58話 久しぶりの学校
異世界に転生した俺はリフォンという名を貰い猫生を送る事になった。でも優雅に生きて死ぬだけでは面白く無い。異世界に転生したのに勿体無い。異世界を思う存分堪能してやる!
俺は一抹の不安を抱えていた。
(なぁなぁ学校ってなんだ?)
(学校っていうのは魔法や剣術みたいなことを学ぶ場所だ。)
(楽しい?)
(楽しいけどチャヤは俺の陰で話しを聞く事しかできないのは許してくれよ。)
(なーんだ残念..)
(あと俺の陰から絶対に出てくるなよ。)
(なんで?)
(学校には俺みたいに優しい人ばかりじゃないからだ。人によっては、チャヤみたいな奴を見たら殺しに来ることもあるんだ。だから俺の陰から出たらダメだぞ。)
(なんでそんなことするの?)
(俺にもわからない。でもおそらくその人は魔物は殺すべき生き物なんだって思ってる人なんだよ。)
(悲しい人だね。リフォンはこんなにも寛大な心を持ってるのに。)
(その人も環境が違えば魔物は声殺すべきじゃないって考えの人だったかもしれないからチャヤは誰に対しても偏見を持ってはいけないよ。)
(偏見...?はわかんないけど分かった。)
これでチャヤが無暗に話し出したり姿を現すことはなくなっただろう。
「リフォン!そろそろ行くよ!」
「はーい!」
それから馬車に乗り約1か月ぶりの学校に向かった。いつも通り鹿肉煮込みを食べて学校に着いた。
「王都は久しぶりだね!」
「そうだな。」
「ニャーン。」
(なんでそんな言葉使ってるの?普通に話せばいいじゃん。)
(俺はリベルの使い魔でほとんどの使い魔は話さないから猫として振舞ってるんだ。)
(めんどくさいね。)
(自衛のためには仕方ないことだ。)
(そんなことよりここは楽しそうな場所だな!)
(はしゃぎすぎるなよ。)
俺が影に移動するとチャヤは様々な店を食い入るように見た。俺は誰かにチャヤのことを気づかれないかと少し心配だったが、普通の人には気づけないほど小さな魔力なのか誰も気づかなかった。
俺たちは寮の部屋に向かった。
(なんだここは?前の家に比べてかなり小さいな。)
(ここは学校の寮だ。一人部屋だからそれほど大きくないんだ。)
(そうなのか...そんなことより外に行きたい!もっといろんな所に行っていろんなことをしたい!)
(夜になったら連れていくから日が昇っているうちは静かにしていてくれ。)
(はーい...)
チャヤはそのまま静かにしていた。
「リフォン、最近上の空だけどどうしたの?」
(別になんでもないぞ。)
「じゃあなんでテレパシーに応えてくれなかったの?」
チャヤとテレパシーをしていたからなんて言って良いのか悪いのか分からないが、きっとリベルなら受け入れてくれるだろうと信じて話すことにした。
(実は…ダンジョンの階層ボスと友達になってソイツとテレパシーをしてたんだ。)
一瞬の静寂の後リベルは話し始めた。
(僕にも紹介してよ。)
(ふぇ?)
(僕だけ知らないなんて嫌だから紹介して!)
リベルは膨れっ面で言ってきた。まだ子供だから仲間はずれにされた事を怒っているとだと理解した。
(名前はチャヤって言って真っ黒な影の魔物だからすごく見えづらいんだ。何で存在できてるのか分からない魔物って感じ。)
(どこにいるの?)
(俺の影にいる。)
(出てこれないの?)
(聞いてみる。)
俺はチャヤにテレパシーをした。
(チャヤ?今俺の影から出てこれる?)
(出れるけど良いの?)
