4話 勉強はほどほどに
異世界に転生した俺はリフォンという名を貰い猫生を優雅に送る事になった。でも優雅に生きて死ぬだけでは面白く無い。異世界に転生した意味が無い。異世界を思いっきり楽しむぞ!
俺がペタフォーン家に来て三日目リベルはエクサフォン学園に入学するために毎日勉強漬けだ。
「ご馳走様でした。」
リベルはいつもより早くご飯を食べ勉強をするようになった。家族と一緒にご飯を食べている時ぐらいは勉強の事は考えず会話を楽しんで欲しいものだ。
「勉強を頑張るのは良いが、あのままでは体を壊しかねん。」
グロウは子供思いの良い父親だ。でもグロウもグロウで毎日仕事があるのでリベルの為に何かできる事は少ない。
「グロウ、そんなに心配しなくても自分の体は自分が一番分かっているんだから休息はきちんと取っているはずだぞ。」
「ああ、だがやはり心配だ。」
親バカと言うほどでは無いが子を持つ親というのは子供より大切なものは無いだろうから当然だろう。
「暇だから俺が付きっ切りで見ておくよ。」
「リフォンも私の子供なのだから無理はしてくれるなよ。」
俺もご飯を食べ終え三階のリベルの勉強部屋に向かった。
(リベル扉を開けてくれ。)
(分かった。)
俺はテレパシーをしてリベルに扉を開けてもらった。
「どうしたの?リフォンは僕の勉強なんて見てて楽しく無いだろ?」
「グロウと俺が心配してるんだ。勉強のし過ぎで倒れたりしないかって。」
「大丈夫だよ。でもありがとう。」
リベルは俺の頭を撫で、勉強に戻った。リベルの集中力はかなりのもので俺がリベルに対して何かアクションを行わない限り俺の事なんて気にもならない感じだ。
「リベル、もうお昼だ。ご飯を食べに行くぞ。」
俺はリベルの袖を噛んでグイグイと引っ張った。それでようやくリベルは机から顔を上げ俺の方を見た。
「もうそんな時間か、分かった。」
リベルは俺を抱き抱え歩いている間ずっと猫吸いをしていた。おそらく勉強の疲れを取っているのだろう。
「リベル、根を詰めすぎていないか?」
「大丈夫です、お父様。」
リベルは大丈夫だと言ったのにグロウはまだ心配をしているような顔をしている。
「グロウ、そんなに心配しなくても大丈夫だ。今のところ何の問題も異常も出ていない。でもリベル一時間に一回は十分休憩を設けた方が良いと思うぞ。」
「分かった。ありがとうリフォン。」
リベルはいつものように俺の頭を撫でた。これだけ撫でられると俺も撫でてみたいと思ってしまう。
昼ご飯も食べ終わったらすぐに勉強部屋に俺を抱いて向かった。
「休憩の時教えて。」
リベルはそれだけ言い机に向かった。リベルの集中力は魔法でも使っているのでは無いかと思った。俺はそこで思いついた。氷魔法なら温度を下げようと思えば下がる。火魔法なら温度を上げようと思えば上がれる。この世界の魔法は心の中で思った事が体内にある魔力のような物の多さ、質に応じて魔法が使えるのではないだろうか。俺はそれを確認すべくリベル机から離した。
「リベル、確認したい事があるんだけど試しても良いか?」
「え?うん。良いよ。」
俺は心の中でリベルの髪の毛を見えない手で引っ張った。
「え?!何?!どういう事?!なんで髪の毛引っ張られてるの?」
リベルはとても焦っている。俺はリベルのそんな反応を見るのは初めてだったからしばらく遊んだ。反応が薄くなってきたのでネタバラシをした。
「実は俺なんだよね。心の中で見えない手で引っ張るイメージをしたんだ。」
「え?何でそんなことできるの?そんな魔法無いよ。」
その言葉を聞いて俺はリベルより焦った。
「え?!リベルは出来ないの?」
「うん。ていうか多分誰も出来ないよ。」
「じゃあ何で俺出来たの?」
俺とリベルの頭には疑問符が浮いていた。とりあえずシータに聞きに行く事にした。
「シータ?いる?」
訓練場に俺の声が響くだけでだった。
「いないね。ガインに聞く?」
「うん。」
ガインがいる剣術訓練場の扉を開けた。
「リベル様にリフォン様?どうしたのですか?」
「リフォンが見た事も聞いた事を無い魔法を使ったからこれは何なんだろうと思ってシータに聞きに来たけどいなかったからガインに聞こうかと思って。」
「そうですか。どんな魔法ですか?」
俺は言うより実践する方が分かりやすいと思い試した。
「え?!何で髪の毛が?!」
ガインとリベルと同じような反応をした。この反応からガインもこんな魔法知らなかったのだろう。
「俺の魔法なんだ。見えない手で引っ張ったんだけどこれって何の魔法?」
「私にも分かりません。お力になれず申し訳ありません。」
「いやいやガインが謝る事じゃ無いよ。」
ガインが閃いたような顔をした。
「学園になら情報があるかもしれません。」
「確かに。って事でリベル勉強頑張って。」
「言われなくても頑張ってるよ。」
リベルは胸を張って応えた。流石俺のリベル。俺も誇らしいよ。
