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転生するなら貴族の飼い猫でしょ 〜飼い猫兼相棒として異世界を旅します〜  作者: 描空
特認実習 後編

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166話 発表本番前日その2

サラーマを撫でながら学園長を待っているといつの間にか眠ってしまい夕暮れになっていた。みんなも一緒に寝てしまっていたので誰も起こす人がおらずこんな時間になってしまった。部屋を見渡しても学園長はいなかった。まだ帰ってきていないのかどうかは定かではない。学園長室から出て行こうにも、前の寮の部屋では狭すぎることから学園長の帰りを待つことにした。俺が起きたのに気づいたサラーマが大きなあくびをして俺の足元にやってきた。遊びを要求するわけでもなく、ただ俺の足元にやってきた。ソファに頭を預けてのんびりしているサラーマの頭を撫でた。可愛いなと思いつつ撫でていると、サラーマがソファの上に乗り俺の足の上に頭を置いた。学園長もいないし、みんな寝てて暇だから俺に甘えているのだろう。俺は優しく愛情を込めてサラーマを甘やかした。かれこれ三十分ほどサラーマを撫でているとベランダに繋がる窓が開いた。その開いた音の方に目をやると学園長がいた。でも学園長の表情はどこか難しそうにしていた。俺が声をかける前に学園長が言った。


「リフォン君、先ほどまで教員皆と会議をしておったんじゃが、大半の教員は君たちが鬼人とアプサラスを連れていることで学園で目立ち、魔神教団に目をつけられるんじゃないかと恐れておるのじゃ。」


「俺たちの実力を証明したら良いですかね?」


俺はバカだから言葉巧みに教員たちを言い包められる自信はない。だからこそ実力を示して納得させる方が確実だと感じた。


「ワシもお主らの強さは誰よりも理解しておる。彼らなら大丈夫だと言ったのだが、リスクが大きすぎると。魔神教団如きワシがどうにでもしてやれると言ったが、王都に魔神教団が潜伏してた一件があるから油断はできないと叱られてな。」


「そうですか。」


困ったことになった。このままではユディとルリと学園生活を送れなくなってしまう。でも他の先生方が言っていることも事実だ。俺たちが悪目立ちして標的になれる可能性は大いにある。でも、俺たちの実力なら大丈夫だろうが、他の学生を人質に取られでもしたら終わりだ。そのようなパターンも考えてリスクが大きすぎると言ったのだろう。すると起きていたリベルが言った。


「学園辞めちゃう?」


俺はその発言に言葉が出なかった。せっかく入学したのに辞めるというのはどうなのかと思った。ハーリーたちとも良き友人になり学園生活を謳歌すると思っていたから、あっさり辞めるという決断を下さるリベルに驚いた。


「え!?そ、それは…」


学園長も驚いていた。リベルのような人材が学園から抜けるのは痛手になるだろうし、その成長を見れないのは教員としても嫌なのだろう。でもリベルは公爵家次男であることから跡継ぎはリーンだろうから、リベルはある程度自由にできるのだろう。だからとは言え学園を辞めてまでやるべきことがあるのかと疑問に感じた。その疑問に答えるようにリベルが言った。


「学園でしかできないことはいっぱいあるけど、それ以上に僕は世界を飛び回って色んな経験がしたいんだ!もっと魔法のことも知りたいし、賢者にも会ってみたい!やりたいことをやらずに死ぬなんて嫌だ。だったらやりたいことやってそこで死ぬ方が断然良い!リフォンもそう思うでしょ?」


突然振られてどう答えるのが良いのか悩んだ。俺はどちらかと言うと安定志向なためリベルのような常に挑戦する熱意は持っていない。でも、それを言ってしまうとリベルは悲しむだろうし、異世界に来てまで前の情けない自分のままで良いのかと葛藤した。そして結論を出した。


「あぁ!俺もそう思う!このままやりたいことを制限されながら生きるより、制限されない自由な世界に羽ばたこう!」


俺の言葉にリベルはパァっと表情を明るくした。辺りはもう真っ暗になっているのにリベルの表情のおかげで照明いらずだった。その眩しさゆえか俺たちの話し声か分からないが、ソファで寝ていたジュナたちが目を覚ました。リベルが今話していた内容を端的に伝えると四人はすんなり了承した。学園がどんな感じなのか気にはしていたようだが、それ以上にリベルと旅をする方が楽しそうだと思ったのだろう。リベルのカリスマ力と言うか、人を惹きつける能力は目を見張るものがある。かく言う俺もそれに絆された身だから何も言えない。


「そ、それより成果発表はどうするんじゃ?」


「それは大丈夫です。その発表を終えたら辞めますので。」


キッパリと言い切ったリベルに学園長は少し寂しそうな顔をした。学園を辞めることはもう止められないと察したからだろう。


「そ、そうか…いつでも帰ってきて良いんじゃぞ…」


「はい。頼りにしてます!」


「それより今日どこで寝れば良いですか?」


俺が心配していたことを学園長に聞いた。前の寮の部屋では狭すぎるから願わくばこのまま学園長室にいたいと思っていた。


「ここにおれば良い。ここは無駄に広いからのぉ。」


俺は望みの一言が聞けて心の中でガッツポーズをした。俺たちはそのまま学園長室のソファで眠りについた。久しぶりに夢を見た。


「リフォン!お帰り!」


「チャヤ、久しぶりだな。魔神教団はどうだ?」


一年ぶりに会うチャヤは少し大きくなっていたような気がするが、今はそんなことより魔神教団だ。


「それが、点でダメで…エクサフォン国中、色んな村や街を回っては人々の話を聞いてきたけど、全くダメだったよ。噂程度に話している人はいるけど魔神教団のことを知っている人はゼロだったよ。多分エクサフォン国内に魔神教団はいなさそう。」


「そうか…それじゃあ俺の影に戻るか?」


「決められないからリフォンが決めて。」


俺は悩んだ。チャヤに諜報活動をしてもらうメリットは大いにある。俺たちが行けない、行かないような所にも行ってくれるし、誰にもバレないから得られない情報はないと言っても過言ではない。でも、諜報活動をさせるとなるとチャヤはずっと一人で行動しなくちゃいけないし寂しいだろう。この一年でエクサフォン国内の情報は粗方得られただろうが、来年はどこに行くか分からない。チャヤと離れ離れになるかも知れない。チャヤの事が可哀想だと思い俺の影に戻ってもらうように決めた。


「よし、俺の影に戻れ。しばらくエクサフォン国に戻って来なくなるかも知れないから諜報活動は一旦中止。また頼むかも知れないけどその時はよろしくね。」


「まっかせて!」


そんな感じでチャヤは俺の影に戻ることになった。にしても魔神教団は一体どこに拠点を移したのかは分からず仕舞いだ。

次回もお楽しみに


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