(ちょっと待ってて。)
俺はもう一度リベルとテレパシーをした。
(チャヤって魔物だけど出てきて大丈夫かな?魔力感知に長けた人に気づかれないかな?グロウには気づかれたけど…)
(やめとこうか…)
(うん。)
俺はチャヤにテレパシーでその旨を伝えた。チャヤは残念そうにしていたが、夜に遊んでやると言ったら嬉しそうにしていた。しかし、その際にも魔力感知に引っかからないようにしなくてはいけないと思い作を講じる事にした。
(リベル、チャヤのためにアイテムを買いたい。)
(分かった。じゃあアイテミーさんの所に行こうか。)
俺たちはアイテミーの店に行った。チャヤは道中、物珍しさにテレパシーですごくはしゃいでいた。
「今日は何を探してるんだい?」
「魔物に気づかれないように魔力を抑えるアイテムとかってありますか?」
「それなら丁度良いのがある。」
そう言うとアイテミーは1つの指輪を差し出した。
「これは風魔法で装備者の周りの空間に魔力を留めておくっていうアイテムだ。装備者から直径1メートルに魔力を留めておくアイテムだから、それより内側だと意味を成さないから気をつけてな。」
「買います。いくらですか?」
「大金貨1枚だよ。」
「安っ!?良いんですかこんなに高度なアイテムが大金貨1枚なんて。」
「良いんだよ。その代わりうちを贔屓にしてくれるとありがたいね。」
「それだけで良いんですか?お釣りが来ますよ?」
「良いんだよ。これから先大物になるって信じてるからそれの手助けをしたいんだよ。」
「分かりました。それではお言葉に甘えさせていただきます。」
リベルはアイテミーからアイテムを買い深くお礼をして店を後にした。
(良いやつだったな。)
(下心を隠して近づいてくる商人よりは断然好印象だね。侯爵っていう立場を利用するのは良いんだけど、性格が悪いやつはそういう事を了承無くやるから嫌いなんだよね。)
(リベルもそんな事思うんだな。いつも優しいからちょっと驚いたぞ。)
(そりゃ僕だって人間だからね。好き嫌いの1つや2つあるよ。リフォンの事はだーいすきだからそんな事思うなんて分からないだけだよ。)
(俺もリベルの事はだーいすきだぞ!)
(リフォンー!)
リベルは俺の事を抱き抱え頬擦りをしてきた。そんな会話をしていると寮の部屋に着いた。俺はリベルに買ってもらったアイテムをもらい、チャヤに付けてもらうように言った。チャヤはそれを嬉しそうにして付けた。俺はまだ魔力感知が得意では無いし、無意識で魔力を感じる事も出来ないから、チャヤの魔力が小さくなったのか分からないと思った。そこで俺は1つアイテミーが言ってた事を思い出した。装備者の直径1メートルに魔力を留めているから俺はずっとチャヤの魔力が切れているのか把握出来ないのだ。
それからのんびりと寮でゴロゴロしているといつの間にか寝ていて、リベルが晩御飯を食べるために起こしてくれなかったらまだ寝ていただろう。俺はリベルと一緒に晩御飯を食べチャヤと遊ぶために学校の中庭に向かった。チャヤの姿を一眼みたいリベルも一緒に遊ぶ事になった。
(何する?)
(魔法の勉強!)
(自分の手元だけなら良いぞ。それ以上だとチャヤが危険に晒されるかもしれないからな。)
(はーい…)
チャヤは少し残念そうに応えた。そんなチャヤの姿を頑張って見ようとしているが、リベルにはあまり見えていないようだった。
(いる?)
(いるけど、本当に真っ黒だから夜の闇に溶け込んで見えないんだと思うよ。俺は猫だから見えるけど、人間には厳しいと思うよ。)
(頑張って見ておくよ。)
リベルは芝生の上に座り込みチャヤの事を見ようと目を凝らしている。
(火魔法を使うか?)
(うん!)
俺はチャヤに火魔法を見せた。チャヤは目をキラキラさせながら見ていた。
(火魔法はかなり基礎的な魔法だ。火魔法か水魔法が魔法の入門だと思えば良い。今日出来なくても明日、明後日とずっと練習していったらいつか出来るようになると思うから諦めないようにな。)
(はい!)
それからしばらくチャヤは火魔法の練習をしていたがうまくいかず頭を悩ませていた。それを見て俺は色々アドバイスをしたがそれも虚しく今日、火魔法を使えるようにはならなかった。今日はそのまま寝る事にした。
次回もリフォンの猫生をお楽しみに。