17話 初めての授業
異世界に転生した俺はリフォンという名を貰い猫生を送る事になった。でも優雅に生きて死ぬだけでは面白く無い。異世界に転生したのに勿体無い。異世界を思う存分堪能してやる!
「おはよう。」
「おはよ。」
俺が教室の机の上で寝落ちしそうになった瞬間リベルとハーリーが挨拶をする声で起こされた。リベルは授業が楽しみすぎていつもより一時間も早く起き教室で時間を潰ししていたのだ。そのまま続々とクラスメイトがやってきて教室が話し声で賑わい俺は眠れなくなった。しばらくするとチャイムが鳴った。それと同時にマリー先生が教室に入ってきた。
「はーいみんなおはよう。ホームルームするぞー。」
さっきまでは賑やかだったクラスが静かになりマリー先生の話に耳を傾けている。
「今日の授業は一限魔法学二限剣術だ。剣術をやる理由は魔法使いは接近戦に弱いからだ。それと必修だからだ。何か質問あるか?無いならホームルームは終わり。」
「質問いいですか?」
ワーナーが質問をする。
「何だ?」
「魔法学はここで受けるのは分かるんですが、剣術はどこで受けるんですか?」
「剣術指南室だ。リベルなら分かるだろ。みんなを連れてってやってくれ。」
「あっはい。」
(どこにあるんだ?その剣術指南室は。)
(魔法競技室の向いだよ。)
(全然気づかなかった。)
(リフォンは自分の事だけ考えてたら良いよ。)
俺は無意識に喉をゴロゴロ鳴らしながらリベルに頭と体を擦り付け自分の匂いをつけた。リベルはそんな俺を嬉しそうに撫でていた。
「おはようリフォン朝の撫で撫で良いかしら?」
アインが俺の返事を聞く前に撫で始めたから俺は怪訝そうな顔をしてアインを見つめる。
「リフォンったらそんな熱烈な視線を送ってきちゃって。」
アインは勘違いなのかわざとなのか分からないが今はそんな気分では無いのでアインの手を振り払った。
「今日のリフォンご機嫌斜め?」
「僕が早く起こしすぎたからかな?ごめんね。」
「ンニャー。」
「はーいみんなもうそろそろ授業始まるから席に座って。」
ハイネ先生が教室に入ってきた。すぐに鐘が鳴り魔法学の授業が始まった。
「今回は初めての授業ですのでガイダンスと自己紹介をしようと思います。まずガイダンスからですね。この授業では、魔法とは何なのかという事から学んでいき学園を卒業する頃には学園の教師と同じ理解度になるレベルまで学習してもらいます。だからとてもハードと言うわけではなく細かく細かく教えていきます。魔法についてはまだ分かっていないことや新たに発見されることが多いので安心してください。テストは追々分かると思います。火魔法から闇魔法まで一通りやりますので使えないからといって勉強をしないのはダメですよ。ここまでで質問はありますか?」
「先生この授業では座学がメインなんですよね?なら使い魔召喚のような魔法陣を用いる魔法も学ぶんですか?」
ターガーが質問をした。ハイネ先生は目を光らせた。
「良い質問ですね。魔法陣を用いる魔法も学ぶけどまだまだ先だから予習とかはしなくても良いよ。でも個人的に学びたいとかその魔法を使ってみたいって言う生徒がいたら私は全面的に協力するので言ってくださいね。」
「「「はーい。」」」
