26話 魔法検査
異世界に転生した俺はリフォンという名を貰い猫生を送る事になった。でも優雅に生きて死ぬだけでは面白く無い。異世界に転生したのに勿体無い。異世界を思う存分堪能してやる!
「おはよー。今日は授業は無しで魔法検査があるから一限が始まる前に体育館に行くように。」
今日のホームルームはいつも以上に短かった。
「やっと魔法検査だ!これで俺の才能が分かるぜ!」
ターガーのテンションが異様に高い。魔法検査でそんなに何かが変わるわけでも無いだろうに。
「魔法検査って使い魔はやるのかな?」
「さぁ?どうだろうな。でもやってくれるんならやって欲しいな。」
アインとワーナーが使い魔の魔法検査について話している。もし検査を受けるのが強制なら俺はヤバいかもしれない。女神の加護と猫の神様の加護火、水、光、闇の四種類の魔法適性。ヤバいこんなの知れ渡ったら絶対誘拐されたり実験されたりする。これだけは絶対に避けなくてはならない。先日魔神教団の一件があったから余計に怖い。
(リベル俺魔法検査の間逃げてても良いか?)
(え?逃げるって何で?)
(俺の魔法適性が知られたらまずいだろ?)
(確かにまずいね。でも強制だった場合どうしようか学園長に掛け合ってみる?)
(強制だったらそうする。とりあえず俺は逃げるか隠れてても良いよな?)
(うん。リーン兄さんの所にでも行ってきたら?)
(そうする。)
リーンは学園に三年通ってるって言ってたから今は四年生のはずだ。だから西棟に行かなくては。でもそれまでに誰かに見つかったりどうしよう。俺は小さい頭をフル回転させながら考えた。学園長室なら誰かにバレる事も無いし今回の事を聞ける。俺は早速行動に移した。
(学園長室に避難したついでに魔法検査の事聞いてくる。リベルの結果は寮の部屋で聞かせてくれ。それじゃあ!)
俺はリベルの返事を聞かずに学園長室に向かった。学園長室がある塔まで誰にもバレる事無く辿り着いた。
今から塔を登るとなると大変だが魔法の上手い活用法が思いつくかもしれない場所なのでありがたく登る事にした。前回は水魔法でサーフィンの様にしたが今回も同じでは面白く無いので今回は火魔法を使う事にした。今回は口から火を吐きその反作用で体を上に持ち上げて階段を無視する方法にした。言うは易し行うは難しとはよく言ったものだ。自分の体を持ち上げるぐらい火を吐くと階段が焦げてしまいそうだ。でも威力を弱めると自分の体が持ち上がらない。俺は試行錯誤を続けたが上手くいかなかった。俺は火魔法を諦めて水魔法で同じ事をした。その結果火魔法とは比べ物にならないぐらい楽に事が進んだ。火魔法を攻撃以外に使うのはかなり厳しい事が分かった。
「ニャーニャー!」
俺は部屋にいるであろう学園長に届くように大きな声で言った。
「やっと来たか。下でずーっと何かしておるから気になって仕方なかったわ。今回はどうした?」
「魔法検査の事です。俺の魔法適性も分かるような魔法検査であった場合流石に学園長以外にも知られる事になったらまずいと思ったんです。だから魔法検査を受けないためと魔法検査は使い魔もしなくてはいけないのかと、もししなくてはいけないんだったら学園長にお願いしたいと考えているのでそのお願いに来ました。」
「そう言う事じゃったか。まず魔法検査は生徒は受けなくてはならんが、使い魔は受けても受けなくても良い。でもその場にいたら受けさせられたであろうからここに来たのは正解じゃ。ちなみに魔法検査は魔法の才能と剣術の才能など様々な事が分かるから使い魔も受けさせる生徒は多いんじゃ。もし受けるならワシが検査するぞ。こんなところで良いかの?」
「ありがとうございます学園長。ちなみにその魔法の才能とかはどういった区分なんですか?」
「上からブラック、レッド、イエロー、ホワイトじゃ。」
「魔法防護と逆だな。どっちかって言うと魔物の方に近いな。」
「そうじゃな。」
俺が学園長と話しているとサラーマが目を覚ました。サラーマは俺に挨拶をするように鼻と鼻をくっつけた。
「起こしてしまったかな?」
「クゥーン。」
サラーマは甘えるように学園長の膝の上に頭を置いた。学園長はサラーマを嬉しそうに撫でている。前より更に愛情深くなったのが見てとれる。
「リフォン君も撫でようか?」
「じゃ、じゃあお言葉に甘えて。」
俺は少し驚いたが学園長に撫でられた。学園長の手はシワシワで老いを感じる手だがそれ以上に愛情を感じる手だった。
「そうじゃ、リベル君は魔法競技部に入る事は考えてくれておるかな?」
「ああー。入学してから結構バタバタしてたから考えれてないかもしれない。今日聞いてみるよ。」
「そうか。部活対抗祭は使い魔競技会よりかなり後だから時間はあると伝えてくれ。」
「分かった。」
俺は眠くなり大きなあくびをした。
「寝るか?」
「そうさせてもらうよ。」
俺は学園長の膝の上で撫でられながら眠りについた。
