160話 別の問題
死の皇帝により壊された冒険者ギルドの再建を果たした俺たちは、冒険者ギルドが再び稼働するように役員を募集した。なぜ俺たちがギルドの役員を募集したのかというと、魔族の国の人たちがギルドの再建を果たした俺たちがギルド長となり再出発させて欲しいとの要望が数多くあったためだ。でも、俺たちは学生の身であることと後数ヶ月で特認実習が終わり学園に戻らなくてはいけないため、臨時のギルド長として役員を募集し、適任者を正式なギルド長に任命するという条件で行うことにした。
冒険者ギルドの役員は以前に勤めていた者の親戚や近しい人たちが立候補してくれたため一時的にそれでギルドの運営をしてみることにした。これがかなり良くて、バリバリ働いてくれる人ばかりだった。そんな何もかも順調そうに思えたある夜、俺たちは冒険者が大勢いなくなったことを悔やむ事件が起こった。
「魔物の群れだー!冒険者は武器を携えて正門へ!魔法使いは防壁に登り前衛の援護を!女子供老人は屋内に避難を!」
俺たちが夕食を食べている時外から大声で叫ぶ男の人の声が聞こえてきた。俺たちはすぐに正門に向かった。そこでは鎧を着込んだ自警団のような人たちが魔物を大盾で食い止めていた。自警団はかなりの人数いるが、それ以上に魔物が大勢いた。俺たちはすぐに魔法を使って魔物を一掃した。
「助かった。このままここは任せても良いか?」
俺はベテランの風格を纏っている人狼に尋ねられた。俺は力強く頷くと、その人狼は防壁伝いにどこかに向かった。
「リフォン様、ここ以外にも魔物が大勢いると思われます。我が始末致しましょうか?」
「闇魔法は使わないこと、見られないようになるべく離れた所の魔物を討伐すること分かったな?」
「承知致しました。」
そう言うとルナは翼を生やし凄まじいスピードで飛んでいった。俺たちは雪崩のようにやってくる魔物を討伐し続けた。大盾を持ってくれている自警団の人たちに疲労が見え始めた。このままではいつか前線が崩壊すると確信した俺は大盾だけに光魔法を施すことにした。大盾がかなりの枚数あったことから少し手間取ったが、なんとか光魔法を施すことができた。
「皆さんの盾に光魔法を使いました!少し休憩してください!」
俺が自警団の人たちに言うと、皆疲れていたのか膝をついた。きちんと光魔法は機能しており魔物が一斉に流れ込んでくるということはなかった。自警団の人たちはしばらく休み体力が回復すると、帯剣していた剣を抜き盾の後ろから攻撃し始めた。そんな感じでしばらく魔物を討伐しているとルナが帰ってきた。
「他の所はもう大丈夫そうです。」
俺はその言葉を聞いて安心した。でも俺たちがいる正門方面にはまだ魔物が残っており油断はできない状況だった。幸いなことにバルンなどの大型の魔物はいなかったことから大盾が機能し犠牲者は出ずに済んだ。自警団の人たちは疲れ切っており座り込んでいた。冒険者は数は少ないが、あまり疲れている様子は怪我をしている様子はなかった。自警団より冒険者の方が実戦を多く積んでいるのか実力の差は明らかだった。怪我をした人の手当をしているとさっき俺にここを任せた人狼が戻ってきた。
「大丈夫だったか?」
「はい。大丈夫でした。」
俺がそう言いながら自警団の人を手当てしていると人狼が驚きながら言った。
「光魔法が使えるのか!?なら別の所でも手当てしてやってくれないか?」
「別に良いけどどこだ?」
俺は人狼に案内してもらい別の所に向かった。そこは正門よりは大きくはないが門があり十人前後の自警団の人たちがいた。正門にいた自警団の人たちより怪我を負っていた。俺は自警団の人たちを手当てしていて気がついたけど、自警団の人たちは全員犬科の魔族だった。人狼やクー・シー、狐人などだ。耳や口の違いなど以外大きな違いがなくよく見ないと分からない程度だった。なぜ犬科の魔族のみなのかは分からないが、犬科は命令に忠実に従うからなのかなと思った。そんなことを気にしているとあっという間に手当ては終わった。
「本当に助かった。先日の一件で冒険者が大勢いなくなったから魔物を討伐する人数が減って、今回のように魔物が群れを成して襲ってきたんだ。最近はなかったから油断してた…」
なぜ魔物が群れを成すのか襲ってくる理由は何なのか分からなかった。それに冒険者がいなくなってから一ヶ月の経っていないにもかかわらず魔物たちはやってきた。それほど多くの魔物がここにやってくる理由が何もかも分からなかった。俺は何か知っていそうな人狼に聞くことにした。
「何で魔物はここを襲うんですか?」
「あー…俺たちにもいまいち分からないんだ。魔物同士で食料を奪い合うより、ここを襲って俺たち魔族を食料にするつもりなんじゃないか?それなら魔物同士な群れを成す理由にもなるだろ?」
あり得ないとまでは言えない言い分だが、どうにも腑に落ちなかった。でも今は犠牲者が出なくて良かったと安堵した。早く冒険者を集める必要があると感じた瞬間でもあった。
次回もお楽しみに




