22話 待ち侘びた国王推薦
異世界に転生した俺はリフォンという名を貰い猫生を送る事になった。でも優雅に生きて死ぬだけでは面白く無い。異世界に転生したのに勿体無い。異世界を思う存分堪能してやる!
今日は土曜日学園は休みだ。だから俺は昼まで寝るつもりでいたのにリベルに叩き起こされた。
「リフォン!リフォン!起きて!」
(何だよ。)
俺は怒りながら言った。
「これ見て!」
そう言いながら俺の目の前に一通の手紙を突き出した。そこには国王推薦採用者と書かれていた。でも俺はおかしくないかと思った。前は先生から直接教えられると記憶しているからだ。俺はその事をリベルに伝えた。
(前聞いた時は国王推薦って先生から直接教えられるんだろ?なのに何で手紙なんだ?)
(た…確かに。これはイタズラ?)
俺は屋敷にいた時の光景がフラッシュバックした。
(前みたいに手紙から火柱出たりしないよな?)
(し、しないんじゃないかな?)
とても強張った顔でリベルは言う。俺は魔法感知に疎いのか誰がどこで魔法を使ったのかや魔法の痕跡は分からないから本物か偽物かの確証が持てない。
(マリー先生に来てもらおう。)
(その方が安全だよね?僕たちが何かするより。)
(うん。俺たちは触れないようにしよう。)
俺たちは走って部屋から出て教員室に行った。
「失礼します。マリー先生は居られますか?」
リベルの剣幕に初めて見る先生方が驚いていた。そんな中ハイネ先生とリタ先生が俺たちのところに来てくれた。
「そんなに慌ててどうしたの?」
「何があったんだい?」
二人はとても優しく俺たちの状況を聞いてくれた。
「僕たちの部屋に一通の手紙が届いていたんです。その手紙は国王推薦採用者と書かれていたんです。でも以前に国王推薦は先生方から直接教えてもらうと聞いていたので、その手紙に何かしらの魔法であったりイタズラがあるかもしれないと思って魔法感知に優れている先生に頼ろうとしたんです。」
「なるほどそう言う事か。ならシュリーター先生だね。」
「呼んできます。」
リタ先生が教員室からどこかに走って向かった。リベルはリタ先生がどこに向かったのかハイネ先生に聞いた。
「リタ先生はどこに向かったんですか?」
「西棟だよ。シュリーター先生は四年から六年の担当だからね。西棟にも教員室があるからそっちに行ったんだ。」
生徒数が千を超えるからその分先生も多いのだろう。
「それよりさっきの話をもう少し詳しく教えてくれないか?」
「と言ってもさっき話したのが全てです。」
「君たちは本当にすごいね。」
ハイネ先生が俺たちの頭を優しく撫でる。先生からしたら俺たちは年齢的にも子供みたいに感じるのだろう。
「リベル君!連れて来たよ。」
「君がリベル君だね?早速寮の部屋に案内してくれ。」
「分かりました。」
俺たちは急いで寮の部屋に蜻蛉返りした。
「ここです。」
俺たちは部屋の外で待つ事にした。
「君たちの勘は素晴らしいね。この手紙には以前マリー先生を襲った魔王教団と同じ魔力が感じられる。これは私たち教師がきちんと処理しよう。そしてこの事は学園長に伝え国王にも伝わるだろう。もしかしたら重要参考人として国王に進言する事になるかもしれないから心しててね。」
シュリーター先生は風魔法で手紙を浮かしながら寮から出て行った。
(リフォンありがとう。僕はいつも君に助けられてばかりだね…)
リベルが落ち込んでしまった。下手に何かを言うとかえってリベルを傷つけてしまいかねないから何も言わずにリベルの膝の上に座り甘えるようにした。
「えへへ…」
リベルのその小さな声を俺は聞き逃さなかった。
(おい今のえへへって何だ!)
リベルは口笛を吹いて誤魔化した。俺が心配していたのがアホらしくなって来た。俺はリベルの太腿に甘噛みより少し強く噛みついてやった。
(怒ってる?)
リベルが俺にニヤけながら言う。
(怒ってるよ!)
俺はそのまましばらく噛み続けた。その間もリベルは俺の頭を撫でて続けた。
「イチャイチャしてるところ申し訳ないけどちょっと良いかな?」
ハイネ先生が開いた扉の前にいた。俺たちは扉を閉めずにイチャイチャしていたのに気づき赤面した。
「さっきの国王推薦の話だけど、国王推薦は魔法検査を受けてから学園長によって伝えられるから覚えておいてね。」
「は、はい…」
日本の学校ならそういう特別な待遇のものは入学より前に決まるから新感覚だ。それより魔法診断というものが気になる。健康診断のように自分の魔法の事を色々検査するのだろうか。
(リベル?おーい。)
俺のテレパシーにリベルが応えない。どうしてだと焦ったがリベルの顔を見て安心した。
「……」
俺を膝に乗せながら時が止まったように寝ていると思う。さっきまではあんなに元気そうだったのに急に寝るなんて変だと思った。
「あーあー聞こえてます?」
随分と懐かしい声が聞こえて来た。
「女神様ですか?」
「聞こえているようですね。」
「ところでどうしたんですか?」
「実はですね…魔神が復活しそうなんですよ。」
「???」
俺の頭の上にも疑問符が浮いていたであろう。
「困惑するのも無理ありません。とりあえず簡潔に話します。魔神と言うのは魔人と呼ばれる人たちの神様です。私みたいな。」
女神様は俺を見ながらウィンクをしていたが俺は決して褒めたりはせず感情を無にして応えた。
「続けてください。」
「調子狂いますね…とりあえずその魔神は人間が嫌いで人間と敵対していました。その結果人間と魔人の全面戦争が勃発しました。そこで魔神は人間によって殺されたんです。それからは人間は平和に過ごせていたんですが、魔人たちは迫害されてしまったんです。魔神を信仰してると言う理由で。魔人たちは自由な生活を取り戻したいのか人間に復讐したいのかは分かりませんが魔神を復活させようとしてるのです。あなたにはそれを阻止して欲しいのです。」
この世界に来て一年も経ってないしかも今魔法を学んでる俺に魔神が復活するのを阻止して欲しいなんてどういう思考回路してるのか見てやりたくなったが、女神だし人間界に干渉しすぎるのはダメなんだろう。今の態度を見るに女神は人間サイドの神のようだから人間を守るために俺に無理難題を押し付けたのだろう。
「俺にそんな事出来るんですか?絶対無理だと思いますけど…」
「大丈夫です。あなたには私の加護と猫の神様の加護があるんですから。」
鼻を高くして言う女神に俺は今思ってる事を言った。
「その加護実感した事ないです。」
「じゃあ実感する良い機会ですね!それじゃあお願いしますね!」
「ちょっとまっ…」
次回もリフォンの猫生をお楽しみに。