164話 発表準備
俺たちは屋敷で毎日をまったり過ごしていた。この一年の疲れを癒すように何もしなかった。と言うより俺はしたくなかった。でも流石に何かしないなとは思っているが、一度停滞したやる気を奮い立たせるのは至難の業だ。
「ねぇリフォンー、何かしよーよー。」
やる気が停滞している俺をリベルが奮い立たせようとしてくれているが、俺は一向にやる気にならなかった。
「何かってなにー?」
俺が気怠げに聞くとリベルが答えた。
「特認実習の発表練習とかー?」
俺はその言葉に引っかかった。
「発表練習って何だ?」
「特認実習での成果とかやったことを先生たちの前で発表するって説明したやつだよ。」
俺はその言葉にようやく思い出した。と言うより一年間の全てをまとめて発生するのだから、今みたいにグータラしている暇はないと危機感を覚えた。
「それっていつだ!?今年中か?」
俺がリベルに問うとリベルは眉間に皺を寄せた。俺はその反応に嫌な予感がした。
「いつか分からない…?」
「うん…」
リベルは申し訳なさそうに答えた。俺はやる気を奮い立たせるのではなく、強制的に叩き起こした。
「やるぞ!今すぐにやるぞ!」
俺がソファから立ち上がり言うとリベルは驚いていた。俺のこんな焦った姿は滅多に見せないからだろう。
「な、何をやれば良い?」
「まず原稿だ。うろ覚えで話せないことはないけど、原稿はあるに越したことはない。そんなに詳細に書かなくても良いけど、主張したい部分とかは分かりやすいようにまとめて欲しい。後何か必要な物品とかあれば教えてくれ。ビリヤーの牙とかエクサフォン国の地図とか。」
「分かった。とりあえず書いてみて、必要になったら教える。後ジュナたち呼んできて。みんなの意見も聞きたいから。」
俺は屋敷内を風魔法で移動してジュナたちを探した。ジュナは執事と一緒に業務を体験しているところを強引に連れて行った。ユディは屋根の上で寝ていたが、そんなの気にせず連れて行った。ルリは敷地内になる池で遊んでいるところを連れて行った。ルナは書斎で本を読んでいたから普通に連れて行った。
「四人とも、俺たちはこの一年間をまとめて発生しなくちゃいけないんだけど、それを今からリベルがまとめてくれるから手伝ってくれ。」
四人は納得していないようだったが、渋々了承してくれた。それから俺を除いた五人が原稿を作り上げてくれた。俺とリベルの視点とジュナやユディたちの視点を織り込んだ一風変わった原稿ができた。
そして発表材料としてビリヤーの牙やバルンの毛皮など俺たちが討伐してきた魔物の素材を俺とユディが飛び回って集めることにした。ダンジョン内の魔物や巨木、黄金の王様などは実物を手に入れることができないから絵で再現することにした。グロウに頼むと快く引き受けてくれ、絵師に依頼することになった。ジュナがラフを書いてくれて、大まかなイメージ図ができていることから、一から描くよりかなり早く仕上がるだろう。
依頼した絵が届くまでの間俺とリベルは発生の練習をした。先生たちに発表するのだから下手な発表はできないとグロウとマイヤーが言ってきて俺とリベルの発表を毎回見てくれた。公爵家という立場である以上、先生たちの目もあるだろうからかなり熱心に指導してくれた。言葉遣いや立ち振る舞い、ジェスチャー、先生たちに絵を見せるタイミングなど、ほぼ全てのことを訂正してくれた。会社のプレゼンもこんな感じなのかなと思った。
数日後、学園長からの手紙が返ってきていた。内容を要約すると、俺が人間になったことに驚いていることと、学園生活は何とかすると書いてあった。俺は何とかするという抽象的な言葉に少し不安だったが、学園長のことだから何とかしてくれるだろうと期待した。
一ヶ月後絵師から依頼していた絵が届いた。ジュナのラフをそのまま描いてくれており、俺たちが見たものをそのまま描いてくれていた。依頼した絵は二十一階層にいたヴィシャールキーチュワ、アスレチックのようになっていた二十五階層、二十六階層にいたリヴとクルネ、二十八階層だろう階層にいたドラゴン、ダンジョンボスのシュルリーダだ。小人のバチチャなども描いてもらおうと思ったが、全部描いてもらおうとすると時間がかなりかかるため珍しい魔物や印象的だった出来事をピックアップして描いてもらった。俺たちの発表はかなりのものに仕上がり後は本番を待つのみになった。




