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6話 最後の追い込み

異世界に転生した俺はリフォンという名を貰い猫生を送る事になった。でも優雅に生きて死ぬだけでは面白く無い。異世界に転生したのに勿体無い。異世界を思う存分堪能してやる!

 エクサフォン学園の入試まで後一ヶ月を切った。リベルは最後の追い込みと毎日猛勉強している。俺は魔法を二種類使う方が良いのか一つの魔法を高威力で出すのが良いのか悩んでいた。


「リフォンちょっといいか?」

「グロウが俺を呼ぶなんて珍しいな。」


 俺はグロウの元に行く。


「お前の魔法についてシータと話そうと思ったのだ。」

「そうか分かった。」

 俺はグロウに抱かれシータの元に向かった。


「シータ連れてきたぞ。」

「すまないね、旦那様のお手を煩わせるなんて。」

 シータの敬語を初めて聞いた。


「シータお前グロウと話す時そんな感じなんだな。」

「当たり前だろ。雇い主なんだから。」


 考えたらそうか、目上の人に敬語を使うのは当たり前と言う事を前世で出来なかったし、グロウたちは俺の事を家族として迎えてくれたのだから敬語はおかしいと思い使ってこなかった。


「その話はいつでも出来るだろ、今はリフォンの魔法の事だ。」

「そうだね。」

「国王推薦を受けるには二種類使った方が可能性は高い。でも他の者が二種類の魔法を使える使い魔なんて珍しいね。などと噂が広がってリフォンが危険な目に遭うのは避けたい。」


 グロウは俺の事を第一に考えてくれている。守られる子供は幸せなんだなと痛感した。


「リフォン、一つ聞いていいかい?」

「応えれる範囲なら応えるぞ。」


 シータは疑いの目を向けてきた。


「本当は何種類の魔法を使えるんだ?」


 俺は体に虫唾が走った。


「火と水の二種類だ。」

 自分では分からないがその言葉は動揺を含んでいただろう。


「ふーん。初めて会った時なんか違和感があったんだよね。だから他の魔法が使えたりするのかなって。それが見えない手の可能性もあるけど。」

「リフォン、本当の事を教えて欲しい。お前を守るためでもあるんだ。」


 グロウは本当に子供想いの良い父親だ。その誠意には応えなくてはならない。


「分かった。でも他の人に聞かれたら嫌だからテレパシーが使えないかやってみる。」

「テレパシーは主人と使い魔の間柄でしか無理だろ?どうやるんだ?」


 俺は心の中でグロウとシータの頭に猫の耳を生やすイメージをした。これはリベルが勉強で暇な時に遊んでいたら出来たものだ。俺は猫に関する物なら相手に生やせたりするらしい。だから見えない手も猫の手も借りたい。と言った言葉があるから出来るのだろう。


(聞こえてるよね?)

「え?!どういうこと?!」


 シータは物凄く驚いていたが俺とグロウが口に指を当て静かにするようにジェスチャーした。


(どういうこと?何であたしたちもテレパシー出来るの?)

(二人に猫の耳を生やして俺のテレパシーが聞こえるようにしたんだ。)

(リフォン早く魔法の事について教えてくれ。疲れるだろう?)

(分かった。俺が使えるのは今みたいに猫に関する魔法と火、水、光、闇でも光と闇は一度も使った事が無い。)

(驚きすぎて声も出ないよ。)

(分かった。なら火と水は入試で使っていい事にしよう。だが喋る事と猫に関する魔法と光、闇は絶対に他人には見せてはならん。家族を失いたく無い。)

(分かった。)


 俺は二人の猫耳を消した。


「じゃあ訓練して行くかい?入試で恥をかくわけにもいかないだろう?」

「そうだな。リフォン、もう残り一ヶ月を切っているから手は抜かないように。私は仕事に戻るよ。」

 そう言い残しグロウは自室に戻った。


「訓練って言っても何をするんだ?」

「そうだな…リフォンは魔法のコントロールは得意かい?」

「コントロールはあまり重視してやってこなかったから自信は無いな。」

「じゃあ見てて。」


 シータは指五本全てに蝋燭の火ぐらい小さな火を出した。俺はそのコントロールに感嘆した。


「凄いな俺がやったらどこかの火が消えそうになりそうだ。」

「リフォンがそんな事したら燃えないって分かってても燃えそうだね。」


 シータはちょっとバカにするように笑いながら言った。俺も笑いながら返事をした。


「そうだな。」

「シータ!僕のリフォンを返して!」


 リベルは急に俺を抱き上げ猫吸いをした。リベルは勉強に疲れると急に猫吸いをするのだがちょうど今のようだ。


「リフォン、とりあえず小さな火を出してくれないか?」


 シータはリベルと俺の今の状況を気にする事なく話を続けた。


「今言うか?まあ良いけど…」


 俺は出来るだけ小さくでも消えたりしないようにしっかりイメージして魔法を出した。


「いいね良い感じ。でもちょっと時間がかかり過ぎかなって感じだね。」

「そうかシータはどうやってるんだ?」

「リフォンと同じだよ今のは魔法の基礎だからね。リフォンは魔力量自体は多いけどそれを上手く扱えて無いって感じ。だから一ヶ月で小さな火をすぐに安定して出せるようにするんだ。分かった?」

