27話 使い魔競技会準備一日目
異世界に転生した俺はリフォンという名を貰い猫生を送る事になった。でも優雅に生きて死ぬだけでは面白く無い。異世界に転生したのに勿体無い。異世界を思う存分堪能してやる!
「おはよう。今日は二限とも使い魔学だ。使い魔競技会が近づいてきたから出場するならこの参加票を書いて提出しろよー。」
マリー先生は教壇の上にその紙を置いて教室を後にした。リベルはすぐさま参加票を取ってきた。
(書いとくね。)
(どんなんだ見せてくれ。)
俺はどのような事を記入するのか気になり参加票を見た。そこには生徒名と使い魔名、各々の使える魔法と参加区分の欄があった。リベルは参加区分を残して書く手を止めた。
(どうしたんだ?)
(参加区分どうしようかなって。藝術部門か競技部門どっちに出ようか迷ってるんだ。リフォンはどっちが良い?)
(じゃあ両方で。)
(ふふ。流石リベルだね。じゃあ両方で。)
そう言うとリベルは参加区分に両方を書いた。そこで俺は一縷の不安が頭をよぎった。同じ日に開催されるのなら両方に参加するのは厳しくなりそうだ。同じ日だとしても前半後半に分けてくれていないと両方には参加できない。俺はその事をリベルに聞いた。
(なぁリベル俺が言ったんだけど両方って参加できるのか?日程とか時間とかで参加出来なかったらどうする?)
(それなら大丈夫だよ。藝術部門が終わり次第競技部門が始まるから。リーン兄さんの話によると藝術部門は一日で終わるけど競技部門は二日かかる事もあるんだって。だから大丈夫だよ。)
俺が心配そうな顔をしていたのかリベルは俺の頭を優しく撫でた。俺が女だったらリベルに惚れて求愛をしていたであろう。そんな話をしていると一限の始まりを告げる鐘が鳴った。でもまだリタ先生は来ていなかった。マリー先生の時のような不安感や焦燥感は無いので待つ事にした。
「いやーごめんごめん。会議が長引いちゃって。」
女神は俺の勘も鋭くしたのかと思うほどのものになっている。これならどんな道にも悩まず、どんな問題にもぶつかる事は無いだろう。
「今日も前回と同じように一限は座学で二限は演習だよ。使い魔競技会も近づいてきてるから早足で行くよ。まず前回の復習で使い魔召喚に必要な才能の値は幾つかな?」
「最低で四十で六十あれば失敗しないです。」
「流石リベル君正解。それじゃあ使い魔召喚の魔法陣を書くのにどれくらいの時間がかかるか知ってる?実際に使い魔召喚した四人は答えないでね。」
リベルは言いそうになった口を噤んだ。
「分からないのが普通だから落ち込まないでね。熟練の召喚士なら一時間から二時間かからないぐらいだけど普通は三時間から四時間はかかるよ。ちなみに四人に聞きたいんだけど魔法陣書くの手伝った人いる?」
リベルが手を挙げた。
「おおリベル君は手伝ったんだね流石勉強熱心だね。ちなみにどれぐらい手伝ったの?」
「ほんの少しだけです。最後の十分間だけ手伝いました。」
リタ先生が驚いて目を見開いた。
「い、いやーリベル君。冗談がお上手。」
「本当です。」
リタ先生は少し黙り話し出した。
「あのね使い魔召喚の魔法陣ってね最後に使い魔の質を上げるために召喚士が莫大な魔力を用いて書き上げるんだよ。リベル君はその最後を手伝ったの?」
「は、はい。お父様とお母様が勉強の一環だとおっしゃったので召喚士の方の力を借りながら書き上げました。」
リタ先生は落ち込むような態度をとった。
「召喚士の力を借りたとしても凄いよ…」
俺たちはどういう事なのか全く理解出来ていない。リベルが質問に答えたら勝手に先生が落ち込んだのだから。
「まぁでも私が教えられる事はまだ残ってる。君は天才だし努力も出来る。でもまだ知らない事も多い。その知らない事を教えるのが先生だ!だからこんな先生だからって失望しないでね。」
「は、はい。」
リベルは何と言えば良いのか分からずただはいと応えるしかないようだ。
「気を取り直して、使い魔の魔法適性は人間と同様に伸ばせるんだ。でも人間のように簡単ではないよ。人間はアイテムを使えば出来るけど、使い魔はどんどん魔法を使ってもらうしか今のところないんだ。だから普段から使い魔と一緒に魔法を使ったり、魔法の練習をしたりする事で自ずと使い魔の魔法適性も伸びていき自力も伸びるんだ。」
俺はそこで良い事を思いついた。夜中に魔法の練習をしたらリベルにいつの間にこんなに強くなったのって褒められるのではないかと。でも魔神教団の件もあったから授業が終わった後に練習出来ないか学園長に掛け合ってみよう。
「次は使い魔の魔法だ。みんな使い魔の魔法は見た事あるよね。人間の魔法と使い魔の魔法の違いは分かるかな?」
(リベル分かるか?)
