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転生するなら貴族の飼い猫でしょ 〜飼い猫兼相棒として異世界を旅します〜  作者: 描空
特認実習 後編

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161話 未来の冒険者

魔物が魔族の国(ラクシャスディシュ)を襲った次の日、俺たちは率先して魔物討伐に向かった。今はまだ新しい冒険者が少なく十分に戦闘経験も養えていない。そのため俺たちがなるべく強い魔物を討伐しているのだ。と言っても、新しい冒険者はほんの数人しかおらず、冒険者集めが当分の課題となっている。


俺たちが魔物を討伐して冒険者ギルドに持って行くと、その場にいた者皆が驚いていた。きっと前までの冒険者ギルドならこれぐらいでは驚かれなかっただろう。こういうところにも経験の差があるのだと実感した。俺たちが魔物討伐を率先して行うようになってから数日、ギルドの周りに子どもたちが見えるようになった。俺はその子どものことが気になり、事務として雇ったケット・シーのおばちゃんに話を聞くことにした。


「最近、ギルドの周りに子どもたちがいるみたいなんですけど、あの子たちはここで働いてる誰かのお子さんですか?」


「あーあの子たちね。何人かはそうだけど他の子たちは冒険者の両親を持ってた子たちで、今は私たちが親代わりをしているの。両親を亡くして途方に暮れていたからどうしても放っておけなくてね。それでここのみんなで親代わりをしてあげてるの。」


「そうなんですね。」


俺はその子たちの背景を知らずに躊躇いもなく聞いたことを少し後悔した。心の中ではあの子たちが冒険者になってくれれば良いなと思っていたが、おばちゃんの話を聞いてそんな考えは影も形もなくなった。


「そうだ。あの子たちに魔法を教えてくれないかしら?あの子たち、お父さんやお母さんみたいな立派な冒険者になりたいっていつも言ってるの。だからお願いできないかしら?」


願ってもない言葉に俺はすぐに返事をした。


「もちろんです!子どもたちに魔法を教えた経験あるんで!」


「それじゃあお願いするわね。」


俺は一人で窓からギルドの中を眺めている子どもたちの元に向かった。すると子どもたちが良い反応を見せてくれた。


「さっきのお兄さんだ!」

「いっぱい魔物討伐してたお兄さんだ!」

「強い冒険者のお兄さんだ!」


その場に子どもたちは十人いて、俺はその言葉を聞いて子どもたちに言った。


「強くてカッコ良いお兄さんだぞ!」


「「「イェーイ!」」」


予想外の盛り上がりように俺は嬉しくなった。


「冒険者になりたい人!」


「「「はーい!」」」


思っていた以上に子どもたちは肯定的でこれなら僅かではあるが、冒険者不足解消の一歩となるはずだ。


「それじゃあお兄さんが君たちに魔法を教えてあげよう!」


「「「わーい!」」」


「それじゃあついてきて。」


俺は前まで試験場として使われていた場所に子どもたちを案内した。試験場はある程度の広さがあり魔法を使っても誰かに被害は出たりしないためだ。


「じゃあまずは火魔法から教えていくね!」


俺はケット・シーとクー・シーの子どもたちに教えていたように教えた。冒険者の両親を持つ子どもたちだからか魔法の才能や覚えがかなり早く希望が見えてきた。それから毎日俺たちが魔物討伐を終えて帰ってくると子どもたちに魔法を教えるようになった。しばらく経つと子どもたちは剣術を習いたいと言ってきた。俺はまだユディに課されたトレーニングを完璧にこなせるようになっておらず、剣術を教えてもらっていない。この子たちに教える名目で俺にも教えてもらえないかと思いユディを呼ぶことにした。


「まず俺が課したトレーニングを完璧にできるまで剣術は教えてやらない。リフォンも例外ではないぞ。」


「「「はい!」」」


子どもたちは早速トレーニングに取り掛かった。するとユディがこちらを見てきた。まるで子どもたちはやってるのにお前はやらないのかと言っているようだった。俺は毎朝やってるから良いだろと思ったが、このまま毎朝やるだけでは足りないなとも感じていたので子どもたちと一緒にやることにした。


「お兄さんもやるの?じゃあ競争しよ!よーいスタート!」


有無を言わさない子どもの容赦なさに俺はなんとか喰らい付いた。最初は子どもにリードを許したが、最終的には俺が上回りなんとか勝利を収めた。ランニングに入る前に俺がなんとか追い越せたため勝利したが、ランニングが時間制じゃなかったら危なかった。それほど魔族と人間には身体能力の差がある。この子たちに俺たちが英才教育を施せばきっとここを守ってくれる強い冒険者になると確信した。


あれからその子たちは朝はユディのトレーニングをこなし、午後は俺が教える魔法の授業に休まず出席し一ヶ月が経った。この頃には少し肌寒い季節となっており一年の終わりを迎えつつある。残された時間を有効活用するためにも、ユディは早めに子どもたちに剣術の指導をしてくれた。俺はまだたっぷり時間が残っていることから俺は指導してもらえなかった。そんな日々を過ごしてきた子どもたちはすっかり逞しくなり冒険者と見紛うほど成長した。


その頃にはギルド長の後任も見つかっており、後残すはこの子たちだけとなった。そして俺とユディは子どもたちに卒業試験を課した。それは一人で魔物を討伐することだ。どんな魔物でも良いから一体討伐することを課した。俺は少し心配だったが、ユディは何の心配もないと俺に言った。結果はユディの言う通りで、全員がものの数時間で魔物を討伐してきて俺は驚いた。どんな魔物でも良いと言ったのに、全員ビリヤーのような少し苦戦する魔物を討伐してきた。所々怪我をしている子がいたので俺が手当てをしてあげた。みんな怪我が治る様に釘付けだった。そんな可愛い一面のある子たちが十桀と呼ばれるようになるのはまだ先のお話。

次回もお楽しみに


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