28話 使い魔競技会準備二日目
異世界に転生した俺はリフォンという名を貰い猫生を送る事になった。でも優雅に生きて死ぬだけでは面白く無い。異世界に転生したのに勿体無い。異世界を思う存分堪能してやる!
「使い魔競技会まで後五日になったら競技会に参加する生徒は競技会のための日程になるから把握しておくように。今日は二限とも魔法演習だ。一限から魔法競技室だから遅れないように。」
エクサフォン学園はこのような行事に積極的に取り組んでいるようで優勝賞品が何なのか気になる。
(なぁリベル、このクラスで使い魔競技会に出るのって俺たちだけなのか?)
(どうだろうみんな出そうだけどね。)
前回の使い魔学では全員熱心に取り組んでいたからそう思うのは無理はない。俺はそんな考え事をしながら魔法競技室に向かった。
「全員来たな。今回は杖を使うからそこにある杖を一人一本持ってこっちに来てくれて。」
そこにはリベルの身長と同じぐらい約百五十センチの杖がある。俺はそれを見てデカくないと心底驚いた。
「あ、あの先生これ大きくないですか?」
リベルも俺と同じ事を思っていて少し安心した。
「杖がそれだけ大きいのには幾つか理由があるんだ。それは授業が始まってから説明するよ。」
一限の始まりを告げる鐘鳴った。
「よしじゃあまずは杖の説明からだ。まず杖がなぜあるのか知ってるか?」
「魔法の威力増幅と効率化です。」
「正解だ。だがまだある。それは自衛のためと物理攻撃のためだ…」
最近のマリー先生は以前のような優しく誰からも慕われる先生という感じでは無く、生徒のためを思って厳しく指導しその厳しさからあまり慕われない先生になってしまっている。魔神教団の件で以前のような優しく教えるだけではダメだと思ってしまったのだろうか。マリー先生が杖の説明をしてくれているのに俺はこんな事を考えていて全然頭に入ってこなかった。
(リフォンどうしたの?元気なさそうだけど…)
(マリー先生が前みたいに優しい先生から厳しい先生に変わっちゃったのが悲しいなって考えてたんだ。)
(それは僕も悲しいけど魔神教団の件があったから仕方ないよ。)
(うん…)
俺は空返事しか出来なかった。
「杖を使って魔法を使う時は普段より魔力を抑えて使う事じゃないと魔法が爆発する可能性があるから十分注意するように。」
みんなが杖を使って魔法を使っている時マリー先生は椅子に座ってみんなを見ている。その顔は真剣そのもので近寄り難い雰囲気がある。でも目の下にはくまがありあまり眠れていないようだ。俺はそんなマリー先生を癒してあげたいと思い足元に近づいた。
「リフォン…」
「ニャー。」
マリー先生が俺の事を撫でてくれたので俺はマリー先生の膝の上に乗った。マリー先生は幸せそうに笑い何度も俺を撫でた。そのおかげで先生の表情は柔らかくなりさっきまでの雰囲気はどこかに消えていった。みんなも変化に気がついたようで笑顔になっている。
「マリー先生幸せそう。」
「魔神教団以前の優しいマリー先生の顔だ。」
俺の癒しパワーは想像以上で俺も少し驚いた。
「ニャー。」
「うんうん。リフォンはかわいいなぁ。」
マリー先生の笑顔が途絶える事は無く一限が終わるその時までずっと幸せそうな顔をしていた。
「ありがとうリフォン。私はずっと君に救われてばかりだな…」
「ニャーニャー。」
俺は首を横に振りながら言った。
「次からは私が君を、君たちを守るから安心してくれ。」
マリー先生は優しくでも力強く俺を抱きしめた。俺はその覚悟に心動かされた。
二限の始まりを告げる鐘が鳴った。
「よし次はさっきより多くの魔力を使ってやってみて。」
オンとオフの切り替えをするようにしたのかさっきまでの甘々なマリー先生とは違って今はしっかりとした責任感のある先生になった。
「リフォン。」
