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転生するなら貴族の飼い猫でしょ 〜飼い猫兼相棒として異世界を旅します〜  作者: 描空
世界放浪編

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169話 ジャドゥー帝国へ

グロウから贈り物を手にした俺たちはジャドゥー帝国に向かった。公爵領から北東に進んでいると断絶壁が見えてきた。かなり近くに断絶壁があるのに子爵領のように魔物たちが断絶壁を突破してくることがないのは何か理由があるのだろうか。公爵領と屋敷はかなり離れているが、どうやって防衛しているのか気になった。


「なぁリベル、公爵領は子爵領みたいに断然壁から魔物が来ることはないのか?」


俺がリベルに聞くと、リベルは微笑み言った。


「来ないんじゃなくて来れないんだよ。その理由は断絶壁を越えたら分かるから楽しみにしてて。」


俺は何があるのか見当もつかなかった。焦らされているように感じて早く見たくなった俺はスピードを少し上げた。少ししたら断絶壁を越え何か建物が見えてきた。俺はそれに驚いた。子爵家も侯爵家も断絶壁の外に建造物を作ることはなく断絶壁の手前から防衛していた。でも公爵家は断絶壁の奥から防衛しているのだ。問題の根本を事前に取り除くことで被害を最小限にするやり方に感服した。


「あれだよ。防衛隊が断絶壁に近づこうとする魔物を討伐してるんだ。だから子爵領みたいにワイバーンに断絶壁を破られたりしないんだ。ちなみにシータもいるよ。シータの実力はお父様も高く買ってて、今は防衛隊の隊長をしてるんだって。」


俺は久しぶりにシータに会えるとワクワクした。するとそれを聞いていたルナが問うてきた。


「リフォン様、シータという人はどのような人か教えていただいてもよろしいですか?」


みんなシータと会うのは初めてだから説明することにした。


「シータはリベルとリベルのお兄さんのリーンに魔法を教えていた人で、国王からワイバーン討伐を命じられるぐらいの人だ。て言っても、俺もあんまりシータのこと知らないから。」


俺がみんなに言うとリベルが付け足してくれた。


「ちなみに、シータはお父様に雇われる前は冒険者をしていてそれなりに名を馳せていたらしいよ。その時の話を聞こうとしても答えてくれないから、本人的にはあんまり話したくないっぽいからナイショね。」


俺はそんなこと勝手に言って良いのかよと呆れていると防衛隊の建物の真上についた。


「屋上に降りちゃって。」


リベルが指示してくれたから俺はその通りに従った。屋上の扉から中に入ると造りは屋敷と似ており、グロウの趣味なのか同じ建築士なのか分からないが、そっくりだった。少し歩いているとグロウの部屋と同じ場所についた。目の前の扉の上には隊長室と書かれた札があり、ここにシータがいるのだと分かった。リベルがドアを三回ノックした。


「入れ。」


中からシータの声が聞こえてきた。久しぶりに聞くその声にシータとの記憶が蘇ってきた。と言ってもほんの僅かしかないが。


「久しぶり。」


リベルが扉を開けて言うとシータは口を手で押さえていた。けど、すぐに笑みを見せて言った。


「おかえり。」


シータは椅子から立ち上がりリベルと熱い抱擁を交わした。そして俺たちの方に向かって言った。


「リフォンは?」


その言葉にリベルは笑った。シータはリベルがなぜ笑っているのか理解できておらず、俺がシータに声をかけた。


「俺がリフォンだよ。」


シータは俺の人間の姿を見るのは初めてだから顎が外れそうなほど驚いていた。俺の顔を触ったり腕を伸ばしてみたりと本当に俺が人間なのか確かめていた。ジュナたちはその光景に微笑んでいた。


「ほ、本当に人間になったのか…?」


まだ信じられないというような顔で聞いてきたので俺は猫の姿に戻ってもう一度人間の姿になった。それを見ても尚現実を受け止められないのか口が開きっぱなしになっていた。そんなシータに追い打ちをかけるようにリベルがジャドゥー帝国に行くことを話し始めた。


「そうそう。僕たち今からジャドゥー帝国に行くんだ。お土産買ってくるけど何が欲しい?」


「へ?」


シータのこんな反応初めてだったので俺は笑ってしまった。いつもは頼れるお姉さんみたいな雰囲気なのにこの時ばかりはマヌケに見えた。


「まぁとりあえずそう言うことだから。もう行くね。」


リベルが部屋から出ようとした時、シータがリベルの手を掴んで止めた。


「せめてこの人たちのことも教えてくれない?」


リベルは面倒くさそうにため息をついてジュナたちのことを説明した。シータはジュナたちが仲間になったことよりもダンジョンを攻略したことに驚いていた。


「別にそんな大したことしてないよ。」


そうリベルが謙遜のつもりで言ったのだろうが、シータはリベルに食いついた。


「大したことだよ!この世界でダンジョンを完全攻略できるパーティがどれだけか知ってる?一パーセントもないって言われてるんだよ。私が冒険者だった頃でも完全攻略はできなかったって言うのに、それをあんたたちは十五歳でやっちゃったの!この意味分かってる?嫉妬で狂いそうよ!」


シータの気迫に俺たちは気圧された。俺たちは逃げるように部屋を後にした。そして屋上からジャドゥー帝国に飛ぶとシータの声が聞こえてきた。


「絶対に追いついてみせるから待ってなさいよー!」


シータのその声にリベルは微笑み言った。


「待ってるよー!」


俺たちはジャドゥー帝国に向かった。しばらく飛んでいると魔物たちと戦っている防衛隊の人たちが見えた。俺は援護するように魔物たちに火魔法を撃った。魔物たちは俺の攻撃で壊滅して防衛隊の人たちが感謝の言葉を述べながら手を振った。俺は手を振り返したかったが、手を繋いでいたため手を振れなかった。しばらく飛んでいると二十五階層の巨木ほどの高さの壁が見えてきた。俺たちはそこがジャドゥー帝国だと理解して出入り口はないかと探した。すると五メートルほどの大きな木の門が見えた。そこに出入り口があると確信した俺はそこに降り立った。そこには騎士がいた。上から来た俺たちに驚いていたが、職務を全うした。


「な、何だ貴様ら!」


その騎士は手に持っていた槍をこちらに向けてきた。


「ただの冒険者です!槍を向けないでください。」


騎士はその言葉を不審に思っていたが、ユディとルリを除き俺たちは人間なため槍を上に向け言った。


「冒険者なら冒険者カードを見せろ!」


リベルは胸ポケットから冒険者カードを出し騎士に渡した。


「通ってよし。」


騎士は不服そうな顔をしていたが何とか通してくれた。何ともなくジャドゥー帝国の土を踏むことができた。中では人間と魔族が入り混じっておりエクサフォン国とは全然違った。その光景に俺は胸の高鳴りが抑えられなかった。これこそ異世界という感じがしてたまらなかった。俺たちは何をしようかと悩んだ。これほど新しい物を目の前にしてすぐに選べる人はそうそういないだろう。まず俺たちはジャドゥー帝国を楽しむことにした。

次回もお楽しみに


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