241話 集合
俺とファラブの人たちが訓練を共にしてから十日ほど経った。カサムラーの屋敷には俺たちと時折帰ってくるルナとカサムラー、いつもいるリヴ、クルネ、リン、クフォン以外は誰もいない。リベルたちは各自戦闘を共にする国の部隊と訓練しているのだ。流石にしばらく会っていないとどんなことをしているのか気になり始めてきた。もうそろそろみんなと会いたくなり俺はみんなを集合させることにした。と言っても、俺たちだけで成果報告をしても意味がないから、各国の指揮官も連れて行くのは忘れないようにした。俺はまずどこから行こうかと考えたが、別にどこから行っても変わらないかと適当に思い浮かんだ魔族の国から行くことにした。
俺がテレポートで魔族の国に着くと、いつも通りの日常が広がっていた。いろんな人たちが楽しく話し合ったり子どもたちが遊んでいる。そんな日常だ。この日常を守るために俺たちは魔神と戦うのだと思うと複雑な思いが込み上げてきた。俺たちが魔神から大勢を守らなくてはいけないという重圧、魔神を復活させる魔神教団に対する怒り、もし魔神に敗北したらという不安、そのような感情が俺の胸の中に渦巻いていた。そんな思いを胸に冒険者ギルドまで歩いているとヒューの大声が聞こえてきた。
「あはは! お前ら最高だな!」
俺はヒューがこの訓練で何をしていたのか知らないが、随分と打ち解けたようでホッとした。魔族の国の冒険者たちはかなりの戦力になるはずだと思ってヒューに任せて正解だったなと確信してギルドの扉を開けると、中から今まで嗅いだことがないほどのお酒の匂いが充満していた。どうやらヒューはここの冒険者たちと打ち解け過ぎてたらふくお酒を呑んでいたようだ。俺がギルドの扉を開けたことにも気づかないぐらいヒューは酔っ払って周りの冒険者と楽しそうに話していた。俺がヒューに近づくと魔族の国の指揮官として来ていた十桀のマザブートが俺に気づいた。マザブートはどこか気まずそうにしていた。ヒューはそんなマザブートを気にも留めずお酒を呑んでいた。俺はそんなヒューの真後ろに立った。周りにいた冒険者も俺に気がついたのか一瞬にしてギルド内は静まり返った。
「おい! みんなどうしたんだ? そんな急に黙って」
ヒューは未だに俺に気づいておらず俺はガツンと言うしかないなと確信した。俺は自分とヒューの二人だけを風魔法で囲んだ。そして、風魔法で声量を大きくしてヒューに言った。
『随分と楽しそうですね! いつ魔神が復活するかも分からない状況で! この二週間がどれほど貴重だったか分かってるのか!? 酒なんて呑んでないで少しでも冒険者たちに戦い方と魔法を教えろ!』
自分とヒューの周りを囲んでいた風魔法を消し冒険者たちにも言った。
「酒を呑むのは良いけど流石に呑み過ぎだ。もう少し緊張感を持て。それとヒュー、成果を報告してもらうことにしたから屋敷に戻れ。楽しむのは良いけど、きちんと自制しろ。分かったな?」
「すまなかった……」
俺がヒューに問うとヒューは女性口調ではなく、素の口調で謝った。おそらく本気で反省しているのだと思い俺はそれ以上言わないようにした。次はリベルがいるエクサフォン国に行くことにした。魔族の国からエクサフォン国は案外近いので飛んで行くことにした。その方が魔力を節約できるからだ。エクサフォン国は広いからどこにいるのか分からないだろうなと思ったが、ルナとのテレパシーの話を思い出した。俺たちがテレパシーをよく使っていた頃よりもかなり成長しているためテレパシーの範囲が伸びていることを信じて、リベルに対する思いを込めてテレパシーを使ってみた。
(リベルー聞こえてるー?)
(え、リフォン!? ど、どうしたのってかテレパシー聞こえるってことは近くにいるの!?)
リベルはかなり動揺しており、落ち着かせるのと状況を教えるために一から説明することにした。
(まずは落ち着いて。俺は今王都にいるんだけど、リベルは今どこにいる?)
(え、屋敷だけど……)
(なんでこんなに離れてもテレパシーが出来るのかっていうのはね、ルナから教えてもらったんだけど、当人同士、まぁ俺たちが前よりも成長してテレパシーも広範囲で使えるようになってるの。それで、俺がここに来たのはもうそろそろ一度成果を報告した方が良いかなって思ったからだ。とりあえずそういうことだから迎えに行くね)
(わ、分かった。待ってる)
俺が屋敷に向かうと屋敷の外にたくさんの人がいた。久しぶりと言っても特認実習の時よりは早い帰宅だったが、グロウとマイヤー、リーン、ガイン、シータ、執事、メイドたちが出迎えてくれた。俺は懐かしい面々に自然と口角が上がってしまった。俺がみんなの前に降り立つとグロウとマイヤーが抱きついて来た。リーン、ガイン、シータは俺の人間の姿を見慣れていないが、リベルとそっくりな俺に親近感を覚えたのか微笑んでくれた。
「ただいま」
「「「おかえり」」」
俺はしばらくみんなといろんな話をしたかったが、今はそんなことをしている場合ではなく、みんなと抱擁を交わし少しだけ話をすることにした。
「リベルから聞いてると思うけど一緒に戦ってくれるよね?」
俺の問いにみんなは各々良い返事をしてくれた。俺はみんなの返事にホッとした。これが今生の別れになることはないと思うと少しだけ気が楽になった。そんな感じでみんなと少し雑談をしてリベルと共にジャドゥー帝国に向かうことにした。ジャドゥー帝国に入るより前にユディがいるであろう部隊が国の外で実戦訓練をしているのを見つけた。案の定ユディがいたので部隊の人にきちんと説明してユディを返してもらうことにした。ジャドゥー帝国からアイベンティーリまではかなり距離があるのでテレポートをすることにした。テレポートに成功し早速イシュとルリを探そうとしたが、リベルとユディはテレポートの新感覚に興奮しており二人でそのことについて語っていた。俺は早く二人を連れて来ようと国を上空から見渡した。どうやら国王が住んでいるであろう大きな城の中で訓練をしているようだった。俺はリベルとユディを連れて城の中に入った。
「リフォン! どうしたの?」
ルリが俺に問うてきた。俺はきちんと説明してカサムラーの屋敷に戻ることを伝えた。ルリは最後にと部隊の人たちに挨拶をして別れを告げた。アイベンティーリは妖精の国であることから部隊の人皆が妖精を連れていて特色が出ているなと思った。イシュは特に挨拶などもすることはなかった。素っ気ないなと思ったが、イシュにとっては本来の仲間の方が大切だろうから特に思うことはないのだろう。テレポートでカサムラーの屋敷まで戻り、みんなから成果報告を聞くだけとなった。
次回もお楽しみに