マリー先生は膝を手でポンポンと叩きながら俺を呼んだ。俺はマリー先生が幸せになるなら本望なので膝の上に乗って甘えた。
「リフォン喉ゴロゴロ鳴ってるけど気持ち良いの?」
「ニャー。」
「そうかそうか。」
さっきまでの責任感のある先生とは一変して休日に飼い猫に甘える女性になってしまった。その時俺は悟った。絶対にやり方を間違えたと。
「みんな一旦ストップ。最後に杖に魔力を使い過ぎるとどうなるのか見せてあげる。」
俺たちは実技試験があった所に行った。
「これリベル君とリフォン君がやったやつだよね?いつまで残ってるんだろう。」
アインがそう言うとマリー先生が応えた。
「国王推薦が決まったらかな。」
「国王推薦っていつになったら決まるんですか?」
「国王推薦の審査は候補を出してその人物が本当に国王推薦に相応しいかを見てやっと決まるんだ。一番長い時は部活対抗戦が終わった時に発表されたね。」
俺はそれを聞いて驚いた。エクサフォン学園は六年制とは言え審査期間が長過ぎると感じたからだ。専属教官や爵位の叙爵や学費無償化などあり得ないほど豪華だから審査が慎重になるのは仕方ないと割り切った。
「みんなの制服にも魔法防護がかけられてるけど安全のために離れててね。」
制服に魔法防護がかけられているのは初めて知ったけどおそらくレッドだろう。学園は生徒の数が多過ぎるから質を上げるのは厳しいだろうからレッドが妥当だろう。
「行くよ。」
マリー先生は杖に魔力をどんどん送った。杖の先端に付いている宝石のようなアイテムのような物が眩い光を放ち目を瞑った。
バン!
その音の大きさに耳鳴りが鳴った。どうやら杖の先端に付いている物が爆発して粉々になったようだ。
「こんな感じに魔法石が粉々になるから魔力を使いすぎないように。でももっと良い杖なら大きい魔力にも耐えるから自分で買う時は、自分の魔力と魔法適性に合った杖を買うように。」
「「「はい。」」」
二限の終わりを告げる鐘が鳴った。
「今日の授業はこれで終わりみんな使い魔競技会に出るなら魔法の練習もしておくように。」
マリー先生は最後に俺の頭を一撫でしてどこかに行った。俺はさっきの魔法石の事が気になりリベルに聞いた。
(リベルさっきの魔法石ってどんな感じなんだ?)
(魔法石はさっきの説明通りだね。アイテムはその中にある魔法を使えるけど、魔法石は自分の魔法を強化するって感じだね。)
(やっぱり高いのか?)
(ピンキリだね。ちなみにリフォンのそのイヤリングに付いてる紫色の石は魔法石だよ。)
(え!?そうだったのか。リーンには感謝しても仕切れないな。ちなみに魔法石って大きさとかで価値が変わるのか?)
(そうだよ。大きい物ほど大きい魔力に耐えられるから値段も跳ね上がるね。)
(なら俺のはそんなに高くないみたいだな。リーンの負担になってないようで良かったよ。)
(いや結構高いよそれ。)
(ん?)
俺はその言葉に耳を伺った。
(魔法石は透明度とか光の屈折の仕方とか純度とかで変わってくるよ。リフォンからは見えないと思うけどその魔法石の透明度水ぐらい透き通ってるからかなり良い物だと思うよ。)
(一目惚れでリーンに買ってもらったけど大丈夫かな?)
自分が貧乏だったからその苦しみを味わって欲しくないから心配だ。
(リフォン僕たち公爵家だよ。そんな心配してるのリフォンだけだよ。)
(いやでも…)
公爵家だけどやっぱり心配だから上手く返事出来なかった。
(帰って部屋でイチャイチャしよ。)
(いつも思ってたけどイチャイチャって合ってる?)
(合ってるでしょ。僕リフォンの事だーい好きだもん!)
リベルは俺を抱き抱え頭にキスをして部屋に戻りいっぱいイチャイチャした。と言っても猫じゃらしで遊んだりリベルが俺を猫吸いしたりして一日を過ごした。
次回もリフォンの猫生をお楽しみに。