39話 使い魔競技会競技部門
異世界に転生した俺はリフォンという名を貰い猫生を送る事になった。でも優雅に生きて死ぬだけでは面白く無い。異世界に転生したのに勿体無い。異世界を思う存分堪能してやる!
「リーフォーンーおーきーてー。」
俺はいつもと違うリベルの起こし方に戸惑いつつ目を覚ました。
(何でそんな起こし方なんだ?)
(何となくだよ。)
俺は昨日と同じように朝御飯を食べている間にブラッシングをされ身だしなみを整えた。今日は使い魔競技会競技部門だ。使い魔同士の戦いは初めてだから手加減が分からない。強すぎると学園から支給された魔法防護を通り越してしまうかもしれない。幸いな事にハーリーたちは競技部門には参加しないようだから気負いする事は無いが、他人の使い魔を傷つけるのは喜ばれる行為では無いから細心の注意を払う必要がある。
「行くよ。」
「ニャ。」
俺たちは昨日と同じ道を通りエクサフォン競技場に向かった。
「おはよう。」
「おはよ、ハーリー、ハリス。」
「おはよう。二人とも負けないでよね!」
「その期待に応えられるようにするよ。」
ハリスはいつも通り元気だ。こんなにやる気があるのに参加しないのは、ハーリーが否定したからだろう。
「おはよう。リベル、ハーリー。」
「おはよ、ワーナー。」
「私も忘れないでくれる?」
「ごめん。ワーナーが大きくて見えてなかったよ。おはよ、アイン。」
「「「あはは!」」」
「おはよ、リベル。」
そんな他愛も無い話をしているとあっという間に競技場に着いた。
「それじゃあ、僕たちの勇姿見ててね。」
俺たちは昨日と同じ控室に行った。そこには俺たちの他に十人ほどしかいなかった。一年生だしまだ使い魔と完璧にコミュニケーションを取れる生徒は少ないだろうし、ハーリーのように使い魔を戦わせたくないと思う人も少なくの無いだろう。
「よし揃ったな。それじゃあルールを説明するからちゃんと聞くように。一つ目は審判の言う事には従う事。二つ目は強すぎる魔法は使わない事。三つ目は主人には攻撃しない事。あとは常識の範囲内で行ってくれれば問題無い。勝敗だが、どちらかの使い魔が立たなくなったり負けを認めた場合、魔力切れを起こした場合、戦意喪失した場合などだ。審判が判断するからそれに従うように。何か質問はあるか?…無いなら使い魔と作戦でも立てておくように。」
そう言い終えるとマリー先生はどこかに行った。何か他にも役割があるのだろうか早足だった。
(作戦立てる?)
(正直言っていらないと思うけどな。だって指示待ってる間に攻撃した方が効率良く無いか?)
(確かにそうだね。)
俺たちは控室の椅子に座ってのんびりと待つ事にした。周りはそんな俺たちを見て、嘲笑する者や心配する者など様々な反応を見せた。しばらくするとマリー先生が戻ってきた。
「もうすぐ始まるからこの対戦表見ておいて。アナウンスあったら二人づつ競技場に入ってね。」
マリー先生はまたどこかに行ってしまった。何をしているのか分からないが忙しそうだ。
「只今より使い魔競技会競技部門を始めます!」
アナウンスがあり最初の二人が競技場に行った。俺はトーナメント表を確認した。俺たちの名前は一番右にありシードだった。しかも決勝戦だけだった。シードなのは理解出来るが、決勝戦までなのは明らかに何か意図があると感じた。
(あれ?僕たち決勝戦まで戦わないんだ。残念。)
(ていうか何でこんなシードなんだ?)
(僕たちが強すぎるから?)
リベルは自惚れたマヌケな顔をしている。いつもは真面目なのにこういう時はふざけるのがリベルの悪い点だ。
「決着!勝者赤コーナー!」
アナウンスの声を聞き俺はトーナメント表を再確認した。名前の下に赤と青で色分けがされている。俺たちは青コーナーのようだ。そして次の出場者の名前が呼ばれ二人が競技場に向かった。俺は待っている間暇だから寝る事にした。
「リベルたち最後の最後だねー。」
「二人は強すぎるから良いんじゃない?」
「確かにあの二人は正直言って異常だ。」
ハーリーたちがそんな話をしながら待っていると聞き馴染みのある声が聞こえてきた。
「私たちも一緒に見て良いかしら?」
そこにはナサリーを先頭にクラスのみんながいた。ハーリーたちは快諾しみんなで観戦する事にした。
「昨日の藝術部門見ましたわ。三人ともとても素晴らしい魔法でしたわ。」
「ありがとう。」
「私なんだから当たり前よ!」
「なんか褒められるのって嬉しいね。」
「俺とナーガだから!あはは!」
「それよりこの競技場一般の方も居られて昨日は探すのを諦めましたわ。ですが今日は見つけられましたわ。」
みんな仲睦まじく会話をしているとアナウンスがされた。
「いよいよ決勝戦!赤コーナー、スーリン・シュビマリーンとその使い魔リンリン!青コーナー、リベル・ペタフォーンとその使い魔リフォン!」
「やっとですわね。」
「待った甲斐があった!」
俺はリベルに抱き抱えられて入場した。俺はまだ寝ぼけていた。歓声の大きさでようやく目が覚めた。
(やっと起きた?)
