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転生するなら貴族の飼い猫でしょ 〜飼い猫兼相棒として異世界を旅します〜  作者: 描空
世界放浪編

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182話 ヴォディカ国へ

俺たちはジャドゥー帝国を後にした。学園長の地図によるとエクサフォン国からジャドゥー帝国が数十キロ程度だったのが、ジャドゥー帝国からヴォディカ国は三倍から四倍ほどの距離があり確実に一日では着けないことを確信していた。だから俺たちは安全重視でヴォディカ国に向かった。ワイバーンなどの空を飛ぶ魔物に出くわさないようにあまり高度は上げず、地上から十メートル程度のところを飛んでいた。この高度なら地上の魔物が反応した頃には俺たちは射程圏外にまで飛んでおり、空を飛んでいる魔物からは地上付近を飛んでいるからと目をつけられない絶妙な高度なのだ。しばらく飛んでいるとルリがお腹が空いたと言った。言われてみればもうお昼時だったので、俺たちは魔物がいない場所で昼食を取ることにした。


「後どれくらい?」


リベルの問いに俺は学園長の地図を開けて言った。


「多分今この辺りかな?」


俺はジャドゥー帝国とヴォディカ国との三分の一程度の辺りに指を刺して言った。


「まだそれだけ!?今日中には無理?」


ルリが驚きつつ言った。スピードを上げれば夜には着けるだろうが、夜に着いたとしても万番がおらず国に入れてもらえない可能性や危険な魔物がいる可能性だってある。そんなリスクを冒すのは賢くないと思った俺はルリにそのまま伝えた。


「きっと着けても夜中だと思うし、ヴォディカ国に入れなかったり魔物がいたら面倒だろ?だから、魔物があんまりいない場所を見つけてそこで野宿して明日ヴォディカ国に着くっていう計画だ。」


「分かった。」


ルリは野宿するのが嫌なのか少し不機嫌そうな顔をしていた。俺は心の中で仕方ないだろと呆れた。昼食も食べ終え俺たちは再びヴォディカ国に向かった。道中魔物がのんびり過ごしているのを見かけたり、群れでどこかに向かって走っているのを見たりしていた。動物自然公園ってこんな感じなのかなと一人で楽しんでいた。でも、ずーっと飛んでいるだけだから次第に飽きてきてみんなあくびをしていた。俺も流石にずーっと見ていたら飽きてしまい、何か良い暇つぶしはないかなと考えた。俺はベタにしりとりをすることを提案した。


「暇だししりとりしない?」


「良いよー。」


リベルが少しやる気のない声で答えた。


「リンゴ。」


俺が始まるとリベル、ジュナ、ユディ、ルリ、ルナの順番でしりとりをした。みんな本当に暇だから何度か終わっても繰り返し続けた。次第に日が暮れ始めた。俺は魔物がいなさそうな場所を探した。でも、周囲にこれと言って何かあるわけではなく、だだっ広い平原が広がっているだけだった。俺の風魔法で魔物から身を隠したりベッドを作ったりとどうにでもなるのだが、ガラス張りの家より普通の家の方が落ち着くのと同じ理論で、物理的な防壁が欲しいのだ。完全に日が暮れるまで辺りを飛び回り雑木林とかないかなと探していると、ちょうど良いところに小さな林を見つけてそこで野宿することにした。外から魔物の声や足音が聞こえてきたが、風魔法で音と振動をブロックし安眠できるようにした。翌朝、ユディが作る朝食の匂いで目が覚めた。


「おはよ。」


俺はユディに向かって言った。するとユディは爽やかな顔で言った。


「おはよう。こんなに魔物がいても音も振動も全くなかったから快眠できたよ。」


俺はそう言われ風魔法の外を見ると犬系の魔物から小動物の魔物がかなりの数いた。あまり広くない林とは言え、これだけの魔物がいるのかと少し驚いた。


「こんなにいたんだな。」


「俺の起きた時驚いたよ。逆に平原で寝た方が良かったかな?」


「それはそれで夜行性の魔物に見つかった時に面倒くさいからこの程度の魔物ならこっちの方が良いな。」


俺は氷魔法で周りにいた魔物を全て凍らせてから砕いた。魔物たちは綺麗な氷の破片となり消えていった。少しするとみんな起き始めた。みんなで朝食を食べヴォディカ国に向かった。感覚的には後三分の一程度だからヴォディカ国に昼前に着けるように少しスピードを上げて向かった。しばらく飛んでいると少し気温が下がったように感じた。俺は飛びながら辺りを見回すと少し離れた林の木が凍っているのが分かった。きっと魔法使いが氷魔法を使っているのだと思いもう少しでヴォディカ国に着くと確信した。


「もうちょっとかな!?」


ルリも同じことを思ったのかそう聞いてきた。


「多分そうだろうな。」


俺はそう言い氷魔法を使っている魔法使いにヴォディカ国がどっちにあるのか聞くことなく飛び続けた。しばらく飛んでいると風が吹いてきた。普通の風とは少し異なり違和感を覚えた。でも、口には出さずに飛んでいると視界の遠くに水平線が見えてきた。違和感を覚えた風は海風だったのだ。そして、その水平線に沿って右を見ていくとヴォディカ国と思わしき国が見えた。でも、ジャドゥー帝国のように防壁がないことから学園長の断絶壁のような魔法の防壁を用いているのだろうと思った。


「ねぇアレって!」


リベルが嬉しそうに言った。するとジュナとルリが呼応するように言った。


「「お!?」」


ユディとルナは平然としていたが、俺はヴォディカ国の見た目に興奮した。その見た目が地中海の欧州と似たような雰囲気で旅行に来ているみたいだった。前世では叶うことのなかったことだったからとても嬉しかった。俺たちはヴォディカ国に向かって一直線に飛んだ。近くまで来たが、出入り口のような場所がなくどこから入れば良いのか分からなかった。


「普通に入って良いんじゃない?」


探しても見つからなかったからここはないのが普通なんだと言わんばかりに言った。俺は本当にないのが普通なのか分からず、なんだか悪いことしてる気分になりながらヴォディカ国に入った。特に何事もなく入れてしまいなんだか変な感じがした。


「やっぱり普通に入れるんだね。」


「うん…でも何か変な感じ。」


お昼時であったからひとまず昼食を食べることにした。街を歩いているとイリージという看板の飯屋を見つけた。中に入るとお昼時だからかかなり賑わっていた。大半は人間だったが、数人魔族もいた。ジャドゥー帝国ほど魔族の人口はいないのかなと思ったが、ユディたちが受け入れられないことはないなと安心した。メニューを見てみると近くに海があることから海鮮系や魚を主に使ったメニューが多く新鮮だった。俺たちはせっかくだからと海鮮系の昼食にした。どれも鮮度が良くとても美味しかった。イリージを後にして宿を探した。イリージから少し歩いた所にパンド・ヒーオという宿を見つけた。早速宿を取り、剣や刀など街を歩くだけには不必要な物は置いておき、俺の光魔法で施錠しておいた。これで思う存分ヴォディカ国を堪能することが可能となり俺たちは日が暮れるまでヴォディカ国を歩き回った。

次回もお楽しみに


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