159話 冒険者ギルド再建
死の皇帝が去ってから数日、魔族の国は悲しみのどん底にあった。冒険者の八割は殺され、その家族はただ悲しみに暮れるしかなかった。魔族の国は国と呼ばれているが、国王や領主など統治する者はいない共和政で成り立っている。だが、このような時は民衆を率いることができるリーダーが必要だ。たとえ一人が冒険者ギルドの再建をしようとしても可能性は限りなく低い。俺たちはここを離れて別の場所に行くこともできるが、ここに住んでいる人はそうはいかない。そこで俺は魔族の国を再建するために立ち上がることにした。
まずは念入りに再建計画を立てた。俺たちにはダンジョン攻略で得た財宝があるからそれを賃金として払えば問題ない。でも、冒険者という働き手を失った以上効率はガクンと落ちている。そこで、俺は自立型のロボットのような魔法を使えないかと考えた。魔力を使って働くロボットができたら労働力は賄える。
でも、その魔法のイメージは至難の業だった。風魔法で形こそできたが、動いて木を切ったり、物を運んだり、ギルドの修復作業などの複雑な動きをイメージして、時と場合に応じて動きを変える必要があるのだ。少しはイメージできるのだが、どこかでボロが出たり、動きにイメージを集中させて形が保てなくなったりと、それはそれは難しいイメージだった。
形を保つために光魔法を使用すると一体に必要な魔力量が増加し、多くのロボットを作り出せないというデメリットが生じる。でも光魔法を使わないと形の維持は難しく、難航を極めた。そんな時リベルが言った。
「良いアイデアだけど、僕たちが直接働く方が効率的じゃない?」
俺はリベルの主張を認めるしかなかった。でも、ロボットは男のロマンじゃんと言ってやりたかった。バカな俺でも今はロマンにこだわっている時ではないと理解しているため、俺たちが直接働くことにした。後は、俺たちが報酬を支払うから冒険者ギルドの再建に手を貸してくれる人物を募るだけになった。俺は学園で風魔法を用いた校内放送を思い出しやってみることにした。
『私はここでお世話になっている冒険者の一人です。先日の事件で冒険者ギルドが崩壊してしまったため、冒険者ギルドを再建したいと考えております。資材や報酬はこちらで用意するため、手伝っていただける人員を募集しております。手伝っていただける方は翌朝、冒険者ギルドの前でお待ちしております。』
俺はきちんと魔族の国にいる人たち全員に放送の声が届いたか心配だった。でも、そんな心配は必要なかったと気付かされることとなった。
翌朝、俺たちは冒険者ギルドに向かった。数十人の人員が集まれば良いなと思っていると、冒険者ギルドの方が何やら騒がしかった。俺たちは走ってギルドに向かった。すると、そこには百をゆうに超える人たちがいた。老若男女、種族を問わず多くの人がいた。俺たちはこんなに集まってくれているとは思っておらず、かなり驚いた。俺は集まってくれた人たちに風魔法を使い指示を出した。
『今から一人づつ名前を記入してもらいます。字が書けない人は名前を言ってください。皆さんの後ろにいる五人がその役目を請け負っています。ですので、均等に分かれてください。』
しばらくすると全員の名前の記入を確認した五人からグッドサインが出された。俺はそれを確認して再び全員に指示を出した。
『今から三つのグループに分かれてもらいます。まず、資材調達グループです。このグループの人には切っても良い木を選別していただきたいので、知識がある方もしくは木こりの方にお願いしたいです。次は再建グループです。このグループの人には冒険者ギルドの設計図や再建を担当していただきたいです。最後は料理グループです。このグループ人には働いていただいている方に料理を振る舞っていただきたいです。再建グループが一番労力を必要とすると思いますので、他二つのグループの人たちは自分の仕事が終わったら再建グループに入ってください。まずはグループごとに分かれてください。』
少し待つと指定したグループに分かれてくれた。そして俺たちもグループに分かれた。俺とリベルが資材グループで、ユディとルナが再建グループ、ジュナとルリが料理グループに分かれた。それから俺たちは各々役割を全うした。木こりの人に切っても良い木を教えてもらい、俺が風魔法で木を切りそれをみんなで運んだ。そして、その木を使い再建グループの人が書いてくれた設計図を基にギルドを再建した。朝昼夕のご飯は作ってもらいみんなで作業を進めた。
それから十数日で冒険者ギルドの再建は終わった。その日は全員で再建祝いをした。その晩はとても楽しいもので、その場にいた全員が親しい人を失った悲しみを乗り越えた気がした。その宴を始める前に報酬は渡しておいたためみんなご機嫌だった。俺は少しでも魔族の国の人たちの役に立てれば良いなと思っていたのが思いの外良い影響を与えれて良かった。
次回もお楽しみに




