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44話 地下迷宮3階

異世界に転生した俺はリフォンという名を貰い猫生を送る事になった。でも優雅に生きて死ぬだけでは面白く無い。異世界に転生したのに勿体無い。異世界を思う存分堪能してやる!

 俺は良い匂いで起きた。

「おはよ御飯出来てるよ。」


 ジャーキーを入れたシチューと火魔法で焼いたパンがあった。人間ならテンション上がるんだが猫だからその旨みの何分の一にも減っているのが唯一の欠点だ。


「おはようございます。こちらがリフォン様の分です。冷ましておりますのでお食べください。」


 ルネスが俺にシチューとパンを渡してくれた。俺は見えざる手を使ってパンにシチューを付けて食べた。病院食ぐらい味が薄く物足りない。そんな感情を抱えたまま作ってくれた量全て食べ切り水魔法で洗いルネスに食器を返した。


「お二人とも満足されましたかな?」

「うん!」

「うん…」


 明らかに俺の反応がリベルと違いリベルは俺を不思議そうな顔で見つめる。ルネスは申し訳なさそうな顔で見つめる。


「お口に合わなかったでしょうか?」

「いや美味しかったよ…でもリベルたちと同じ塩分量のシチューを食べたかったなって…」

「リフォン人間みたいだね!」

「喋れる使い魔の謎は一切解明されていないと考えても良いほど、分かっていない事が多いですからリフォン様が猫の皮を被った人間だとしても受け入れますよ。」


 俺はその言葉に妙案を思いついた。猫に関する魔法で人間になったらそのまま人間として食事を出来るのではないかと。でもこういう事はグロウやマイヤーたちがある屋敷でする方が面倒事も少なく済むだろうから、打ち明けるなら夏の長期休暇にしよう。


「それでは3階に行きましょうか。」

「「はーい。」」


 3階に来ても特に内装の変わりは無く俺たちは何も喋らず歩き続けた。


「魔物いなくない?」


 静寂を破ったのはリベルだ。薄々感じていた事を言ってくれた。今までなら魔物が出てくる頃合いなのだが、今回に限っては魔物の足音や気配すら感じない。


「おかしいですね。魔物の気配すらしません。もしかしたらトラップが多い階かもしれないので気をつけてください。」


 俺たちは足元、壁、天井などトラップがありそうな所に注意しながら進んで行った。かなり進み1階、2階の感覚で言うなら半分を過ぎた辺りまで来た。


「何かおかしいよね?こんなに魔物が出なくてトラップも無いなんて…」

「おかしいけど対処のしようが無いな…」

「そうですね。今は注意するしか…」


 俺たちがそんな会話をした瞬間、俺たちの背後に空気が流れていくのを感じた。俺たちは背中合わせになり死角を無くした。


「何か来るよね?」

「来るだろうな…」

「来ますね。」


 その刹那俺たちに向かって包丁が飛んできた。幸いにも俺が水魔法で壁を作っていたから速度が落ち刺さる事は無かった。


「そっちか!」

 リベルが火の玉を作り出し包丁が飛んできた方に撃った。


「ギャア゛!」


 人の様な悲鳴が聞こえた。


「ゴースト!?」

 ルネスが驚いた様に言った。


「そんなにヤバいのか?」

 俺はルネスに聞いた。


「魔法でしか攻撃出来ないのですが、私たちには関係ありません。それ以上に厄介なのは壁をすり抜けられる事です。どこから来るのか分かりません。私たちの足元から来る可能性もあります…」


 その言葉を聞きゴーストを完全に防げる方法は無いのか考えた。俺は体に高温の火を纏わせた。二人も俺を見て真似た。ゴーストの姿が見えない恐怖に怯えていると俺たちの近くで声が聞こえてきた。


「魔法で体を纏っても無駄だよ。」


 俺たちは声がした方に魔法を撃った。するとまた後ろから声が聞こえて来た。


「言ったでしょ無駄だって。」


 リベルはもう一度声がした方に魔法を撃った。このゴーストは魔法が当たる前に壁の中に入り防いでいるようだ。俺たちは打つ手が無かった。俺は一か八か賭けに出る事にした。


「少しの間俺を守ってくれ。」

「え?わ、分かった。」

「分かりました。」


 二人が俺を守ってくれている間俺は光魔法の浄化のイメージをした。浄化がどんなイメージで出来るのか分からなかったから聖水や神様などの神聖な物をイメージして魔法を放った。


