238話 訓練
組み合わせが決まった俺たちはこれからどうしようか話し合った。指揮官の中には今から訓練した方が良いという者もいれば、そんなに急いでは空回りするだけだと落ち着いて行動することを推奨する者もいた。国によって考え方、戦い方、倫理観など全てが異なる故、衝突は避けられない。かと言って、放置していれば関係悪化に繋がりかねない。論理的思考回路を持っていればこの場を綺麗に収められるんだろうなと思っていると、リベルが何気なく言った一言でその場は収まった。
「国によって訓練を共にする人が違うんだからその人と話し合えば?」
その場にいた皆がリベルの言葉に納得した。組み合わせを決めたのだからそれ以外の人は特段関わりはない。各国の部隊同士は、緊急事態に助けてくれるかどうかぐらいの関わりしかない。戦場を共にすることはあるだろうが、直接他部隊の陣形にちょっかいをかけるようなことはないだろうから基本は自分たちの心配だけしていれば良いのだ。皆そのことをすっかり忘れていて話し合いをしていたのだ。何ともマヌケというかおっちょこちょいというか、まぁ誰だって抜けているところはあるだろうから人は助け合って生きているのだと気付かされた。
「それじゃあ指揮官と各自話し合って。それで決まったら全体に報告して、各自行動に移すこと。全体に報告する理由としては、情報を全員に伝えることで間違いを防いだり心配事を減らすためだ」
俺の言葉に皆返事をして指揮官と話し合いを始めた。
「リフォン殿、我らはどう致しましょう?」
「そっかファラブの人たちは今こっちに向かってる途中なんだよね。疲れているだろうからしばらく訓練はできないかな?」
「おそらくはそうだと思います……」
俺がファリスに問うとファリスは何とも言えない面持ちで答えた。ファラブの仲間を心配する気持ちと今すぐにでも訓練を始めて魔神に対抗できるようにしなくてはと急いでる気持ちがあるのだろう。俺はそんなファリスを気遣うように言った。
「そんなに心配しなくても大丈夫だ。それともファリスの仲間は信用できないようなやつらなのか?」
「そ、そんなことはございません! ですが、ファラブからここまで来るのにとてつもない労力を要するでしょうから……」
やはり仲間が心配なのかファリスの表情は暗い。俺はそんなファリスを見ていられず良い提案をすることにした。
「俺がファラブの人たちを風魔法で連れて来ようか?」
「そ、そんなことができるんですか?!」
ファリスの表情は一気に明るくなり顔を前に突き出して聞いてきた。俺はこんなファリス見たことがなく少し動揺したが答えた。
「もちろんだ。手荒な連れてき方にはなるが、俺の風魔法で、全員を桶で水を掬うようにしたらすぐだ。まぁ安全を保証できるものではないから心配だけどな」
「お願いできませんか?」
ファリスの真剣な表情を見て本気なのだと確信して俺はその思いに応えねばと思い決断した。
「分かった。それじゃあ行ってくるからしばらく待っててくれ。その間に紙にファラブの戦闘陣形を描いててくれ」
「分かりました。お気をつけて」
俺はファリスに見送られてファラブの方角に飛んだ。かなりのスピードで飛んでいると視界の奥の方に無数の人がいることに気がついた。俺はファラブの人たちだと確信してすぐに近づいた。俺の予想は当たっており疲れはありながらも懸命に歩くファラブの人たちを見つけた。俺はすぐに先頭に降り立った。
「リフォン殿ではないか!」
ファラオが先頭を歩いておりすぐに俺のことに気がついてくれた。ファラオの言葉にファラブの人たちは歓喜しており俺は救世主にでもなったように感じた。
「どうしたんだ? 悪魔の国までまだ遠いのに迎えに来てくれたのか? それとも我らが遅すぎたのか?」
ファラオの疑問に俺は答えた。
「決して遅すぎたわけではありません。こちらとしても一秒たりとも時間を無駄にしたくないと行動した結果、予想以上に早くことが進んでいるので皆さんを迎えに来たわけです」
俺の言葉にファラブの人たちは一層歓喜した。
「というわけですので、武具や金属類は一箇所にまとめてください。怪我をされてはいけないので。みなさんはなるべく小さく集まってください」
俺の呼びかけにファラブの人たちは迅速に行動してくれた。すぐに用意は整い俺はファラブの人たちに説明した。
「今から皆さんを風魔法で悪魔の国まで連れて行きます。手荒な運び方ですが、これが最も効率が良いのでこれで行きます。なるべく皆さんの負担にならないようにしますのでしばらくの間耐えてください。準備は良いですか?」
俺が問うと皆がファラオの身の安全を気にし始めた。ファラオ自身は大丈夫だと言っているが、皆はそうは思っておらずどうにかできないかと俺に聞いてきた。俺はリベルたちと飛ぶ時のようにファラオと手を繋ぎ安全を確保した。ファラブの人たちはこれなら大丈夫だと言ってくれ出発した。下を見ながら飛んでいると、ファラブの人たちは初めての感覚にとても興奮していた。爆風を一身に浴びて過ぎ去る景色の速さにとても良いリアクションをしてくれた。窮屈そうにもしておらず、武具などもどこかに飛んで行ったりもしてなかった。思いの外この移動方法は効率的だと気がついた。しばらく飛んでいると悪魔の国が見えてきた。俺はファラブの人たちの滞在場所などカサムラーに確認していないのに気がついたが、後で良いだろうと思い、屋敷までファラブの人たちを連れて行った。
「ファリス!」
屋敷の外にファリスが出てきておりファラオとの再会を喜んでいた。ファラブの人たちはさっきの移動方法の余韻を味わっており愉快な集団だなと思った。屋敷はそれほど大きくないのでひとまず俺の風魔法で作ったベッドを設置してファラブの人たちが休憩できるスペースを作った。ファラブの人たちはそれにも喜んでくれていて疲れが溜まっていた人はすぐに眠ってしまった。俺はその間にカサムラーにファラブの人たちの休憩スペースを確認した。カサムラーも特に決めておらず悪魔の国の宿にでも泊めておけとの返答が帰ってきた。それはないだろと思ったが、それしか方法はなく明日からそうすることにした。今日はゆっくり休んでもらおうと訓練は明日からすることにした。
次回もお楽しみに




