少し楽しそうに言った。これから学園のことに関われるのは嬉しいが、その反面俺なんかで良いのか少し心配だ。

次回もお楽しみに


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