(ごめん、やる気出す。)
(お願いね。)
「両者準備はよろしいでしょうか?それではレディーファイ!」
俺は相手を煽るように伸びをした。相手は案外冷静で俺の煽りは効かなかった。一瞬の静寂が訪れ相手が先に動いた。相手は火を槍のような形に成形して俺に向かって撃ってきた。俺はそれを水魔法の壁で防いだ。相手は俺の水魔法の壁を見て突破するには高火力で押すしかないと考えたのか、上空に大きな火の玉を作り出しこちらに撃ってこようとした。俺はその刹那相手の懐が空いている事を確認して、相手が撃ってきた火魔法の槍を真似て撃った。
「キャイン」
会心の一撃だったようで相手は怯んでいる。いつの間にか上空にあった火の玉は消えていた。
「まだいけるか?」
相手の主人が使い魔に問いかけている。対戦相手とは言え同じ学生だから戦意を見せるまで待った。
「ワン」
まだ戦意はあるようで今度は俺から攻めてみる事にした。俺の頭上に水魔法で作った氷柱状の水を展開し、相手に火の玉を撃ち込んだ。その火の玉の速度を一つ一つ変えて対応し難いようにした。相手が逃げたり防いだりするのに手一杯になってるのを確認して頭上に展開していた氷柱状の水を撃ち込んだ。強度は氷魔法には到底及ばないが、展開する前に圧縮するイメージを持たせていたのでかなりのダメージになったのか、相手は外傷は無いが倒れたまま起き上がらなかった。審判が俺たちの方に手を挙げ勝敗は決まった。
「勝者青コーナー!そして一年生の優勝者はリベル・ペタフォーンとその使い魔リフォンだ!」
「「「うおおおお!」」」
歓声が競技場を包み込んだ。俺はその高揚感に胸を躍らせた。
(やったね。)
(嬉しいもんだな。)
「優勝者には特別な贈り物がありますので楽しみにしていてください!それでは早速二年生の部に参りましょう!」
俺たちはもう始まるのかと急いで控室に戻った。
「二人とも優勝おめでとう。」
「あ、ありがとうございます?」
「なぜ疑問系なんじゃ?」
「全部リフォンがやったので…」
「確かにリベル君は何もして無いなとは思っておったが、全てリフォン君がやったとは流石と言うべきか恐ろしいと言うべきか分からんな。」
『ありがとうございます。』
「これは…驚いた。読み書きも出来るのか?」
『リベルに教わりました。学園長だから信頼して書いてるんですよ。喋っても良いかも知れませんが、一応こういう風にさせてもらいます。』
「そうか。きちんと自衛まで出来るんじゃな。それより優勝賞品は何が良いかの?」
『何があるんですか?』
「リフォン君に合うのは光魔法のアーティファクトか風と氷のアイテムかの?」
『もう少し具体的に説明してくれないですか?』
「すまん言葉足らずじゃったな。光魔法のアーティファクトは信仰と言って自分の魔法の適性を伸ばせる可能性があるという物じゃ。そして風と氷のアイテムは浮遊と凍結じゃ。リフォン君の氷柱状の水を氷にする事が出来るぞ。どちらにする?」
(リフォンはどっちが良いと思う?)
(どっちも魅力的だから決められないよ。)
『ちなみにそのアーティファクトはどのぐらいの確率で魔法の適性を伸ばせるんですか?』
「具体的な数値は分からないんじゃ。人によって変わる事もある。使えない魔法が使えるようになった者もいる。アーティファクトは今でも分からない事だらけなんじゃ。」
『アイテムの方は使用制限とかありますか?』
「壊れない限り使えるぞ。」
『両方とかって…』
俺はダメ元で申し込んでみた。
「条件がある。」
俺たちは固唾を飲んだ。
「エクサフォン国から西に十キロほど離れた所にある地下迷宮を調査してきて欲しいんだ。この調査はワシに一任されているから安心してくれ。でも中には何がおるか分からん。魔物があるかもしれんから準備は怠るな、そしていつでも逃げられるようにワシのテレポートをアイテムにして渡すから、地下迷宮に行く前にワシの元に来なさい。期間は設けない。辞退しても良い。その場合はどちらか一方じゃ。」
『その地下迷宮を攻略出来たら国王推薦貰えるかな?』
「文句無しじゃろうな。じゃが油断はするな。そして魔物を見つけたら必ずトドメをさすんじゃ。分かったな?」
『分かった。』
「リベル君もじゃぞ。」
「はい!」
「地下迷宮攻略の助けになるかもしれないから風と氷のアイテムを渡しておく。お主らの兄を連れて行っても構わんぞ。」
「分かりました。掛け合ってみます。」
リベルに風と氷のアイテムを渡し終えると学園長はテレポートでどこかに行ってしまった。俺たちは観客席に行きみんなと競技部門を楽しんだ。
次回もリフォンの猫生をお楽しみに。