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転生するなら貴族の飼い猫でしょ 〜飼い猫兼相棒として異世界を旅します〜  作者: 描空
世界放浪編

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176話 役人の暮らし

カミーヤに落札されてから俺は奴隷としてではなくて役人のように扱われている。来た当初からメイドたちが奉仕してくれていたため、自分が奴隷であることに疑問を持つほどの扱いだった。


「イナームは綺麗だねー。」


「カミーヤ様もお綺麗ですよ。」


「そう?えへへー。」


今はカミーヤと並んで朝の肌ケアをしてもらっている。全てカミーヤと同じ物を使ってもらっており、俺は奴隷なのに役人と同じ物を使って良いのだろうかと思った。カミーヤは鏡越しに俺の目をじっと見つめており、そんなこと何にも気にしていない様子だった。少しして肌ケアが終わった。俺とカミーヤはメイドに服を着せてもらった。カミーヤの服では俺に合わないため、イナームの背丈に合う服を着せてもらった。きっとカミーヤが想定以上に成長してしまった時の服などがあったのだと勝手に思った。服を着替えるとメイドは俺たちをダイニングルームに連れて行った。


「おはよう。」


「「おはようございます。」」


グラヴが待っていた。俺たちのことなんか気にしないで先に食べておいたら良いのにと思っていると、グラヴの隣に見慣れない女性がいた。どこかカミーヤと雰囲気が似ておりニコニコしていた。このことからこの女性はグラヴの奥さんであり、カミーヤの母親だと認識した。俺はカミーヤの母親の正面に座った。グラヴの正面はカミーヤが座ってしまったため仕方なく座ったのだ。俺が気まずそうにしているとグラヴが察したのか紹介してくれた。


「紹介がまだだったね。私の妻のリージアだ。」


「よろしくお願いします。リージア様。」


「よろしくねイナーム。」


カミーヤの微笑みがリージア由来なのがはっきり分かるほど二人の微笑みは似ており、口角の上がり方や目を少しすぼめる様がそっくりだった。朝食が運ばれてきたのでみんなで朝食を食べ始めた。食事中の沈黙を破ったのはリージアだった。


「イナームはかなり身長が高そうだけど一体何センチあるのかしら?」


「170センチです。」


俺が端的に答えるとリージアは驚いていた。


「かなり大きいのね!カミーヤなんて子どもに思えるでしょ?」


「いえいえそんなことありません。」


俺はカミーヤのプライドを傷つけないように答えた。


「そう?なら妹かしら?」


リージアがそう言うとカミーヤが食いついた。


「私、イナームの妹になる!」


その発言に俺とグラヴは動揺を隠せなかった。俺は飲んでいた水が気管に入り咽せて、グラヴは食べようとフォークで刺していた物を口に運ぶ手前で止まっていた。


「良いわね!それじゃあ養子にしましょうか。」


その言葉に俺が突っ込もうとしたが、一歩先にグラヴが突っ込んだ。


「ちょっと待て!どうしてそんなに飛躍するんだ!それにイナームは奴隷だ。役人としての私たちの地位を考えろ。」


俺はグラヴを援護するように言った。


「そうですよ。私は奴隷なのですからそのようなお考えはよしてください。」


俺とグラヴに否定されたカミーヤとリージアは残念そうにしていた。ひとまず養子の話はなかったことになり一安心だ。そのまま朝食を食べ終えた俺はカミーヤに手を握られどこかに連れて行かれた。


「どこに行くんですか?」


「ナイショ!」


俺が聞いてもカミーヤは答えてくれなかった。驚かせようとしているのか、サプライズのつもりなのか分からないが、俺はどこに行くのか分からず少し心配だった。しばらく歩くとカミーヤが俺の手を離した。


「目を瞑って!」


俺はそう言われて素直に従った。扉の開く音がした後カミーヤが俺の手を握りゆっくり歩いた。


「ど、どこに行くのですか!?」


俺は目を瞑ったままだったので怖かった。でも、カミーヤはそんな俺を見て楽しそうに笑っていた。


「大丈夫。ゆっくり歩くから安心して!」


そう言ってくれたが、怖い物は怖いのでカミーヤの手を強く握った。少し歩くと地面に違和感を感じた。地面が屋敷の人工的な硬い床から芝生のような天然の柔らかい床に変わっていた。少し風も感じることから屋外に出たのだと分かった。余計にどこに行くのか分からなかったが、そのまましばらく歩いた。そして、カミーヤが歩みを止めて言った。


「目、開けて良いよ!」


俺はようやくかと思い目を開けた。外の光が眩しく少しの間目の前が明るくてはっきり見えなかったが、ようやく目の前に何があるのか理解できた。そこにあったのは大きな温室ハウスだった。その見事なハウスの中にはメイドが何人かいて植物の手入れをしているようだった。


「ここね、私のお気に入りの場所なんだ!」


そう言うカミーヤの笑顔は天使のようだった。この大きさだから屋敷から出たら見えてしまうから、驚かせることができないため目を瞑らせたのだろう。行動理由全てを含めてカミーヤの可愛さに心を撃ち抜かれた。


「中はもっと凄いよ!」


カミーヤは俺の手を握り中に入った。中は花の良い匂いが充満していた。そして一株一株の綺麗さ、大きさに驚かされた。カミーヤは俺の手を離しジョウロを手に取った。


「水やりするけどイナームもやる?」


「お手伝いさせていただきます。」


そう言うとカミーヤは嬉しそうにジョウロをもう一つ手に取り渡してくれた。俺たちは花に水をやった。カミーヤが隣で今水をやっている花の名前や豆知識を教えてくれた。ハウス内にはかなり多くの花が育てられているのに、その全ての花の名前や豆知識を暗記しており本当に花が好きなんだと分かった。ハウス内にある花の世話にはメイド数人がつきっきりでやっても半日はかかるらしく、カミーヤも花が好きだから手伝っているそうだ。カミーヤは特に用事がない午前はいつもここにいるらしく昼食はピクニックのようにして食べるのだそうだ。


「いつもはメイドたちが近くにいるけど、一緒に食べてくれたりはしなくて寂しかったけど、今日からはイナームがいるから寂しくないね!」


俺はそう言うカミーヤのことを優しく抱きしめて言った。


「毎日一緒に食べましょうね。」


「うん!」


カミーヤは今日イチの笑顔を見せてくれた。

次回もお楽しみに


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