43話 地下迷宮2階
異世界に転生した俺はリフォンという名を貰い猫生を送る事になった。でも優雅に生きて死ぬだけでは面白く無い。異世界に転生したのに勿体無い。異世界を思う存分堪能してやる!
「おはよー。どのくらい寝てた?」
「3時間程です。食事を済ませて出発しますか?」
「二人は休めた?」
「私の事はお気になさらず。」
「そもそも疲れてないから大丈夫だ。」
「なら行こうか。」
俺たちは2階に降りた。そこは1階とあまり変わりは無く、壁は岩で出来ており洞窟の様な感じだ。
「2階の魔物は何だろうね。」
「順当に行けばビリヤンなどでしょうか?」
「ビリヤンって何だ?」
俺は初めて聞く単語に疑問を持った。
「ビリヤンは簡単に言えば狼ですね。使い魔でも狼はいますが、ビリヤンは比べ物にならない程凶暴で厄介です。と言ってもこれは剣士や戦士の近接職の方の感じ方です。魔法使いからしたらそれほど脅威ではありません。ですが油断は禁物です。脚の速さと顎の強さはかなりのもので、一度噛みつかれたらそこの肉は無くなってしまいます。」
「恐ろしいね…」
「噂をすれば何とやらだな。複数の足音と犬の様な息遣いがするぞ。」
「リフォンの耳って本当に良いよね。」
「猫だからな。」
俺は火の玉を展開してビリヤンが見えるようになるまで待った。二人は俺を訝しんでいる。
「撃たないの?」
「どんな見た目か確認したい。狼と酷似している場合誰かの使い魔とビリヤンを間違える可能性があるからな。」
そんな話をしているとビリヤンの姿が見えて来た。その見た目は骨格こそ犬や狼と同じだが、迷宮という環境にいるからか顔つきや爪、牙が変形している。その見た目の恐ろしさに足が震える。
「リフォンもう良いでしょ?」
「あぁ、今撃つ。」
俺は展開していた火の玉をビリヤンに向かって撃った。
「キャイン!」
「どんどん行こー!」
リベルは何も気にする事なく進んでいく。俺は命を奪った事に罪悪感を覚えた。
「さっきよりも数が多い。」
「じゃあ連携攻撃やってみる?」
「分かった。」
俺はビリヤンたちが走ってくる床に5センチくらいの水を張った。リベルはそれを確認して両手に雷魔法を展開した。ビリヤンたちが水を張っているエリアに侵入した事を確認してリベルは雷魔法を撃った。ビリヤンたちは悲鳴を上げる事なく感電死していった。
「バッチリだね。」
「う、うん。」
「リフォン様大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫…ちょっと気分が悪いだけだよ。」
「大丈夫?」
「殺生には抵抗があって…」
「大丈夫だよ。やらなきゃこっちがやられるんだから。」
「そうですよリフォン様。生きるか死ぬかなんです。事の善悪は関係ありません。仇なす者は誰であろうと殺さなくてはいけません。でなければこの世界では生きていけませんよ。」
「わ、分かりました!」
ここは日本とは違い生きるか死ぬかの弱肉強食の世界だ。自分が弱ければ死に強ければ生き残る。虎やライオンは自分の命が幾つの命の上にあるのかなんて気にしない。俺もそうならなければいつか死ぬ。せっかくこんな良い猫生を貰えたのだから後悔の無いように生きよう。
「リフォンいける?」
「任せて。」
俺は冷酷無比にビリヤンたちを殺した。
「結構進んだのにまだ着かないね。」
「確かに結構長いな。」
「この地下迷宮は階層に比例して難易度と規模が大きくなるのではないかと思います。」
「結構面倒くさいね。」
「確かに。」
しばらく歩いていると今までより大きなビリヤンが周りに10匹程ビリヤンを侍らせて待っていた。
「階層ボスでは無いよね?」
「多分…」
「おそらく少し強い個体だと思います。階層ボスは…」
ルネスが解説しているとビリヤンが飛びかかって来た。
「あぶなっ!」
リベルは超反射で剣を抜き切り伏せた。
「油断大敵ですね。」
ルネスがそう言うと大きなビリヤンの頭上に大きな火の玉を作り出した。
「チェックメイトです。」
バゴン!!!