「というかシータはどこにいるの?」
「シータは今国王からの勅命でワイバーンの討伐に行っています。」
ワイバーンと言えば前世でドラゴンのような見た目に心躍らせたものだ。
「ワイバーンの具体的な強さ?凶暴さ?を教えて欲しい。抽象的ですまない。」
「いえいえ、全然良いですよ。エクサフォン国は魔物の強さと被害の甚大さで等級を決めているんです。それが上からブラック、レッド、ブルー、イエロー、グリーン、ホワイトの順です。今回のワイバーンはレッドでかなり強い部類ですのでシータが呼ばれたと言うわけです。」
「なるほどガインが呼ばれなかった理由は不利だからか。流石に前衛の為だけに呼ぶわけ無いもんな。」
「ええ、そうです。私は魔法は得意では無いので空を飛ぶワイバーンには攻撃を当てられないんです。風魔法が得意な者ならワイバーンにも有効打を与えられるでしょうが私は出来ませんので。」
ガインは下を向いて落ち込んでいるようだ。ここは何か言わないとガインに失礼だと思い褒める事にした。
「じゃあガインは地上戦を極めれば良いじゃん。その風魔法を使える人は上空に浮くために魔力を使う。しかもそこから攻撃をしなくちゃいけない。それもモンスターの攻撃を避けつつだ。かなりのベテランでもないと深傷を負ってしまうかもしれない。ならガインの得意な地上戦は誰にも負けないぐらい強くなって魔法が使えないからってバカにしてきた連中を見返せば良いじゃん。」
俺は出来る限りガインを褒めた。
「そうですね。こんなところでクヨクヨしてられません!今から訓練をしますのでお二人は離れてください。」
ブン!ブン!ガインの一振り一振りが空間を切っている。その迫力、熱意が俺たちにまで伝わってくる。これ以上ここに留まっていられないほどの風圧に俺たちは訓練場を後にした。
「結局俺の魔法何だったんだろうな?」
「僕が学園に受かれば何かわかるかもしれないから楽しみにしてて。」
ニコッと笑うリベルの顔はとても愛らしかった。
「期待してるよ。」
「そうだ。お母様にも聞いてみる?」
マイヤーは学園で指折りの実力者であるグロウを尻に敷いていた人物だ。知っている可能性は十分にある。
「お母様。失礼します。」
俺たちは三階にあるマイヤーの自室に訪れた。
「どうしたのですか?リベルにリフォン。丁度いいわリフォン私の膝の上に来てくれない?」
マイヤーは甘い声で俺を呼ぶ。前世では親の愛情なんて知らなかったから、こんな誘いは絶対に拒まない。
「珍しいなマイヤーが俺を撫でるなんて。」
「機会が無かっただけで私猫は好きですよ。」
マイヤーはとても穏やかな表情で俺を撫でる。
「もう!リフォン!君の魔法の事について聞きに来たんだろ。」
マイヤーの体温と撫でる手の心地よさに忘れるところだった。
「そうだ。マイヤー俺が心の中で見えない手で髪の毛を引っ張るっていう魔法が使えるんだが、これに似た魔法は知っているか?」
「うーん…分からないわ。」
マイヤーはしばらく考えたが思い付かなかったようだ。
「マイヤーでも分からないとはますます謎が深まったな。」
「学園の全書物を読んだわけでも無いのですからもしかしたら 私が読んで無いだけであるかもしれませんよ。」
「ありがとう。一応グロウにも聞いてみるよ。」
俺はそう言い残しグロウの部屋に向かった。道中でリベルが俺の事をいつもより少し強く抱きしめていたが嫉妬でもしたのだろうか。
「お父様。失礼します。」
「どうした?さっきの変な魔法か?」
「グロウはなぜ気づけるんだ?」
俺には何にも感じれないから直接聞く事にした。
「普通の人は魔法を使った痕跡や魔力を感じれないんだよ。」
「魔力とは魔法を使う際に使う力か?」
「その通りだよ。生まれた時から魔力を持っていてその魔力量が最少なんだ。だからリフォンはどんどん増えていくかも知れないね。」
俺はこれ以上に魔法を使えるようになるのかと思うと期待に胸を膨らませる。
「さっきの話に戻るね。私は生まれつき魔力を感じる力が強かったんだ。だからこの屋敷内ぐらいなら魔力を感じれるんだよ。で、リフォンが使った魔法は魔力自体は普通なんだけど魔法は見た事も聞いた事もないね。」
「やはりそうか。仕事中に失礼したな。」
リベルの勉強部屋に戻る事にした。
「リフォンはモフモフで気持ち良いねー。」
「いくらでも触ってくれて構わんぞ。」
俺はリベルの勉強疲れを取れるのなら本望なので気が済むまでモフらせた。
「よし!さっきは出来なかった一時間やって十分休憩をやるから休憩する時間になったらよろしく。」
「任せろ。」
毎日こういう感じでリベルの勉強を休ませる時間を作れればリベルはストイックなので拒否するだろうけど、グロウとの約束もあるしこのままではリベルの体に悪影響が出るかも知れないから強制的に休ませる事にしよう。
次回もリフォンの猫生をお楽しみに