「ギャア゛ア゛ア゛!」


 きちんと出来ていたようでゴーストが苦しんでいる。二人は俺の方を見て言った。


「何したの?」

「流石ですリフォン様。」


 ルネスは何をしたのか理解しているようだが、リベルは全然理解出来ていないようだ。


「光魔法の浄化だよ。初めてだけど上手く出来たみたいで良かった。」

「流石!」

「お見事です。」

「お前たちよくもぉ!」


 周りの壁から多数のゴーストが出て来た。俺はもう一度浄化をしてみた。


「「「ギャア゛ア゛ア゛ア゛!!!」」」


 ゴーストたちは悲鳴を上げて消滅して行った。周りにはもうゴーストたちはいなくなったようなので歩き出した。それからゴーストたちが再び俺たちの前に現れる事は無かった。俺たちは階層ボスの部屋の前に着いた。


「ルネス再確認なんだけどゴーストに魔法は有効なんだよね?」

「その通りです。先ほどなゴーストは私たちの魔法が当たる前に壁の中に入り、当たるのを回避してました。おそらくゴーストキングが相手でだと思われますが、ゴーストキングにも魔法は通用します。ゴーストキングはリフォン様の光魔法の成長に一役買ってくれるでしょう。」

「ん?何でそうなるの?」

「光魔法なんて学園で練習する機会なんて全然無いだろうし、使える事が分かったらリフォンが危険に晒されたりするかもしれないんだから今のうちにやっておいた方が良いでしょ!」

「いやそうだけど…流石に一回やっただけで階層ボス相手にするのは…」

「安心してください。私たちが全力でサポート致します。リフォン様は光魔法のイメージに専念してください。」

「僕たちを信じて。」

「分かった…」

 俺は渋々了承して階層ボスの部屋に入った。


「お前たちか我が同胞を殺したのは!」


 ゴーストキングはゴブリンキングと同じぐらいの大きさでかなり威圧感がある。猫の体だから余計に大きく感じる。今からこれと殺し合うと思うと足が震える。でもこんな所で死ぬなんて勿体無いと思い自分を奮い立たせた。


「そうだ!俺が殺したんだ。お前も成仏させてやるからかかってこい!」

「お前かぁ!!」


 ゴーストキングが火魔法を撃ってきた。リベルが火魔法で相殺してくれた。俺は二人が守ってくれている間に浄化のイメージをした。さっきのゴーストなら殺せたけど今回はゴーストキングだからさっきのイメージでは足りないだろう。光魔法の神ヴィシュヌは維持の神であり正義の神だ。俺がリベルとルネスを守る正義の味方になる。この思いを浄化に乗せて浄化した。


「グア゛ア゛ア゛!お前よくもやってくれたな!」


 そう言うとゴーストキングは頭に血が昇ったようで俺たちに向かって突っ込んで来た。それが罠だとは気付かずに。


「グア゛ア゛ア゛!これは…魔法の檻!?いつの間に!」

「最初に時間を稼いでる時に気付かれないように張ったんだ!」

「まんまと掛かってくれて嬉しいですよ。」

「これで終わりだぁ!」


 俺は浄化を連続で何度も撃ち込んだ。その度にゴーストキングは悲鳴を上げたが俺が手を止める事は無かった。しばらくしたらゴーストキングの悲鳴が聞こえなくなった。苦戦したゴーストキングを倒したのだ。俺は疲れから倒れてしまった。


「大丈夫ですか?」

 ルネスが膝の上に抱き抱えてくれた。


「ありがとう。このまま休んでも良いかな?」

「もちろんです。功労者を労るのは当たり前の事です。御飯を作っておくので十分に休んでください。」


 俺はその言葉に安心して気を失った。

次回もリフォンの猫生をお楽しみに。


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