みんながそう返事をするとハイネ先生は嬉しそうに頷いた。ターガーの質問が良かったのかみんなが返事をしてくれたから嬉しかったのかは分からない。
「それじゃあ自己紹介ですね。私はハイネ・テラフォーンです。気軽にハイネ先生って呼んでください。使える魔法は火、風、雷、光です。ちなみに学園で教師になるには最低でも光魔法の回復を使えないといけません。教師は生徒を守り教えを享受する存在ですから。」
そう言うハイネ先生はいつもよりカッコよく見えた。
「何カッコつけてるんですの?お父様。」
ナサリーが嫌味っぽく言う。
「綺麗に決まったんだから横槍入れないでくれよー。」
「「「あはは。」」」
その瞬間クラスはさっきまでの雰囲気から一変して和やかな雰囲気になった。
「よしこれで今日のやる事は終わったけどみんな何かやりたい事とかある?」
「はーい。貴族の暮らしについて聞きたいです。」
ヤハスが質問した。
「うーん…それなら私の暮らしよりリベル君の暮らしを聞いた方が楽しいと思うけどな。私のつまらない暮らしなら話すよ。」
「先生の話を聞きたいんです。」
「それは嬉しいね。じゃあ話していこうかな。まず私は婿だから幼少期は普通の生活だったよ。だから普通の暮らしと貴族の暮らしの違いを話せると思うよ。まず食事面の違いだね。朝から高級な食事を食べれるのは貴族っぽいよね。それが昼も夜も何だけどね。次にマナーだね。貴族は幼少期から社交界に顔を出す事があるから専属講師を雇ってマナーを教えるんだ。あと服もかなり違うね。豪華絢爛と言う言葉がピッタリな服装ばかりだよ。もちろん寝巻きとかは地味な物が多いけどそれにしても服はとても高価な物だよ。最後は家と領地だね。普通の家の十倍はある屋敷に住んでいるから毎日どこに行くにも疲れるね。こんな感じだけど良いかな?」
「ありがとうございました。」
「他に何か質問はないか?」
みんなはもう聞きたいことがないのか黙ってしまった。そんな状況を見かねてハイネ先生が口を開く。
「みんな私の魔法を見てみたくないかい?」
「「「見たいです!」」」
クラスの意見は一致したようだ。
「よし!ならみんな実技試験をやった場所に行こうか。」
俺たちは先生に促されそこに向かった。道中でカナタがハイネ先生に質問をした。
「ハイネ先生、その実技試験をやった場所ってどういう場所なんですか?」
「あそこは色々な目的で使われる場所だよ。例えば生徒の魔法の自主練習だったり、生徒が自分で買ってきたアイテムを試したり、授業の週に使ったりと本当に様々だよ。」
「「「へー。」」」
ハイネ先生の後ろにいた俺たちはその一言しか出なかった。ハイネ先生は何だか申し訳なさそうな反応をした。
「よしみんなに自慢の魔法を見せてあげるよ!」
ハイネ先生はとてもやる気に満ちている。ハイネ先生は右手を突き出し大きな火を出現させた。その大きさは大人の頭がすっぽり隠れるほどだ。クラスのみんなはその魔法の練度と魔力に驚いている。
「いくよ!影響が出ないように魔法を展開して守ってくれるかい?ナサリー。」
「言われなくても分かってるわよ!」
ナサリーは水魔法を用いて水の壁を作り出した。その水の壁は波紋が一切無くその練度の高さが窺える。
「はあ!」
ドゴーン!!!
