21話 使い魔学
異世界に転生した俺はリフォンという名を貰い猫生を送る事になった。でも優雅に生きて死ぬだけでは面白く無い。異世界に転生したのに勿体無い。異世界を思う存分堪能してやる!
「おはよ。」
(おはよ。今日の予定は?)
(今日は使い魔学だよ。)
(ん。あんがと。)
ようやく使い魔学だ。使い魔については知らない事が多い。使い魔学を学ぶ事は自分の事を学ぶのと同義だからきちんと頭に入れる事にした。
「朝御飯食べ終わった?なら行くよ。」
「ニャー。」
俺はいつも通りリベルに抱き抱えられ寮の部屋から学園東棟に向かった。その道中でハーリーとハリスと出会った。
「二人ともおはよ。」
「おはよ。」
「ニャ。」
「リフォン!今日は使い魔学だね。どんな事学ぶんだろうね。」
ハリスはとても楽しそうにしている。俺以外の使い魔も自分自身の事はよく知らないようだ。俺は少し安心した。
「四人ともおはよう。」
アインがやってきた。
「「おはよう。」」
「ニャ。」
ハリスはまだ慣れないのかハーリーの後ろに隠れている。
「ハリスちゃんはまだ慣れてくれないか。」
アインは残念そうに言うが顔は笑顔だ。
「楽しそうだな俺たちも混ぜてくれよ。」
そう言うのはいつも通り首にナーガを巻いているワーナーだ。
「おはようワーナー。」
「おはようリベル。何の話してたんだ?初めての使い魔学か?」
「まぁそんなところだね。」
リベルとワーナーはそんな他愛も無い話をしているとホームルームの始まりが近づきみんなで教室に入った。
ホームルームの始まりを告げる鐘が鳴った。
「はーいみんなおはよ。今日は二限とも使い魔学だからリタ先生の指示を聞いてね。魔法競技大会が迫って来てるから各々使う魔法の練習と新しい魔法の練習しとけよー。」
マリー先生はそう言うと教室から出て行った。前より忙しそうに教室を出て行かなかったから実験が順調に進んでいるのだろう。
「リフォン。撫でて良い?」
「ニャー…」
俺は明らかに嫌そうな顔をしながら言った。
「ごめんなー。でも触らせてなー。」
ワーナーはニヤけながら俺の事を撫で始めた。言葉では謝っておきながら行動には現れていない。
「みんなおはよう。もう授業始まるから席に座ってねー。」
リタ先生がやって来た。学園内では何回も会っているが教室で会うのは初めてだ。
一限の始まりを告げる鐘が鳴った。
「よしまず使い魔召喚をしてない子に聞くね。使い魔欲しい人手挙げて。」
使い魔がいないのは八人だが手を挙げたのはヤハスとソフィーだ。
「じゃあ今手を挙げなかった子に聞くね。使い魔召喚の才能があるとしたら使い魔欲しい?」
カナタとラーヤが手を挙げた。
「じゃあ手を挙げなかった子に聞くね。使い魔を欲しく無い理由を教えてくれない?じゃあターガー君。」
「は、はい。俺が使い魔を欲しく無い理由は、自分の魔法の勉強に集中出来なくなると考えているからです。」
「ありがとう。ターガー君の意見は正しい。使い魔を召喚すると絶対と愛情が芽生えてしまう。これは他人の使い魔であっても愛情が芽生えるケースがかなり多い。この理由はまだ分かっていないんだけど私はシンプルに使い魔がかわいいからだと考えるけど、おそらく別の理由があるのだろう。」
俺はこの愛情が芽生えるというのを実感している。俺は親しくも無い初対面の人に必ず撫でられるからだ。
「お?リフォン君思い当たる節があるのかな?」
俺は急に名指しで言われてビックリした。リタ先生と俺の距離は五メートルは離れているのに俺の考えている事を体の動きや表情で読み取ったのだから恐ろしい。
「ニ…ニャー。」
「そうかそうか。君は他の使い魔と比べたら明らかにかわいいから余計にそう思うんだろうね。」
「先生使い魔の特性とかってあるんですか?」
ハンスがリタ先生に聞く。
「そうだね特性か…これは今のところ応えづらいんだよね。有る子もいれば無い子もいる。リフォン君とハリス君は…無理かな?」
「すいません。」
ハーリーがハリスに問いかけた後謝った。
「じゃあアフィー君前に来てくれ。」
アフィーはアインに伝えられた言葉通り教壇に大きな翼を羽ばたかせ飛んで行った。俺はゆっくりと歩いて行った。
「少し撫でさせてもらっても良いかな?」
「ホー」
「ニャ。」
リタ先生は右手で俺を左手でアフィーを撫でた。俺を撫でているリタ先生の手が一瞬ビクッとした気がするけど気のせいだろう。
「ありがとう。何となくだけど分かったよ。アフィー君は翼で巻き起こす風に微量の魔力が含まれているね。それが特性だ。リフォン君は誰からでも愛されるのが特性だね。」
誰からでも愛されるってそれはそれで面倒くさそうな特性だな。気をつけないと愛が重い奴に監禁とかされないか心配だ。
「もう戻って良いよ。こんな感じで使い魔の特性なんかも分かるんだ。やり方は微量の魔力を流してその魔力を自分で回収するんだ。そうしたら魔力に使い魔の情報が刻まれてそれを読み取るって感じだよ。」
この世界の魔力はプラスチックぐらい汎用性が高くて便利だが自分に牙を向く可能性があるのもプラスチックに似ている。
「次は使い魔召喚について教えよう。使い魔召喚は才能が無い者以外しないっていうのが常識だ。それはなぜかと言うと才能が無いと使い魔が主人に従わず攻撃されて使い魔を殺さなくてはならない状況になるからだ。そんな経験をした先人がいたから私たち現代人は平和で安全な世界を生きられているんだよ。」
「先生、なら才能はどれくらいあれば良いんですか?」
「魔法の才能は生まれた時に数値化しただろう?それに載ってるよ。みんな自分の街か村か家で魔法適性検査をやっだろう?それだよ。百がマックスで六十あれば失敗する事はまず無いから四十はあった方が良いかなって私は思うね。」
俺はそれを聞いてリベルはどれぐらいだったのか気になったのでテレパシーで聞いた。
(リベルってどのぐらいだったんだ?)
