45話 地下迷宮4階
異世界に転生した俺はリフォンという名を貰い猫生を送る事になった。でも優雅に生きて死ぬだけでは面白く無い。異世界に転生したのに勿体無い。異世界を思う存分堪能してやる!
ゴーストキングを殺した後俺は夢を見た。それは女神が見せてきた夢だった。
「あなた私の加護があるって言うのに光魔法全然使えないじゃない。夢の中で練習していきなさい!」
「え?いきなり夢の中に出てきたと思ったら戦い終わった後すぐに練習しろって?流石に厳しいですよ女神様。」
女神は何も言わずずっと俺の事を見つめている。その目は早くやりなさいと言っているようだ。俺は渋々やり始めた。
光魔法のイメージに苦戦していると女神が教えてくれた。
「私たち神様の事をイメージすると楽に使えますよ。」
「そんな事で良いんですか?」
「そんな事って…光魔法は維持の神ヴィシュヌに対する信仰心もかなり影響しているので、ヴィシュヌの事をよく知らないあなたなら私や猫の神様を信仰すれば少しは光魔法が使いやすくなりますよ。」
俺は言われた通り光魔法の浄化を使う時に女神や猫の神様に力を貸してくださいと縋るように魔法を放った。ここにゴーストキングやゴーストたちがいるわけでは無いので、視覚的には分からないが感覚で言えば初めて使った時より幾分か楽だった。
「どうです?」
「楽にはなりました。」
「なら良かったです。目が覚めるまでは同じ事を繰り返しておいてくださいね。何か知りたい事があるのなら答えますよ。」
俺は長考した。何を言えばこれから先魔神教団などに優位に立てるのかやこの世界についての情報など様々な事を考えた。そして一つの質問を思いついた。
「女神さ…ま?」
そこに女神はいなかった。俺はどこにいるのか分からない女神を探した。
「女神様どこですか?」
俺はしばらく呼びかけながら女神を探したが一向に見つからないので光魔法の練習を再開した。俺は回復魔法がどのぐらいの効果があるのか気になり爪で少し前足を傷付けた。そしてアインが書いていた光魔法の内容を思い出し自分の傷を回復させた。
「あれ?何で治らないんだ?もう一回‥うん?何でだ?」
俺は自分を回復させたが一向に回復しない。俺の回復の効果が弱すぎると思い床に傷をつけ回復させた。すると床は治った。維持の神だから元の状態を維持するって感じだから無機物にも回復が効くと仮定した。ならなぜ猫である俺の傷が治らないのか疑問が残った。俺は一つの事を思い出した。魔法は術者本人には影響が出ないという事だ。それに気づいた瞬間膝から崩れ落ちた。自分にも使えたらどれほど良かったか。俺はしばらくの間寝転がりながら呆然としていた。
「おはよリフォン。御飯食べる?」
「食べる。」
「寝起き良いですねリフォン様。」
先ほどまで光魔法を練習していた感覚があるから寝起きがすこぶる良い。そのままルネスが作ってくれたであろうジャーキーを入れたハンバーグの様な物を食べた。昨日より少し味が濃く俺は心を躍らせながら食べた。
「今日は少し味を濃くしたのですが喜んでもらえたようで良かったです。」
「いつもより美味しかった。今度からこのぐらいの味付けにして欲しい。」
「分かりました。ですが今日中に異変や不調を感じた場合は言ってくださいね。」
「わ、分かった…」
俺たちは4階に行った。そこは今までと少し変わっており地面には10センチほどの草が生えていた。
「トラップがあるかもしれませんのですり足で移動しましょう。」
「「はーい。」」
俺たちの緊張感のなさにルネスは頭を抱えた。
「ルネス、この壁のやつって…」
「おそらくトラップですね。足元だけでなく壁にも気をつけてください。」
二人が話しているそこを見ると壁の岩に紛れて四角いボタンがあった。地面にはまだそのようなボタンは見つけていないがより一層気をつけないといけないようだ。トラップと魔物どちらにも対処しないといけないのはかなり骨の折れる階層だ。
