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20話 マリー先生復帰

異世界に転生した俺はリフォンという名を貰い猫生を送る事になった。でも優雅に生きて死ぬだけでは面白く無い。異世界に転生したのに勿体無い。異世界を思う存分堪能してやる!

 マリー先生が襲撃に遭ってあら三日が経った。マリー先生の体調が良くなるまで担任はハイネ先生が代わりにやってくれていた。マリー先生の復帰を皆待ち望んでいる。今日もハイネ先生がホームルームにやって来るのとマリー先生への不安感は増すばかりだ。

 ホームルームの始まりを告げる鐘が鳴った。

 しばらく誰も来なかった。クラスのみんなはハイネ先生どうしたんだろうという心配の声やマリー先生が戻って来るのではと期待の声が入り混じっている。その瞬間教室の扉がゆっくりと開いた。みんなは扉に釘付けになった。

「みんなおはよう…心配かけてごめんね。」

 マリー先生の顔色はとても良くこの三日間きちんと休んで疲れも取れたようだ。みんなは一瞬黙り込んだがすぐに様々な言葉を投げかけた。

「先生大丈夫だった?」

「みんな心配したんだよ!」

「リフォンとリベルとメアリーにちゃんとお礼したか?」

「死んでなくて良かった!」

 心配する声やイジる声と十人十色を体現したようなクラスだ。

「みんなもう…もう良いから静かにして。」

 その言葉を聞いた瞬間すぐに喋るのをやめてマリー先生の話に耳を傾ける。前世ではクラスがこういう雰囲気になったらしばらくは喋るのをやめないのが当たり前だと思っていたがこのクラスは先生の一言ですぐに喋るのをやめるから良い意味で驚く。

「えー、今回私が標的になったから助かったけど君たち生徒が標的になったら助かる可能性は低い。今回の件は国王様も重く受け止めており学園の警備の強化と生徒の夜間外出禁止、学園の敷地にアイテムのゴーレムが巡回するという対策を施行する事になった。これは国王様の判断だからきちんと従いなさい。との事です。」

 みんなの反応はこれまた様々だ。仕方ないと頷く者や怖いと怯える者、特に何とも思ってなさそうに何の感情も顔に出さない者などだ。続けてマリー先生が話す。

「続けて今回のような事件が起こる可能性を少しでも減らす為に授業の内容をより本格的なものにするとの事だ。みんなはまだ学園に来て一週間も経っていないのが不幸中の幸いかもしれない。私から言える事は自分の身を自分で守れるぐらい強くなれ。以上だ。」

 マリー先生は今回のことをかなり重く捉えているようだ。真剣な表情と言動が物語っている。

「あっ忘れてた。今日の一限は剣術で二限は魔法演習だ。遅れを取り戻すからビシバシ行くぞ。」

 言い終えるとマリー先生は教室を後にした。

「マリー先生無事で良かったね。」

「リフォンがいなかったらマリー先生はおそらくこの世にいなかったと思う。本当にお手柄だよ。」

 リベルは俺を抱きしめながら言った。ハーリーとハリスもそれに呼応するように俺の頭を撫でた。俺は幸せで喉をゴロゴロと鳴らしていた。俺たちがイチャイチャしていると教室を出ようとするワーナーが言った。

「もうすぐ授業始まるぞ。」

 俺たち四人は急いで剣術指南室に向かった。全速力で走ったから何とか授業の始まりを告げる鐘が鳴る前に着いた。

「四人が遅れそうになるなんて珍しいですね。」

 ガインは微笑みながら言った。

「「あはは…」」

 ハーリーとリベルは何とも言えない言葉を発した。

 授業の始まりを告げる鐘が鳴った。

「それでは今日から授業内容をより本格的なものにするようにと言われましたので実際に剣を打ち込んでみましょう。」

 ガインが手を向けた方向には実技試験で使ったカカシがいた。でもこいつは魔法防護イエローだったはず。そんなにも強度があるカカシを授業のしかも二回目に使用するなんて、本当に本格的で自分の身を守れる術を身につけさせるつもりなんだと実感した。でも俺はそこで一つ疑問に思うことがあった。生徒を守るのは勿論なのだが生徒の使い魔はどうなんだと思った。俺は使い魔については本当に基礎的な事しか知らない。女神様に教えてもらった情報もそこまで詳しくは無い。どれほどのポテンシャルがあるのかや使い魔より先に主人が死んだら使い魔はどうなるのかなど知らない事は山のようにある。リタ先生の使い魔学はきちんと聞いておいた方が良さそうだ。

「はあ!やあ!」

 リベルが必死にカカシに木剣を打ち込んでいる。だがカカシには何も効いていないようだ。それは当たり前だ。ガインから剣術を教えてもらっていたとは言えまだ十二歳の子供だ。