(僕は八十だよ。すごいでしょ!)
(うん呆れるぐらいすごいよ。)
一限の終わりを告げる鐘が鳴った。
「みんな次の時間は魔法競技室に来てね。」
「「「はーい。」」」
俺たちは魔法競技室に行った。
二限の始まりを告げる鐘が鳴った。
「よしここに十の使い魔がいるから使い魔を持ってない人は相性の良い使い魔を選んで。その使い魔と心を通わせるところから始めるからね。」
リベル、ハーリー、アイン、ワーナーは他のみんなが使い魔を選んでいる間使い魔といちゃついている。俺も例外では無い。
「先生心を通わせるってどうやるんですか?」
ターガーが先生に聞く。おれも気になっていたので助かる。
「使い魔と握手して魔力を流すんだよ。流しすぎると殴られるよ。」
プラスチックの例がここで証明されてしまった。
みんな使い魔と心を通わせて準備が整った。
「みんなオッケーだね。じゃあまずは主人が先に魔法を打ってみて。強くなくて良いからね。」
みんなが魔法競技室のカカシに向かって魔法を打った。俺以外の使い魔はその魔法を見て主人を見る。とても心通わせてますよって感じがして俺がおかしいのではないかと思ってしまう。
「使い魔に魔法を一緒のタイミングで使ってってテレパシーで言ってみて。」
(リフォンは理解できるからいらないもんねー。)
(ってテレパシーしてますよ。)
(あはは。)
リベルは楽しそうに笑った。
「よしみんな順番で魔法打ってみて。先生側から行こうか。」
俺たちは一番最後だ。みんな順調に魔法を一緒に使っている。火と火だったり火と水だったりと様々だ。俺たちはテレパシーなんかせずにアドリブで魔法を一緒に使った。
「はあ!」
リベルが火と雷を打とうとしてるのを確認してから俺は水魔法の準備をした。水を氷柱状にしてスピード特化にした。その水魔法はリベルの魔法より早く届きカカシに水のダメージを与えリベルの火魔法で小さな水蒸気爆発を起こしダメ押しの雷でフィニッシュだ。俺とリベルは何も言わずただ笑い合った。
「す、素晴らしい。リベル君が魔法を発動させようとしたその刹那にリフォン君がリベル君の魔法を把握し、最適解の魔法とその形を選択し相手に最も与えるダメージの大きい選択をした。みんな二人をお手本に取り組むように。」
みんなが再開するとリタ先生は俺たちの元にやって来た。
「二人なら使い魔競技大会優勝間違いなしですね。頑張ってね。」
「ありがとうございます。」
「ニャー。」
俺たちはその言葉を聞けてとても気分が良くなった。その後は調子に乗ってリベルが同じ事をやろうとしたが俺がやる気を出さなかったせいで全然追いつかず先生をガッカリさせた。
二限の終わりを告げる鐘が鳴った。
「みんなここまで。今日使い魔を借りた人はどうする?そのまま使い魔競技大会まで一緒に過ごす?」
学園は使い魔召喚の才能が無い人のために使い魔を貸し出しているようだ。動物を貸し出すというのは倫理観的にどうかと思ったが公平を実現するにはこうするしか無いと割り切った。
「一緒に過ごすわ。」
「俺もー。」
「俺は返します。」
ターガーは自分の意見を変えず使い魔をそばに置くような事はしなかった。ナサリーは使い魔のリスが気に入ったのかずっと肩に乗せたまま人差し指で頭を撫でている。リスもとても心地良さそうだ。
次回もリフォンの猫生をお楽しみに。