俺は久しぶりに夢を見たと思ったけど違った。
「この間ぶりですね。今回は私が暇なので呼びました。」
「寝てる時ぐらいゆっくりさせて欲しいのですが…」
「私は女神なのですよ!人間の分際で逆らうんじゃありません!」
そっぽを向きながらそう言う女神にほんの少しだけ萌えという感情を覚えた。
「暇なのでしたら世間話でもしますか?」
「そうしてくださるとありがたいわ。」
「始まる前に一つ、二時間後には起こしてくださいね。」
「分かったわ。」
「女神様って俺たちの世界の事見てますか?」
「見てないわ。」
「なら俺たちの世界の話をしましょう。まずは俺が召喚された家族からです。主人のリベルは天才でもあり努力家でもあります。なので普通の人は敵いません。そしてそのリベルの両親はどちらもかなりの実力者で今は敵いませんが将来的にはリベルが追い越すでしょう。そして兄のリーンです。リーンもリベルには劣りますが天才で努力家です。リベルの良きライバルとなっています。」
「あなたリベル大好きなのね。」
「あんなに優しくて顔が良くて天才で努力家な人いませんからね。男の俺でも惚れてしまいますよ。」
「続けて。」
俺は何か言われると思っていたが何も言われなくて拍子抜けだ。
「わ、分かりました。ならクラスメイトを紹介します。ハーリーとハリスです。彼女らは自分たちの境遇を跳ね除けて学園に合格するぐらい努力をしてきた素晴らしい人材です。ナサリーはプライドが高く人とあまり関わりませんが、心の内では実力者の事は認めているタイプだと思います。アインとワーナーは俺を執拗に構ってきます。あちらが構いたいからしてきてるのですが使い魔に対する愛情は確かなものです。メアリーは毎日光魔法を勉強するぐらい王国魔法師団に入りたがっています。ソフィーはアイテム製造士になるために授業でアイテムが使われるたびに熱心にそのアイテムについて勉強しています。ラーヤは自分の氷魔法に誇りを持っておりその氷魔法がどこまでのものになるのかが見ものです。 ターガーは王都魔法研究会に入るために魔法学を熱心に勉強しています。彼は大物になるでしょう。カナタはおそらく魔法剣士になるでしょう。彼は初めて木剣に魔法を流した際に凄まじい才能を見せていたので成長が楽しみです。ハンスとヤハスは今のところ特にこれと言った事がないので何も言えない感じです。」
女神は何も言わずに俯いている。俺はおかしいと思い女神の肩を揺らした。
「あれ?終わった?」
女神は寝ていたようだ。自分が世間話してくれって言うからしたのに寝ているなんてと思ったが、女神には加護や転生といった借りがたくさんあるから怒りを収めた。
「もう良いでしょう?起こさせてください。」
「分かったわ。また呼ぶかもしれないから面白い話用意しておいてね。」
「分かりましたよ。」
俺は嫌々ながらも返事をした。
「起きたか。もうすぐ二限も終えるから寮に戻るか?」
「ああ。ありがとう学園長。部活の話リベルにしておくね。」
「入る事を決めたらマリー先生から入部届をもらってくれ。」
「はーい。」
俺は学園長から出て螺旋階段の中央の空いている所から落ちた。塔の中を水で満たして水中にいる事でスピーディに降りれる寸法だ。俺はどんどん水位を下げて下に降りた。濡れてしまったから火魔法で乾かし寮に戻った。
「おかえり。」
「ニャ。」
(どうだった?)
(検査受けなくていいって。それと学園長が魔法競技部に入らないかって。)
(そんな話あったね。いろんな事が起こりすぎてすっかり忘れちゃってた。)
(入るのならマリー先生に入部届もらってだって。)
(分かった。それより僕の検査結果聞く?)
(うん。)
俺はリベルの事を一番近くで見てきたから結果が良い事は分かっていたからあまり乗り気ではないが聞く事にした。
(まず火はレッドで、水はイエロー、風、氷はレッド、雷はブラックだった!光と闇はホワイトだったよ。でも剣術はレッドで使い魔はブラックだった!どう?凄くない?)
(凄いけどまぁ知ってたって感じだな。風と氷は魔法適性を伸ばしたらそこまでいけるよって感じか?)
(よく分かるね!僕だって最初は首を傾げたのに。流石僕のリフォンだね。)
そう言うとリベルは俺を抱き上げて俺の腹に顔を埋め猫吸いをした。俺はその間もう一度リベルの検査結果を吟味した。光と闇はダメだけど火、風、氷はレッドで雷はブラックしかも剣術はレッドで使い魔もブラック。リベルが主人公なんじゃないかと思ったけど誰だって自分の人生では自分が主人公なんだから気にしないようにした。
(ねぇリベル俺も魔法検査して欲しい?やるなら学園長がやってくれるらしい。)
リベルは少し考えて答えを出した。
(別にいいや。リフォンの事は僕だけが分かってたら良いから。)
(俺のこと大好きだな。)
(リフォンもね。)
俺たちその後もずっと部屋でイチャイチャし続けた。
次回もリフォンの猫生をお楽しみに。