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転生するなら貴族の飼い猫でしょ 〜飼い猫兼相棒として異世界を旅します〜  作者: 描空
世界放浪編

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189話 最優の魔法使い

今日はヴォディカ国で最も優れた魔法使いに会う日、リベルは誰よりも早起きして子供のようにワクワクしていた。その様子に俺とユディは保護者のような視線で見守っていた。国王から時間の指定はなかったためいつ行けば良いのか分からず朝早くに起きて待っていたところ、誰かが宿の扉をノックした。


「はい?」


「昨日、ヴォディカ城で案内した者でございます。国王より言伝を預かっているので中に入ってもよろしいですか?」


ユディが落ち着いた声で聞いた。すると、帰ってきた声は昨日案内してくれた初老の執事の声だった。ユディもそれに気がついたのか優しい声で返事をした。


「どうぞ入ってください。」


宿の扉が開いた瞬間、俺たちは驚愕した。そこに昨日案内してくれた初老の執事はおらず、代わりに黒髪ロングの女性が立っていた。ユディはすぐに鞘から刀を抜いた。すると、その女性は慌てて弁明し始めた。


「ご、ごめんなさい。貴方たちを驚かせようと思ってやっただけなの。私はトカ・リテロ。ヴォディカ国最優の魔法使いよ。まさかこんな反応が返ってくるとは思ってなくて本当にごめんなさい!」


俺たちはその言葉に安堵のため息をついた。ユディも誤解が解け刀を鞘に収めた。ユディが申し訳なさそうに宿に入ることを促した。


「ところでトカさん、どうやって僕たちの宿を特定したのですか?」


リベルの問いにトカは丁寧に答えた。


「私は妖精を使役しているの。その妖精に頼んで貴方たちのことを見させてもらっていたの。覗き見みたいなことしてごめんなさいね。でも、貴方たちの魔法がとっても魅力的でこの衝動を抑えれなかったの。」


俺たちはまさかの答えに背筋がゾクゾクした。ストーカー気質というか、変態なんだとみんなが思っただろう。でも、俺は初めて妖精を使役している人と関わりを持てたので聞きたいことを聞くことにした。


「トカさんは妖精を使役していると言ってましたが、どこにいるんですか?妖精を使役している人は初めて会ったので色々聞きたくて。」


俺が興味津々に聞くとトカは嬉しそうに答えた。


「私が知っていることなら全部教えてあげたいぐらいです!ですが、妖精は見える人と見えない人がいて、貴方は見えない方のようです…ごめんなさい。もしよろしければ絵を描いてお見せしましょうか?」


「良いんですか!?よろしくお願いします!」


俺はトカの好意に甘えてお願いすることにした。トカにペンと紙を渡して簡単に描いてもらうこと数十分、トカが満足げにペンを置いた。俺はどんな見た目なのだろうとワクワクしながらトカが描いた絵を見せてくれるのを待った。


「できました!」


そう言ってトカは俺たちにその絵を見せてくれた。だが、そこに描かれていたものはあまりにも醜かった。線はぐちゃぐちゃで、体のバランスもおかしく、イメージしていた妖精とはほど遠かった。その絵を見て俺たちはどんな言葉をかけるのが正解なのか分からず黙ってしまった。その時トカが言った。


「絵は苦手で…」


「誰にでも得意不得意はあるから心配いらないよ。」


「そうですよ。俺なんて魔法もダメダメなのに絵も下手くそなんですからトカさんが落ち込むことありませんよ!」


リベルとジュナがトカを精一杯励ました。そのおかげかトカは少し笑いながら言った。


「励ましてくれてありがとう。優しいのね。」


トカの言葉に二人は嬉しそうに口角が緩んでいた。俺はふと国王が言っていた内容を思い出してトカに言った。


「なんか国王が自分の前で俺たちの魔法を披露しろとか言ってたけど、それって何時から行けば良いのか聞いてないんだけどどうしたら良いんだ?」


俺の言葉にトカはあーと言って思考停止したように固まった。きっとトカもそれらしいことは何も知らされていないのだろう。まだ午前ということもあり昨日と同じ正午にヴォディカ城に向かうことにした。それまでの間トカに俺たちがどんな旅をしてきたのか話してあげた。トカはとても楽しそうに話を聞いてくれて話している俺たちも楽しく時間を忘れて話をした。でも、正午に城に向かうことは忘れておらずきちんと向かった。城に着くと昨日と同じ初老の執事が案内してくれて大広間へと向かった。


「良くぞ来た。トカももういるのか、早速余に魔法を見せてくれぬか?」


国王は大広間に入ってきたばかりの俺たちに問うてきた。あまりにも早い問いかけに俺たちは少し驚いたが、トカも楽しみにしてくれておりやることにした。


「それでは私から披露させていただきます。」


リベルが先陣を切ってくれ俺たちは後ろで見守った。リベルは右手で火魔法を出現させ左手で雷魔法を出現させた。今から何をするのか楽しみに待っていた。するとリベルは右手の火魔法を見事な火の鳥に変形させ、左手の雷魔法を火の鳥に融合させ口から雷魔法を撃つ火の鳥を完成させた。その見事な魔法に国王とトカそして、俺たちを含めその場にいた護衛の人たちも全員が見惚れていた。


「素晴らしい!まさかこれほどとは思わなかった!実に良い物を見せてくれた。もし良ければ来月開催される国全土の祭りがあるんだが、その時に今の魔法を披露してくれぬか?もちろん報酬は何でも用意する。国民たちとこの感動を共有したいのだ。」


国王の熱心な説得にリベルは快く承諾した。国王は今まで見たことがないほどの笑顔で嬉しそうにしていた。俺たちはその良い雰囲気のまま大広間を後にした。トカが帰り際にこう呟いた。


「あんなに嬉しそうな国王様は初めて見たよ。私でもあんな魔法は披露したことがなかったから国王様のテンション爆上がりだったのがちょっと悔しいかな。」


トカの言葉に俺はこう続けた。


「俺たちはここから離れるけどトカはずっといるんでしょ?なら来年の祭りまでにさっきの魔法を超えるぐらい修行して国王に今年はトカに任せようって言われるぐらい努力したら良いんだよ。」


「ありがとう。私頑張る。」


トカはやる気に満ちた顔をしていた。きっとトカなりにリベルの魔法を超えようと努力するだろうからそれを見れないのは少し残念に感じた。

次回もお楽しみに


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