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転生するなら貴族の飼い猫でしょ 〜飼い猫兼相棒として異世界を旅します〜  作者: 描空
ダンジョン編

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156話 魔人

俺たちはドラゴンに見逃された後最後の階層に続く階段を上っていた。するとリベルが言った。


「さっきのドラゴンは次が最後って言ってたけど、それって何階扱いになるのかな?さっきの階層が二十七階層なのは分かるけど、次は二十八階層で良いのかな?」


そんな何気ない疑問が俺たちの緊張というか、ドラゴンに対する恐怖心を少しだけ和らげることができた。


「俺はさっきの階層が三階層分で、次が三十階層だと思うな。その方がキリが良くて良いだろ?」


「俺もその方がしっかりくるからそっち派ですね。」


俺の推測にジュナが賛同してくれた。ユディもルナもうんうんと頷いており俺の推測がみんなの中で正解となった。まぁそんなことはダンジョン攻略で必要のないことだから次第に気にしなくなった。そんな会話をしながら緊張と恐怖で固まった体をほぐすためにゆっくり階段を上った。するとついに最後の階層についた。するとユディが言った。


「ご飯にしようか。」


俺たちは緊張と恐怖から空腹を感じておらずユディに言われてやっと感じた。あのドラゴンはそれほど規格外の存在なのだと再認識した。俺たちはユディの温かく安心するご飯を食べて俺たちは気合を入れ直した。さっきまでのドラゴンに恐れていた自分とはおさらばして最後の階層に足を踏み入れた。


そこはゴシック調の建物の中だった。舞踏会が開かれていそうな広間になっており、大きなステンドグラスから月明かりが七色となり差し込んでいる。俺たちはその美しさに見惚れていた。すると光の奥からコツコツと足音がした。俺たちは一気に厳戒態勢をとった。すると奥から現れたのはただの人間だった。長身の男性で貴族のような服装をしており、どこか不思議な雰囲気を纏っていた。目はつり目で服装といいキッチリとした性格なのだと受け取れる。そしてその男性が言った。


「よくぞここまで参られました。(わたくし)の名前はシュルリーダ・マネストラクと申します。以後お見知りおきを。ここまで参られました冒険者はごく僅かです。ですので、私は冒険者の皆様に最後の晩餐を振る舞っているのです。皆様もどうですか?もちろん毒などは盛りません。私は紳士ですから、誠心誠意皆様をおもてなし致します。そして、私と舞踏会(殺し合い)を楽しんでいただきます。」


俺たちはその言葉に耳を疑った。と言うより何を言ってるんだとツッコミたかった。でも相手の素性を全く理解できていない状況で迂闊に行動に出るのは良くないと思い俺たちは黙って男の話を聞き届けた。すると黙っている俺たちを見て男が言った。


「もしかしてお気に召しませんでしたか?それなら可能な限り希望に沿えるように努力致しますので何なりとお申し付けください。」


俺はコイツの思考回路が全く理解できなかった。殺し合いをしてもらうとか言いながら、期待していた反応が見えないとなると、要望を聞いてきてそれに応えると言うのだ。コイツの真意を一ミリも理解できず呆然としているとルナが言った。


「なぜこのような事を?」


ルナの毅然とした態度に俺は心から尊敬した。ドラゴンの時と言い今と言い、ルナのどんな相手に対しても恐れを知らぬ度胸に感服した。そしてシュルリーダが答えた。


「私はいつもここまで冒険者が来るのを心待ちにしています。私の元まで辿り着いた冒険者は何組かいましたが、私の実力の前では皆、あっけなくやられてしまうのです。ですから、少しでも一人ではない時間を過ごしたいと思い、このような事を始めました。大体の冒険者は数日で私に挑んできましたが、老いぼれの冒険者は天寿を全うするまで私の暇つぶしに付き合ってくれました。貴方たちはいつまで私の暇つぶしに付き合っていただけますか?」