ハイネ先生の魔法はカカシどころか地面までも抉り消滅させてしまった。ナサリーの水の壁のおかげでハイネ先生の魔法の影響は出なかった。そんな魔法を使ったにも関わらずハイネは笑って何もなかったかのように振る舞っている。
「どうだい魔法の魅力を肌身に感じれただろう?」
その言葉を聞いたみんなの反応は十人十色だ。興奮して息を荒げている者や腰を抜かしている者、何の反応も示さずそっぽを向いている者など様々だ。そっぽを向いているのはナサリーだった。
授業の終了を告げる鐘が鳴った。
「よし今日の授業はここまで。」
「「「ありがとうございました。」」」
ハイネ先生が学園に戻る俺たちは次の剣術を受けるために剣術指南室に行った。授業開始を告げる鐘が鳴ったのに先生が来ない。何か問題が発生したのかとみんながザワザワしているとリベルとリーンに剣術を教えたガインが部屋に入ってきた。
「あれ?ガインどうしたの?」
「お久しぶりですリベル様今日からエクサフォン学園の検出指南役に抜擢されたのです。リベル様とリフォン様の成長をまた近くで見れる事を嬉しく思います。」
そう言うガインは笑いながらしかし目には少し涙を浮かべていた。
「先生なら挨拶しないとじゃない?」
「そうですね。気を取り直して、私の名前はガイン・サイラーンです。今日からみなさんに剣術を教えていくことになりました。使える魔法は火と水を少しだけです。剣術と魔法を組み合わせる魔法剣士には及びませんが、私も少しなら魔法剣士の真似を出来ますのでそのような技術も教えていきたいと思ってます。」
「先生はリベルとどういう関係なんですか?」
ヤハスがガインに聞いた。
「私は以前までペタフォーン家で剣術をリベル様とお兄さんのリーン様に教えていたのですが、お二人が学園に通うからあなたも学園で教師になりなさいと言われて教師になった感じです。」
「なんか…す、すごいですね…」
ヤハスは何とも言えない反応をしている。今回に限りこの反応は正しいと言えるだろう。前まで個人を教えてた人がいきなり教師になっているのだから。
「はい、えーと…何からしたら良いんでしょうか。」
ガインは教える側であるはずのリベルに助けを求めた。リベルは優しいので耳打ちでやる事を教えている。
「えーと、今回は初めての授業ですのでどのような事を教えるのか、どのような技術を身に付けれるのかを話したいと思います。」
「こんな感じで良いんでしょうか?」
「大丈夫正解も間違いも無いから自由にやれば良いよ。」
ガインは心配なようでリベルに答えを求めている。
「みなさんがどれほど剣に慣れているか分からないので、みなさん初めて剣に触れるという体でやりますので安心してください。そして技術としましては近距離戦における足運びや体の使い方を教えます。剣術を学ぶ理由は無いと思っている方もいるかもしれないですが、剣術と同時に近距離戦の戦い方を学ぶという意味合いも持たせています。これはみなさんも命を守る事が出来る技術ですので積極的に取り組んでください。」
「「「はい!」」」
ガインはクラスの一体感に驚いていた。初めての教師初めての授業そんな状況下に放り込まれてこれほどの事を成し遂げれた自分にも驚いているのかもしれない。
「今回は初めての授業ですのであまり本格的にはやりませんがみなさんがやりたいのであれば木剣を握る程度はやりますか?」
「やりたーい。」
「やります!」
「やるに決まってる。」
一部の女子と大半の男子は肯定的だ。だが一部の女子ナサリーやソフィーはあまりやる気では無かった。
「それではまず一人一本壁に掛けてある木剣を持って私の前に集まってください。」
各々木剣を手に取りガインの前に集まった。
「みなさんまず自分が思う形で木剣を持ち構えてください。」
リベルとハーリーとターガーとワーナーとメアリーは両手で木剣を持ち真正面に木剣を向け構えている。
ヤハスとハンスは片手で木剣を持ち横に木剣を向け構えている。
アインとカナタは両手で木剣を持っているが横に向けて構えている。
ラーヤは片手で木剣を持ち肩に担いでいる。
ナサリーとアインとソフィーは木剣を両手で持っているが剣先は地面に当たっている。
ガインはみんなの木剣の持ち方と構えを見て一言言った。
「リベル様とハーリーさん、ターガー君、ワーナー君、メアリーさんはお手本通りだね。でも持ち方も構え方も人によって違和感があったり好き嫌いがあるから今のみんなの持ち方と構え方は個性だから気にしなくて良いよ。」
ガインが一切の悪気も無さそうに言うからリベル、ハーリー、ターガー、ワーナー、メアリー以外は居心地が悪そうだ。そんな事をしていたら授業終了を告げる鐘が鳴った。
「ここで終わります。次回は剣の振り方をやりますので楽しみにしていてください。」
「それではリベル様、リフォン様失礼します。」
「教師生活楽しんで!」
「ニャ!」
俺もリベルと同じニュアンスを含んだ猫語を言った。ガインは嬉しそうにどこかに行った。初めての授業は何事も無く終わった。
次回もリフォンの猫生をお楽しみに。