「リベル様手本を見せます。皆さんも見ていてください。」

 そういうガインはリベルたちと同じ木剣を握り呼吸を整える。ガインが握る木剣はうっすらと青白く光っている。

「はあ!」

 ガインがそのうっすらと光った木剣でカカシを切ると胴体に大きな切れ込みが刻まれた。

「このように剣に魔法を込める、これが魔法剣士がやっている事です。私は魔法の才能はあまりありませんが、少しの魔力でも技術を磨き鍛錬を積めば私のように出来ますので皆さん頑張ってください。」

 一太刀だけだったがガインの剣術の腕がよく分かった。カカシの切れ口を見てみると一切のほつれが無い。素人が見てもすごいと声を出すほどの腕前だ。ガインの魔法の才能がより高くなるのなら誰にも引け劣らない魔法剣士になるだろう。

「魔力を込める。」

 リベルが独り言を呟きながら木剣に魔力を込める。うまくいかないのか首を傾げては魔力を込め、首を傾げては魔力を込める作業を続けている。

「ダメだー。」

 リベルは魔法の才能は素晴らしいが魔法剣士の才能は乏しかったようだ。みんな苦戦しているようで諦めている。そんな中一人だけ才能があった奴がいた。それはカナタだ。魔力を込められた木剣の光が部屋を包み込む。

「す、すごい…」

 カナタ自身も驚いているようだがそれ以上に驚いているのはガインだ。目を見開きあり得ないという顔をしている。

「は…あ…あ…」

 ガインは膝から崩れ落ち驚きすぎて声も出ないようだ。

「ガイン大丈夫?」

 リベルがガインに寄り添い声をかける。ようやくガインは正気を取り戻した。

「私としたことが申し訳ありません。カナタ君君には魔法剣士の才能が誰よりもある!もし興味があればいつでも良い私に声をかけてくれ。君の将来を光り輝く素晴らしいものにしたい。」

「え…あ、ありがとうございます。」

 カナタもガインと同じぐらい困惑しているようで心ここにあらずと言った感じだ。

(すごいね。僕には魔法剣士の才能は無かったみたいだね。)

(これで魔法剣士の才能がもあったら全人類嫉妬で狂うぞ。)

(あはは…)

 リベルの乾いた返事にため息しか出ない。

 それからというもののガインはカナタに付きっ切りで剣術を教えた。

 一眼の終わりを告げる鐘が鳴った。

「今日はここまでみんなまだ剣に振り回されているから筋トレをするように。以上。」

「「はい!」」

「「……」」

 元気良く返事をする者もいるが大半は黙っている。

 次は初めてのマリー先生の魔法演習だ。ホームルームでビシバシ行くって言ってたからと言っていたのが気掛かりだ。

 二限の始まりを告げる鐘が鳴った。

「始めるぞー。」

「「「はい。」」」

 マリー先生の授業が始まった。

「みんなの魔法がすごい事は実技試験官の私が一番知ってるだから一年レベルでは授業しないからな。」

 クラスのみんなが固唾を飲んだ。

「まずみんな魔法の基礎をやってみろ。」

 俺は魔法の基礎と言うものは全く持って知らない。魔法をイメージする事なのか魔力を感じる事なのか。そう考えれば俺は魔法について知らない事だらけだ。

 みんなが指先に小さな魔法を出した。リベルは十の指先に小さな火をハーリーは五の指先にリベルより少し大きな火を出した。魔法の基礎は小さな魔法を綺麗な形で出す事なんだと理解した。

「全員注目!」

 マリー先生がみんなの視線を集める。

「リベルさっきのやって。」

「はい。分かりました。」

 リベルはさっきと同じように十の指先に小さな火を出した。周りの反応はマチマチだ。褒める声もあれば羨む声もある。

「もう良いぞ。みんなリベルを手本に十の指先に火を出すように形や大きさは問わない。でも最終的にはリベルのようにするように。」

 みんながもう一度基礎に取り掛かる。十の指先に火を出すのに二本の指先から火を出したり、左右の指先で火の数が違う者など様々だ。

「みんな意識する事は指先一本一本をイメージしてその上に蝋燭ぐらいの火を灯す事だよ。」

「そうやってるけど出来ないんです!」

「その老蝋燭ぐらいの火を灯すのがむずかしいんです。」

「片手なら出来るけど両手となると難しいんです。」

「あはははは!せいぜい励め!若き可能性の卵たち。」

 マリー先生は楽しそうにみんなを励ます。

 授業の終わりを告げる鐘が鳴った。

「みんな自主練習に励むように!」

 マリー先生は足早に部屋を後にした。今日も俺の魔法の実験だろうか楽しそうな顔をしていた。

次回もリフォンの猫生をお楽しみに。


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