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転生するなら貴族の飼い猫でしょ 〜飼い猫兼相棒として異世界を旅します〜  作者: 描空
世界放浪編

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174話 オークション

壇上に上がった俺はその場にいる人の数に再度驚いた。どこを見ても人、人、人でこれほどの人数に見られていると思うと自然と心拍数が上がった。それでも俺はきちんとキャラを演じることに専念した。少しすると何人かの女性と筋骨隆々な男性と他数名、狐人の男性と女性、鹿であろう魔族の男性、ライオンのような立髪がある魔族の男性、エルフの男性と女性がやってきた。全員が壇上に上がると出入り口が閉じられ奴隷オークションが始まった。壇上に目元を仮面で隠した男性がやってきた。どうやら司会らしく手には台本のような物が握られていた。そして司会が奴隷オークションの進行役を務めた。司会は壇上の中央で風魔法を使い声を会場全域に届かせた。


『紳士淑女の皆様、今宵はお集まりいただき誠にありがとうございます。多くの方が前座なんていいから早く本題に入れと仰るのはよく分かるのですが、事前資料に載っていない奴隷がいることに気がついた方もいらっしゃると思います。実は、今回飛び入り参加のため事前資料をご用意できなかったのです。ですので、この場で紹介させていただきたいと存じます。』


司会は俺の方を見て前に来るようにジェスチャーした。俺は仕方ないかと司会に従い壇上の中央に移動した。


『それでは紹介させていただきます。彼女の名はイナーム。つい先日奴隷になったばかりの新人です。そして、説明する必要など不要なこの外見!今すぐオークションを始めたいところですが、彼女は今回の大トリとしましょう!』


会場からは賛成の拍手が割れんばかりに響いた。本格的に奴隷オークションが幕を開けた。


『まずは人間の奴隷から始めましょう。お手元の事前資料一番から始めていきます。それでは100万ソナーから!』


俺はソナーという単位は初めて聞くため違和感を持った。エクサフォン国とジャドゥー帝国でお金が違うのは当然だろうが、耳にすると違和感はかなりのものだった。そんな俺のことなんて誰も気にしていないようで、会場の購入希望者が各々希望価格を魔法で表示した。110と火魔法で表示している者や200と水魔法で表示していた。これだけ人数が多いのだから声を出しても掻き消されるからこのような方式なのだろう。


『現在200万ソナーまで出ています。これ以上はいらっしゃいませんか?それでは落札となります。』


一人目は200万ソナーで落札された。これがエクサフォン国基準でどのくらいなのか分からないが、気にしても仕方ないので気にしないようにした。それから何人かの女性は全員200万から300万の間で落札された。


『それでは男性へと移りましょう!五番で50万ソナーから始めていきます!』


五番は筋骨隆々な男性でかなりの数の魔法が会場に出現した。その中から最高額を探すのはかなり難しかった。司会も探すのに苦労しており眉を顰めていた。


『少し分かりづらいので100万以上の方のみお願いします。』


すると魔法の数は一気に減り十以下になった。ようやく司会が最高額を把握できて次に移った。


『現在130万ソナーです。それ以上はいらっしゃいませんか?』


すると150と書かれた火魔法が出現した。


『150万が出ました!これ以上は出ませんか?』


負けじと155と書かれた水魔法が出現した。そのような争いが続き結局は180万ソナーで落札された。そして他の男性もオークションにかけられた。50万から100万の間で落札された。男性と女性でこれほど差があるのかと驚愕した。様々な理由で男性より女性の方が高額になるのだろうが、その理由は考えないことにした。次は狐人だ。人間と魔族の相場の違いも知れる機会だ。


『次は獣人の狐人の男性と女性です。まずは男性から始めましょう!それでは300万ソナーから!』


俺は狐人が獣人と呼ばれていることにここでも国の違いを感じた。エクサフォン国では人間以外を総じて魔族としていたが、ジャドゥー帝国では違うようだ。なら悪魔であるルナや魔人(ノーマ)であるシュルリーダが魔族となるのだろうか。そんなことを考えているといつの間にか狐人の男性は600万ソナーで落札されていた。


『続きまして狐人の女性1,000万ソナーから!」


男性と女性で約三倍の価格差があることに驚いたが、それ以上に役人たちの購入希望価格の高さに驚いた。1,500万から2,000万、2,500万と今まで見たことない金額を提示していた。価格こそ高額で人気物件のように感じたが、価格を表示している役人は多くなく五人ほどだけだった。そのおかげか狐人の女性は2,500万ソナーで落札された。


『次は鹿人の男性。狐人と同じく300万ソナーから!』


鹿のような男性は鹿人と呼ばれる種族らしく、いろんな種族がいるだなと感心した。鹿人はあまり人気がないのか420万ソナーで落札された。鹿の立派な角があり分かりやすいチャームポイントのように感じていたが、役人にはあまり人気がないのかも知れない。