「かなり大きな足音が聞こえるぞ。」
「どのくらいの大きさですか?」
「えーと…2メートルぐらいかな?人間よりは大きくて重いはず。」
「ゴブリンキングよりは小さいね。」
「オークかミノタウロスなどの人型の魔物でしょう。トラップと同時に対処するのは危険ですので魔法で一気に殺しましょう。」
俺たちはルネスの一言で前方に向けて魔法を一斉に撃った。
「グオ゛オ゛オ゛!」
雄叫びが聞こえてきた瞬間足音がドンドン大きくなりこちらに向かって来た。
「ヤバい?」
「ヤバいかも…」
「ヤバいですね。」
俺たちは振り返り来た道を全力で走った。しばらく走っていると俺たちを追う奴の音はしなくなっていた。
「「「ふー…」」」
俺たちは一息ついた。さっきの奴は明らかに今までの奴とはレベルが違ったのに俺たち三人は驚いた。今までは何の苦戦なく殺せたからだ。
「さっきの奴何で僕たちの魔法を喰らっても平気なんだ?」
「おそらくかなり強い個体なのでしょう。」
「ルネスオークとミノタウロスの特徴を教えてくれ。」
「オークは2メートルほどの大きな体を武器に近接戦闘を得意とする魔物です。何かに秀でていたりする訳では無くオールラウンダーという感じです。ミノタウロスはオークを全体的に強化した感じです。知能もあるのでかなり厄介な魔物です。」
「うーん…面倒な相手だな。」
俺たちは作戦を考えた。リベルが前衛で奴の意識を集めルネスがリベルのサポートをして、俺がリベルとルネスの傷を癒し二人をサポートする。
「やろうか…」
「大丈夫か?」
「大丈夫…だと思う。」
「リベル様私も共に戦いますので危なくなったら私の方に避難してください。少しは時間を稼ぎます。」
俺たちは奴に出会った所まで戻った。奴の足音などは一切聞こえない。トラップの脅威と奴を同時に相手にするのリスクが高過ぎるから、トラップが無い事を確認した場所まで誘き出す事にした。
「おい!来いよマヌケ!」
「グオ゛オ゛オ゛!」
まんまと奴は挑発に乗った。ここからは正面衝突だ。どんな攻撃が来るのか分からない恐怖が俺の体を震わせる。
「ルネスサポートよろしく!」
「はい!」
リベルが奴に突っ込んだ。奴は牛の顔に人間の体のミノタウロスだった。体躯は2メートルを超えている。リベルはそんな奴を相手に互角に渡り合っている。ルネスはリベルの邪魔にならないように最低限で且つ最大出力の魔法を撃っている。俺も何か出来ないのかと考えていると一つ思い出した。ヴィシュヌは恩恵を与えることができるという事だ。それをリベルに与えれないかとイメージしてみた。
「うおおお!」
「グア゛ア゛ア゛!」
さっきまではリベル&ルネス対ミノタウロスで互角だったのに今では優勢になっている。どんな恩恵を与えられたのか分からないがそんなことは関係ない。俺はその恩恵をどうにか強化出来ないか試行錯誤した。女神の事を思い浮かべたりヴィシュヌにリベルがミノタウロスに勝てるだけの力を与えて欲しいと祈ってみたりした。その結果リベルはミノタウロスを殺した。
「うおおおおおおお!」
リベルは今までに聞いたことの無い雄叫びを上げた。リベルはミノタウロスの返り血まみれだ。一瞬怪我をしているんじゃ無いかと思うほどだった。
「大丈夫か?」
「大丈夫だよ。それより急に体が軽くなったけどリフォンでしょ?ありがとう。」
「なんかやったら出来た。」
「お二人ともお疲れ様です。この先を見て来たのですが5階に行く階段がありました。4階全体が階層ボス部屋のようになっているのだと思われます。」
「ありがとう。リフォン水で洗ってもらって良い?」
「分かった。」
俺はリベルの返り血を落とし火魔法で全身を乾かした。ルネスはその間に御飯を作ってくれており俺たちはスムーズに食事にありつけた。ルネスの料理の腕はかなりの物で屋敷で食べていた御飯と変わらなかった。俺たちはお腹がいっぱいになりルネスに体を預けて眠った。
次回もリフォンの猫生をお楽しみに。