(分からないな。リフォンは思い当たる節ある?)
(無いかな。)
「みんな分からないみたいだね。人間の魔法はイメージと感情を組み合わせたものだけど、使い魔の魔法は主人から受けた愛情によるものなんだ。でもこれは使い魔によるんだ。ハリス君みたいな人型の使い魔ならイメージする事もあるし、リフォン君のように賢い子ならイメージをして魔法を使う事もあるよ。でも君たちのようなレアケース以外は基本的に嬉しいや幸せ、楽しいと言った感情によるものが多いとされてるんだ。」
俺やハリスは使い魔より人間に近いからイメージをするのだろうが、普通の使い魔はそのイメージという事が出来ないのだろう。俺は使い魔が闇魔法を使えるようになる条件を考えたがすぐに辞めた。
一限の終わりを告げる鐘が鳴った。
「次は魔法競技室に来てね。」
「「「はーい。」」」
俺たちは魔法競技室に向かった。ヤハスはハスキー、ハンスは鷹、メアリーはアメリカンショートヘアー、カナタは馬、ラーヤはレッサーパンダ、ソフィーはペンギンと一緒に移動した。その様子は動物園のようだった。ターガーは前回使い魔を借りなかったから一人だ。
「ターガー君この中から選んで。」
そう言うリタ先生の所には亀、フェネック、チーター、カラカルがいた。強さを求めるのならチーターかカラカルを選ぶだろうが違った。
「こいつで。」
そう言ってターガーが抱き上げたのはフェネックだった。リタ先生も少し驚いていたが少し微笑んだ。
二限の始まりを告げる鐘が鳴った。
「じゃあみんな授業始めるよ。今回も前回と同じで一緒に魔法を使ってみて。今回は普通に魔法を使うんじゃなくて工夫してみて。例えば火の玉を空中に置いて使い魔にその火の玉に魔法をぶつけてもらうとかやってみて。」
今回の授業は使い魔競技会の藝術部門に活用できそうだから他のみんながどんな創意工夫を凝らすのかをしっかりと見る事にした。
「リベル君たちはしないの?」
アインが話しかけてきた。俺はそんなの気にせずにワーナーやカナタの魔法を見る。ワーナーとナーガは流石の連携でワーナーが水魔法を風魔法で散らし、その水をナーガが一つ一つまでとはいかないが雪の結晶のような形にした。俺も周りもその魔法に感嘆の声を上げた。リタ先生も静かに拍手していた。
「リフォン、僕たちもやらない?」
「ニャ。」
俺は空中に小さな水の玉を無数に作りその水を囲むように火を纏わせた。俺がリベルの事を見ると理解したのかリベルは頷いた。俺が小さな水と火の玉を水蒸気爆発させた刹那、リベルが雷魔法を放ちキラキラとした星が降ってくるようになった。周りはその光景に声が出ないようだった。俺とリベルはハイタッチをした。
「二人とも使い魔競技会楽しみにしてるよ!」
鼻息を荒くしたリタ先生が言ってきた。俺たちはその言葉に対して元気に返事をした。周りは俺たちに負けじと頑張っていた。俺はその魔法一つ一つを観察し自分の物にした。
次回もリフォンの猫生をお楽しみに。