『次は獅子人の男性!獅子はあまり見かけないので高めにいきましょう!1,500万ソナーから!』


ライオンのような男性は獅子人と呼ばれており司会の言葉通りならかなり希少な種族だ。だからか、狐人の女性より高額な1,500万から始まった。きっと獅子人は女性より男性の方が高額なのではないかと思った。立髪や獅子のパワーなどを加味してそうではないかと思った。


『4,500万ソナーまで来ました!これ以上はいませんか?それでは4,500万ソナーで落札!』


なんと獅子人の男性は今日最高額の4,500万ソナーで落札された。俺はその高額さに驚きが顔に出そうになったが、なんとか顔に出さないように抑えた。


『次はエルフの男性と女性です。エルフの奴隷率は極めて低いためエルフの男性、2,000万ソナーから!』


すると続々と購入希望価格が表示された。魔法が一度に多く出現するとキラキラと輝いていてとても綺麗だった。それにしても火と水魔法の比率が多すぎて本当に基本中の基本の魔法なんだと感じた。その中でも雷や氷もちらほら見えた。その中でも他の人の魔法より大きく6,000と表示していた役人がいた。


『6,000万ソナーです!これ以上はいませんか?』


すると6,100と表示した役人がいた。その人との一騎打ちとなり結果、後出しした役人が7,000万ソナーで落札した。やっぱり異世界と言えばエルフというイメージはこの世界でも適応されておりエルフの人気は凄まじいものだ。この調子なら女性のエルフは1億までいきそうだ。


『それではエルフの女性です!5,000万ソナーから!』


エルフの女性となると人気は今までの比ではなかった。魔法の数が多すぎて他人の魔法を熱がったりしているほど魔法の数と密集率、自分の魔法を目立たせようと大きくしたりしていた。熱意もすごく、自分の希望価格が周りより少しでも低ければそれを上回る価格を表示していた。そんな激闘を制した役人はおじさまで1億1,300万ソナーで落札した。


『最後は今宵の大トリ、イナームです!彼女の価格をこちらで決めることができないので皆様にお任せします!』


するとエルフの女性と同じぐらいの魔法が会場を埋め尽くした。俺はその光景に自分の容姿の美しさと魅力を再認識した。


『1億ソナーまで出ました!これ以上かいませんか?』


俺はその1億を提示した役人を確認するとマーラではないことに気がついた。このままでは作戦が水の泡になる可能性がある。ヤバいと思ったその瞬間誰かが叫んだ。


「1億5,000万!」


その声は風魔法で通りを良くしていないにもかかわらず壇上にいる俺にまで聞こえてきた。その価格を火魔法で表示している役人はかなり後ろの方であまり見えなかったが、凝視して見るとそれはマーラだった。俺はお前ならやってくれると心の中でガッツポーズをした。それと同時にお前を役人から引き摺り下ろしてやれると歓喜した。すると女性の声が聞こえてきた。


「1億6,000万!」


俺は自分の価値がそれほどあるのを歓喜すると同時に余計なことをするなと怒りが湧いてきた。


「1億7,000万!」


その調子だマーラ頑張れと俺は心の中で叫んだ。そしてマーラと女性の意地がぶつかり合い結果は、女性が3億4,000万ソナーで落札した。俺は絶望した。まさか、マーラが負けるとは思っておらず俺の作戦は潰えたかのように思われた。


『それでは皆様今宵の奴隷オークションはこれにて閉幕とさせていただきます。お越しくださり誠にありがとうございました!』


組合の人は俺の落札価格は過去最高額レベルだととても興奮していた。そして落札された奴隷と落札した役人が会う部屋が用意されているようで、俺は組合の人にエスコートされてその部屋に向かった。部屋の前につき、組合の人が扉を開けてくれた瞬間、俺を落札した女性が抱きついてきた。俺は人生史上最も動揺した。


「私のプリンセス!」


俺を落札した人は二十代前半ぐらいの女性で開口一番、俺のことを力強く抱きしめた。俺は抱きしめ返すのが良いのかどうしたら良いのか分からず困惑しているとその女性が言った。


「私はカミーヤ・ドゥルハン。よろしくね!」


「よろしくお願いします。」


俺は精一杯の演技で何ら動じていない大人な女性を演じた。カミーヤは俺が演じる大人な女性とは違い、スポーツも何でもこなせる元気溌溂な女性という感じだった。このままでは本当に俺の作戦が水の泡になってしまう。カミーヤが暴力を振るうようには思えないので俺はどうしようか考えを巡らせた。でも、俺の足りない頭ではどうしようもなかった。そんな時カミーヤが再び俺に抱きついてきた。


「イナーム、イナーム、私はのイナーム。」


カミーヤは俺の胸に顔を埋めながらそう呟いていた。カミーヤは俺より頭一個分背が小さく抱きつくとちょうど胸に顔が来るのだ。俺が猫被りをしているイナームは約170センチほどでカミーヤは約150センチだ。自分より小さいカミーヤにこれほど甘えられて嬉しくなった俺はカミーヤの頭を撫でた。するとカミーヤはふふっと笑い可愛いなと思った。作戦は水の泡になったかも知れないが、カミーヤに協力してもらえればどうにかなるだろうと思い、今はこの幸せを享受することにした。

次回もお楽しみに


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