236話 一時の休息
各国に協力要請をしてカサムラーの屋敷に帰って来た翌日、目を覚ますと昼過ぎだった。寝ずに各国を飛び回っていたせいでかなり体力が消耗したのだろう。俺はお腹が空いたなと思いダイニングに向かうと、カサムラーが一人で紅茶を飲んでいた。昼過ぎだったことから午後のティータイムとでも言うべきだろうか。
「昼食ならそこにある。今は少し休め」
カサムラーの優しい言葉に俺は素直に甘えることにした。火魔法で昼食を温め適温になったところで食べ始めた。他のみんなは起きているのだろうかなどと考えているとカサムラーが話し始めた。
「皆はまだ寝ている。世界中を飛び回らせてすまないな。そして、ご苦労だった。まだしばらくは大丈夫そうだ。と言っても、いつ魔神教団が動くかは定かではないがな」
今は少しだけ緊張感がほぐれていたが、やはり魔神教団がいつ動き出すのか分からないという危機感は目前にあり、昼食を食べる手を止めてしまった。
「すまない。今はタイミングが悪かったな。後でゆっくり話そう。今回の詳細についても聞いておきたいからな」
「分かった。みんなが起きてから話すよ」
俺が昼食を食べ終えゆっくりしているとみんなが目の下にくまを作り寝不足なことがハッキリ分かる状態でやって来た。
「みんなお疲れ様」
俺がみんなに労いの言葉をかけるとみんなは覇気のない声で返事をしてくれた。今までダンジョンなどでハードなスケジュールなことは何度かあったが、今回のように寝ずにということはなかったためみんなしんどそうだった。でも、俺はなぜか元気だった。何でだろうと思い返してみると、女神が何かしてくれたのかなということしか思い浮かばなかった。俺に女神が託してくれた時、俺は目を瞑っており何をされたのか知らない。もしかしたら女神の加護を一段階上のものにしてくれたとかだろうかなどと考えていると、みんな昼食を食べ終えたようで今回の件の詳細を擦り合わせることになった。
「それじゃあまぁ、俺から話そうか。俺たちが魔族の国に行ったら結構な数の冒険者がいて、その中の十人は俺とユディが稽古をつけた十人だったんだ。その十人は十桀って言われててそのみんなのおかげで何とか魔族の国の冒険者たちを説得できたよ。それで、みんな魔の付く者だから俺が光魔法で魔神に従属しないようにしてあげるってことになった。次にアイベンティーリに向かったんだけど、ここはルリにお願いしようかな」
俺たちがアイベンティーリに着いた時にはルリが全て終わらせており何も話せなかったためルリにパスした。
「お任せを。私はヒューとファラブに行く予定だったんだけど、ヒューにアイベンティーリは妖精が沢山いる国ってことを話したら、じゃあアプサラスってことを全面に押し出したらいけるんじゃね? ってヒューが判断して私をアイベンティーリに置いて行ったわけ。それで、私が普通に国王の所に向かおうとしてたら、私が来たのを知った国王が自ら会いに来て、交渉してきたから魔神のことを話したら了承してくれたってわけ。ちなみに、その交渉内容は私が時々アイベンティーリに行くってだけ。それじゃあ次はヒューかな?」
「分かった。私がファラブに着いたら、ファラオたちが歓迎してくれたけど、魔神の件を話したら血相を変えていろんなことを聞かれて、とりあえず全部話したの。そうしたらファラオが自国の騎士たちを集めて、世界の危機に立ち向かわないわけないでしょってかなり乗り気だったよ。ファラブはここからかなり離れてるから、ここの場所を教えて向かってきてもらってるとこ。でも、多分全速力で行っても二週間はかかるって」
ヒューはこんな時でもきちんと女性として振る舞っており、女性として生きるということに嘘偽りはなかったんだなと再認識した。
「それじゃあ次は僕良いかな。僕たちはエクサフォン国に行って、お父様とお母様に事情を説明して、僕とリフォンが通ってた学園の学園長にも説明して、学園長と共に国王に魔神の話をしに行って、協力してくれることになったよ。それで、次はジャドゥー帝国に行ったけど、これはリフォンにパスしようかな」
再び俺の番が戻ってきて俺は、カミーヤとの関係は伏せながら話を始めた。
「話せば長くなるんだが、今は簡潔に話すけど、俺がジャドゥー帝国で奴隷をやってた時に世話になった人が国お偉いさんの家系で、その人に頼んで協力要請しているところだ。正直行って協力してくれない可能性の方が高い。もしかしたら魔神について確証が持てずにいる状態で、魔神が復活したら加勢しに来てくれるぐらいだと思ってる。最後はイシュだな」
「ヴォディカ国は防衛に専念するとのことだった。だから、冒険者だった頃の伝手を使って冒険者たちに協力してもらえるように説得したよ。あまり数は多くないが、トカ・リテロも加勢してくれるから何とかって感じだな。それより、私は仲間を探しに行きたい。少しだけ時間をくれないか? 勿論、魔神が復活したら仲間はすぐに駆けつけると思うが、皆心の準備が必要だろうから……」
どうしてもイシュが不憫でならなかった俺は一つ提案をしてあげた。
「俺がテレポートで各国に張り紙でもしてこようか?」
俺の言葉にみんなが一斉にこちらを見てきた。俺は何だ何だと後退りしたが、リベルの一言でその場の状況がやっと理解できた。
「え……リフォンいつの間にテレポートなんてできるようになったの……?」
俺はテレポートのことについて話していないのをすっかり忘れていた。というか、他の誰かが話してくれているものだと思っていたから言わなかったのだ。俺はえへへと笑いながら話した。
「えーと、魔神教団本拠地からリヴたちを救い出す時に一か八かでやったらできたんだ。それで、暴れるヒューもテレポートでこっちに連れ帰ってきたの。まだ一人でテレポートしたことないからどのぐらい魔力使うのか分からないけど、それが最速だろうなって思って」
俺がそう言うと、みんなの反応は何だか呆れたような感じだった。小さくため息をついて首を横に振ったり苦笑いしたりといった感じだった。でも、イシュだけは違った。
「紙とペンを貸してくれ。仲間に宛てた張り紙を書く」
みんな仕方がないなとイシュの提案を受け入れた。俺はテレポートの実験もできて一石二鳥だと頑張った。イシュから張り紙を貰い、俺は各国にテレポートをした。それなりに近い魔族の国ではそれほど魔力消費量は多くなかったが、ヴォディカ国やファラブといった遠い国は消費量はかなり多かった。でも、魔力切れになるほどではなく、おそらく自分と一緒にテレポートさせる対象によって変わってくるのだろう。ヒューをテレポートさせたことによって魔力切れになったのだからこの推測は当たっているだろう。テレポートを使ったことにより一国の滞在時間は張り紙を張る一分程度となり十分で全ての作業を終わらせた。でも、魔力消費量はバカにならず、夕方であるにもかかわらず軽食を食べて眠ることにした。イシュに感謝を伝えられ俺はいいよと優しく返した。
次回もお楽しみに