ルネスの火の玉は床を大きく削り取る程の威力があった。俺たちはその威力に無意識に拍手をしていた。ルネスはどう反応したら良いのか分からず面白い反応をしていた。
「そう言えばトラップとか全然見てないよね?」
「確かに。」
「運が良いのかこの階には無いのかこの迷宮には無いのか分かりませんが注意して進みましょう。」
「「はーい。」」
「気の抜ける返事ですね…」
俺たちはそのまま2階を攻略していき階層ボスの部屋の前に着いた。
「1階の傾向で言えばビリヤンを束ねる親玉ビリヤンキングの類いだと思われます。」
「強敵なのは間違いないね。二人とも順位は良い?」
「良いよ。」
「いつでもどうぞ。」
俺たちは階層ボスの部屋に入った。そこは血生臭かった。なぜそんな匂いがするのかはすぐに分かった。そこにいるビリヤンたちは一対一で決闘をしていた。その奥には全長5メートルはあろう大きさのビリヤンが座っている。その傍には普通より少し大きなビリヤンが5匹いた。
「グ…ゥ」
決闘をしていたビリヤンの一方が倒れた。そして勝った方のビリヤンが大きなビリヤンの傍についた。準備が整ったようで大きなビリヤンが立ち上がった。
「準備出来たようだね。」
「そうだな。」
「ビリヤンキングですね。周りの6匹のビリヤンは精鋭のはずです。油断しないようにしてくださいね。」
「もちろん!」
リベルは剣に雷魔法を纏わせビリヤンキングに突っ込んだ。ビリヤンキングは思いの外賢いらしくリベルの攻撃を避けた。その隙にリベルを攻撃しようとした精鋭のビリヤンを学園長からもらった氷のアイテムで水魔法を凍らせ氷柱として撃った。その威力は凄まじくビリヤンの腹部に穴を開ける程だった。
「リフォンそのままサポートよろしく!」
リベルは精鋭のビリヤンを気にする事なくビリヤンキングと一騎打ちをしている。リベルは風魔法が使えないから火魔法の反作用で飛んでいるが、それでもビリヤンキングの急所を狙う事は厳しいのかかなり時間がかかっている。その間にルネスさんが精鋭のビリヤンを全滅させてしまった。
「あぁ!もう焦ったい!一撃で葬ってやる!」
そう叫ぶとリベルはとても大きな火の玉を作り出し、片手間で雷魔法を撃ちビリヤンキングの気を引いた。まんまとビリヤンキングは引っ掛かりリベルに噛みつくために顔を近づけた。その刹那リベルは剣を抜きビリヤンキングの噛みつきを避けると同時に首元に大きな傷を作った。それに怯んだビリヤンキングは後ろに下がった。それが一番の失敗とも知らず。
「終わりだ!」
リベルはさっき作り出した大きな火の玉をビリヤンキング目掛けて撃った。
バン!!!
轟音が部屋に響いている。火魔法を撃った時に出た煙が晴れるとそこには体の半分が無くなったビリヤンキングがいた。
「よーし!勝った!」
「お疲れ。」
「お見事です。魔法で気を引き剣で反撃をし魔法でトドメを刺す。文句の付け所がありません。」
「つかれたー。そう言えばここってアーティファクトとかの報酬出ないのかな?」
「まだ2階ですので出ていないだけかと思われます。」
「そうかなー…とりあえず僕は疲れたから寝るね。」
そう言うとリベルはすぐに眠った。よくこんな血生臭い所で寝られるなと感心した。俺は少しでも綺麗な場所にしたかったから水魔法でビリヤンの遺骸と血を掬い取り部屋の外に出した。俺も疲れたのでリベルの側で眠った。
次回もリフォンの猫生をお楽しみに。