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62話 一時の安寧

異世界に転生した俺はリフォンという名を貰い猫生を送る事になった。でも優雅に生きて死ぬだけでは面白く無い。異世界に転生したのに勿体無い。異世界を思う存分堪能してやる!

目を覚ますとそこは木造の民家のようだった。暖炉の前にある椅子で毛布をかけられ眠っていた。そこはどこかおばあちゃんの家を思い出すような感じがした。俺はここがどこなのか確認するために家の中を見て回った。人が4人は座れそうな大きなソファーにおそらく食卓であろう大きな机と4つの椅子。大きな冷蔵庫に広いキッチン。食器棚には様々な種類、模様の食器が収められている。


(こんな豪華な一軒家に住んでみたかったなぁ…)


生活感の溢れるこの家を見ていると昔のことを思い出してしまう。今の生活は非現実的だからテーマパークにでも来たみたいに、余計なことは思い出さずに済んでいた。だが、この家はあまりにも現実的過ぎる。俺は言い表せない感情が込み上げてきてこの家から出ようとしたその時、この家に住んでる一家が帰ってきた。


「あの猫ちゃんの名前どうする?」

「まだ飼うって決まったわけじゃないでしょ。」

「アレックスが良い!」

「まず病院に連れて行って怪我や病気がないか検査してもらわなくちゃだな。」

「そうね。でも普通の野良猫に比べてかなり大きいし、毛並みも整えられていたから脱走した子かも知れないわよ?」

「え?じゃあお家で飼えないの?」

「本当に飼われている猫ちゃんだったら元の飼い主の所に返さなくちゃいけないの。」

「えー!?そんなのヤダ!」

「ヤダじゃないの。」


そんな会話をしながら俺がいるリビングに入ってきた。


「猫ちゃん起きてる!」


10歳ぐらいの女の子が俺に向かって走ってきた。俺はソファーの上で座っていたが、咄嗟にソファーの背もたれの上に乗り避けた。


「何で避けるの!」


女の子は怒ったように言った。怒りたいのはこっちだが、喋れることは隠しておく方が良いと理解しているため態度で示した。


「ごめんね機嫌直して?」

「ニャー…」


俺は不服そうに返事をした。女の子はへへっと笑いお母さんの元に行き、買ってきて食材の片付けを手伝っている。ソファーに男の子と父親が座った。そして父親が俺の方を見て向いてきた。


「ご飯食べたら病院に行くからね。不便だろうがそれまで我慢しててね。」

「猫なんだからそんなこと話しかけても分からないでしょ。」

「分からなくても伝えることが重要なんだよ。」

「へー…」


男の子は興味なさそうに返事をした。俺は色々なことが起こり混乱していたが、少し状況が落ち着いてきた。やっと自分のことを優先できる時間ができた。昨日は1日中走り回ったから今日に何かしらの影響が出ると思っていたが思いの外大丈夫だった。猫の体の凄さを改めて実感した。


「はいどうぞ。」


母親が俺に差し出した。それはいつもとあまり変わらない栄養バランスの良い御飯だった。俺はお腹が空いていたから何の躊躇も無く食べた。普通に美味しくあっという間に食べ終えた。


「お腹空いてたんだね!」

「そうだね。病院に行く準備をして来るからちょっと待ってて。」

「はーい!」


父親が部屋から出て行くと女の子は俺に視線を移した。俺はまた飛びかかって来るんじゃないかと身構えた。


「大丈夫だよー。」


女の子はゆっくりと俺に近づき手を伸ばしてきた。俺は本物の猫のように演じた。手の匂いを嗅ぎそっぽを向いた。


「えーなんでー?」


女の子は残念そうに頬を膨らませている。拾ってきた猫がすぐに懐く筈がないのに残念そうにしているのが不思議でならない。


「準備出来たから病院に連れて行くよ。」

「気をつけてね。」

「私も行く!」


男の子は本を読んで俺のことには興味を示していないが、女の子はまだ諦めないのかついて来ようとしている。


「すぐ離れ離れになるんだから無駄に仲良くならなくていい。」


父親は女の子を突き放すように言った。女の子はの言葉を聞いてさらに頬を膨らませた。父親は俺を優しく抱き抱えて家を後にした。


抱き抱えられている間にリベルのことを探していたが、全然見つからなかった。俺の容姿はかなり珍しいことから多くの人が周りに寄ってくるため、リベルを見つけるのに役立つと思ったが現実は思うように行かないことを実感した。


しばらく歩いていると動物病院と書かれた看板の家の前に着いた。メインクーンはこの世界でかなり珍しいことから病院に罹ることを拒んだ。


「どうしたんだ?」

「シャー!」


俺は嫌だという意志を伝えるために初めて威嚇した。父親が驚き腕の力が緩めた。その隙を見て俺は逃げ出した。スピードを出しすぐに振り切り家の上に登った。助けてくれた恩はあるが、それ以上に病院で何をやられるかが心配だった。ここは王都とは違い良い噂は聞かない。大抵が違法なことだ。そんな所なら誰でも俺のような行動をとるだろう。少し休んで落ち着きを取り戻したからリベルの捜索を再開した。

次回もリフォンの猫生をお楽しみに。


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