「分かった。ありがとう。」


 俺はリベルにずっと猫吸いされながらリベルの勉強部屋に連れ戻された。


「よし!ありがとうリフォン。」

「お安い御用。」


 リベルは机に向き勉強を始めた。俺はその間窓の外で小さな火を出す練習をした。


「あっやべ。」


 ここが三階というのを忘れていて火が地面に落ちた。俺はすぐに水魔法で火を消したから大事には至らなかった。状況に応じて魔法に対するイメージを付け加えたり減らしたりしないといけないのは少し厄介だ。


「今日の分終了!」


 俺が魔法のコントロールの練習をしているとリベルの勉強が終わったようだ。集中し過ぎて時間を忘れていたようだ。リベルもこんな感じだったのだろう。


「リフォン!」


 リベルはまた猫吸いをしてきた。こう何度もされると良い気分はしない。でもしないとリベルのストレスが溜まって行く一方だし、グロウからリベルの事を見ると言ったから断る事も出来ない。


「なあリベル、それ気分良いのか?」

「うん!」


 俺の腹に顔を埋めながら返事をした。俺は心の中で溜め息をした。


「リベル、リフォンもう夜ご飯だぞ。」

 リーンが呼びに来た。

「わざわざごめんねリーン兄さん。」

「今行く。」


 俺たちはすぐにダイニングルームに向かった。


「そういえばリーンは学園に行かないのか?それとも行っているのか?」

「もう通ってる。来年で三年目だ。俺はお父様と違って剣の才能は無いから魔法に注力してる。 」

「そうなのか。何か先輩として俺たちにアドバイスは無いか?」


 そんな話をしていたらダイニングルームに着いた。


「食べながら話そうか。」

「そうだな。」


 いつも思うが御飯を食べるのは幸せだ。


「さっきの話だけど、学園で使い魔はかなりの数いるけど今のところ喋ってる使い魔は人型以外では見たこと無いね。喋ってないだけかもしれないけど。」

「そうかやはり喋らない方がいいか。」

「うんそうだろうね。喋りたければテレパシーを使えば良いからな。」

「そういえば人型の使い魔ってどんな感じなんだ?」


 俺は今まで疑問にすら思っていなかったが好奇心が湧いてきたので聞いた。


「本当に普通の人間って見たいだけど、肩になるぐらい小さかったり、上半身ぐらいの大きさだったりするね。そもそも人型自体が珍しいから一目置かれる存在だよ。まあその分危険はつきものだけどな。」


 やはり人型の使い魔は攫われたりする事が多いのだろう。俺は学園では喋りたいけど死にたくは無いからもどかしいところだ。


「使い魔って主人の能力とかで決まるのか?」


 使い魔召喚について聞いたことがなかったから聞く事にした。


「そんな事ない。完全ランダムだ。ピラミッド形になってるのを想像してくれ、その一番上が人型その下が力が強い猛獣、その下がリフォンみたいな大きくは無いけど小さくも無い中型の動物、その下が小さい動物と虫だね。魚の使い魔もいるらしいが、学園では見たこと無いな。魚の使い魔も獰猛な奴ほど強いって感じだな。」

「基本的に一番上が人型であとは獰猛さで決まるんだな。」

「そうだ。だがリフォンみたいな特例があるから目安にしかならない。」


 俺は女神から転生させてもらってしかも猫の神様から恩恵を受けていると思うから、本当に特例だけどね。なんて言うわけにもいかず心の中で呟いた。


「グロウたちは使い魔を召喚していないのか?」

「私は使い魔に魅力を感じなかったからな。」


 グロウは何となくそんな感じがするので納得した。


「マイヤーは?」

「私は使い魔がいなくても困らなかったので。」


 マイヤーの強さと魔法があれば使い魔は足手纏いになりかねないからだろう。


「リーンは?」

「俺はまだ術者として未熟だから召喚していない。」


 リベルのストイックさはリーンを見て育ったからなのかと思った。


「リベルは何で使い魔召喚を?」

「僕は動物が好きだし、何となく召喚しよう!ってなったからだね。」

「何となくって…」


 でもその何となくは女神がそうなるように仕向けたのだろう。


「でもその何となくでリフォンが来たんだし良いでしょ?」

 リベルは俺を抱きしめて言った。

「そうだな。」

 俺もリベルに顔を擦り付けて幸せを表現した。

次回もリフォンの猫生をお楽しみに。


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