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29話 使い魔競技会準備三日目

異世界に転生した俺はリフォンという名を貰い猫生を送る事になった。でも優雅に生きて死ぬだけでは面白く無い。異世界に転生したのに勿体無い。異世界を思う存分堪能してやる!

 今日は学園は休み特にすることもない強いて言うなら使い魔競技会のために魔法の研鑽を積むぐらいだ。だから俺は早朝から学園の敷地内の庭の様な場所で魔法の練習をする事にした。俺はどれだけ少ない魔力で高威力を出せるのかを試した。 魔力を少なくする分威力は落ちてしまう。だから少ない魔力で高威力を出すには感情やイメージの鮮明さが大事だと考え魔法を三メートルはあろう大岩に撃った。

 ドガン!!!

「あっ…」

 轟音と共にその大岩は消え去った。試しに大きな火の玉を手のひらサイズの小さな火の玉にまで圧縮させて撃ったら普通に撃つより威力が上がった。魔力に反発のイメージを持たせたらどうなるのか想像したが、ここで行うにはあまりに被害が大き過ぎるからやめておいた。

 学園の方から足音が聞こえてきた。さっきの音を聞いた先生の誰かだろう。バレるのは嫌だけど正直に言わずに詰問される方が嫌だから正座をしている感じに礼儀正しく座って待った。

「さっきの音は…ってリフォン?」

 やってきたのはマリー先生だった。この人の睡眠時間がどれほど少ないのか想像に容易い。

「ニャー?」

 俺は精一杯猫を演じた。

「いやニャー?じゃなくて君でしょ今やったの後ろに岩の破片っぽいのあるし。」

「ニャ。」

「練習するのは素晴らしいことだけど流石にこんな早朝にしかもあんな爆音鳴らしちゃダメだよ。しかもリベル君もいないし。君が私を助けてくれた魔神教団の事忘れたわけじゃないでしょ?」

「ニャー…」

 俺は俯きながら応え反省を態度で示した。

「反省してくれたのなら良いよ。でもどこにどんな奴がいるのか分からないから本当に用心しなよ。もし今度から朝に練習したいのなら私の部屋に来てくれ。いつでも手伝うよ。それに君の魔法の研究、実験にもなるからね。」

 いつまでこの人俺の魔法の事に執着してるんだろうと思った。

「ニャニャ。」

「何?今から魔法を使うから見ててって?」

「ニャニャニャ。」

「違うの?じゃあ私が見たいからやってよ。」

 俺は明らかに嫌そうな顔をしたがマリー先生は気にしていないようで俺は渋々同じ様に撃った。

 バン!!!

 今回は空中で爆発させた。大岩やカカシなどの標的となる物がなかったからそうした。

「人は周りにいる人物に影響されるとは言うけど影響されてたのはリベル君の方だったかな?」

 マリー先生が何か独り言を言っていたが俺は何を言ってるんだと気にしなかった。

「ンニャニャ。」

「帰るの?また魔法見せてね。あとリベル君に負けないようにって伝えといて。」

 俺はそのまま寮の部屋に戻った。寮のどこからから僅かに魔力が感じられた。朝から魔法の練習をしている誰かがいるようだ。殊勝な行いに感心した。

「おかえり。どこ行ってたの?」

(魔法の練習。)

「楽しかった?」

 楽しいって感じとは少し違うが嫌いでは無い。好きは好きだがマリー先生のように執着するほどでは無い。俺は何のために魔法を学び使うのか分からなくなった。

「リフォン?何考えてるの?」

(何でも無い。)

 前世では貧乏で何も出来なかった。生きているのさえ奇跡だと思えるほどだった。でも今は生きているのが当たり前でしっかりとした教養も受けられている。前世では出来なかった事が全て出来ている。なのに他の何かを求めてしまっている。俺は強欲だ。俺が生きている理由って何なんだ。俺が転生した理由って何なんだ。分からない。分からない。分からない。

「リフォン。」

 リベルがそっと俺を抱きしめる。俺はその優しさに涙を流していた。俺は年甲斐も無く声を上げて泣きたかったが、声を出して泣くのはダメなので心の中で泣いた。

「落ち着いた?」

(うん…)

 俺はどうしたら良いのか分からず俯いたままだ。

(ねぇリフォン本当にどうしたの?俯いたままじゃ分からないから話して欲しいけど…話したく無いなら話さなくても良いよ。)

 俺はリベルの優しさに甘えて思っている事を話した。

(俺ってリベルに召喚されてそこから毎日同じ時間を過ごしてきたじゃん。さっきリベルが魔法の練習楽しかったって聞いてくれた時に俺って何のためにこの世界にいて何のためにこの世界で生きていくのか分からなくなったんだ。絶対にやりたい事も無いし目標も無い。だから明確に生きる理由が欲しいんだ。でもリベルに生きる理由を見つけてもらうなんて強欲で自己中心的だ。そんな自分が嫌になったんだ…)

(話してくれてありがとう。リフォンの気持ちはよく分かった。ちなみに僕も明確に生きてる理由や魔法を学んでる理由も無いよ。お父様やお母様には悲しんで欲しく無いから良い子を演じてるけどね。だからとりあえず学園に入ってやりたい事を探してるって感じかな。どう?僕の話を聞いてみて何か思う事とかある?)

(言われてみればリベルの目標とか聞いた事無かった。じゃあリベルは学園を卒業しても生きる理由とか目標が見つからなかったらどうするんだ?)

(リフォンと一緒に生きる理由を探す旅に出るかな。その時はついて来てくれる?)

 屈託のない笑顔に胸が締め付けられた。俺はリベルのために生きていく事を決めた。

(リベルを看取るのは嫌だから死ぬ時は一緒にな。)

(ヤンデレみたいだね。)

(俺はリベルに依存してるのかもな…)

(良いんじゃない?リフォンは僕がいなかったら生きていけないし、僕はリフォンがいなかったら生きてる意味が無い。共依存だね。)

(そんな笑顔で言う事じゃ無いぞ。)

 正直言うと引いたがそこまで俺の事を思ってくれているのだと理解出来て嬉しい反面少し怖くなった。

(言い方が悪かったけど僕はリフォンの事は世界一大事だし、これから先もずっとリフォンと生きていきたいからそれが僕の生きてる理由だね。)

(重いな…でもそこまで思ってくれてるのは嬉しいな。)

(何の話してるんだろうね。)

(あはは!確かに俺たち朝からこんな話して何してんだろうな。)

 俺はリベルとこうやって他愛も無い話をしてのんびり生きていけば良いと思った。

(朝御飯食べよっか。)

(食べよう食べよう!)

次回もリフォンの猫生をお楽しみに。


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