何となく寂しそうな感じがした。こんな所に一人で冒険者が来るまで待ってなくてはいけないのだとしたら相当キツイだろう。俺はシュルリーダに同情した。だから殺してあげることにした。


「今から殺してあげます。一人で孤独に喘いでいる貴方を俺が救ってあげます。」


「それは喜ばしい提案ですね。それでは手合わせ願いたい!」


シュルリーダが突撃してきたところをユディとルナが間一髪のところで止めた。シュルリーダの剣先が文字通り俺の目の前まで迫った。するとシュルリーダはニヤリと笑い、黒い火魔法を出現させた。俺たちは驚いてその火魔法を見つめた。するとシュルリーダが言った。


「おや見たことがありませんか?これは火魔法と闇魔法を融合させた魔法です。なぜ闇魔法が使えるのかと言うと私が魔人(ノーマ)だからです。驚くかも知れませんが、現実なので受け入れてくださいね。」


そう言うとその魔法が飛んできた。俺は断絶壁を出現させて防いだ。リベルたちも現状を把握したのかシュルリーダに魔法を撃った。でもシュルリーダは風魔法を展開しているのかダメージは通っていなかった。


「私には物理攻撃も魔法攻撃も効きませんよ!私は魔法を極めすぎた結果魔人になったのですから!賢者を相手にしていると思ってかかってきなさい!」


シュルリーダは火、水、氷、雷魔法を繰り出してきた。俺たちはその猛攻に防戦一方だった。


「さっきの威勢はどうしたんですか!?私を殺してくれるんじゃないんですか!?」


シュルリーダは喋りながらも猛攻は一切止めず、俺たちが攻撃する隙を与えなかった。俺はどうすれば良いのか少し考えた。そして相手が闇魔法を使えるのなら光魔法の浄化が効くのではないかと思った。ルナに対して効いたのだからシュルリーダにも効くと感じた。でも光魔法を使おうとイメージをそっちに向けると、断絶壁の維持が疎かになるため攻撃に転じれなかった。俺は無茶を承知でユディとルナに頼んだ。


「ユディ!ルナ!一瞬で良いから奴の注意を逸らしてくれ!そうしたら俺が光魔法を使う!」


俺がそう言うと二人は見つめ合い合図を出した。二人がシュルリーダの方に向かうとこっちへの攻撃が止んだ。俺はすぐに光魔法のイメージを始めた。シュルリーダを浄化させるイメージは案外簡単にできた。そして、俺は二人がシュルリーダの注意を逸らしてくれている間に光魔法を撃った。


「ぐあああ!」


シュルリーダはかなり痛いそうな悲鳴を上げた。でもルナのように戦闘不能になるほどではなく、再びこちらに攻撃してきた。剣を持った片手でユディとルナを相手にもう片方の手では闇魔法と融合させた火、水、氷、雷魔法を撃ってきた。その凄まじい威力に断絶壁にヒビが入った。


「逃げろ!」


三人にそう言うと三人は逆に俺の断絶壁の後ろに魔法を出現させた。俺は何をしているんだと言いたかったが、その前にリベルが叫んだ。


「光魔法を!早く!」


俺はその言葉にハッとした。有効打を与えれたのは俺の光魔法だけなことから、三人は自分たちが守るから俺に攻撃を優先してもらおうとしているのだ。俺はそれに気づいた刹那今までにないスピードでイメージを完成させた。そして、ダンジョン攻略の楽しい感情を思い起こし光魔法に載せた。


「リフォン!早く…!」


三人の魔法は何度も破られていたのか腕には大量の傷ができていた。火傷や切り傷、電撃傷が見るに耐えなかった。俺は三人をこんな風にしたシュルリーダに対する恨みが湧いたが、光魔法には載せないように注意してシュルリーダに光魔法を撃った。


「ぐあああああ!」


シュルリーダの悲鳴が止むと魔法が止まった。俺は怪我をした三人の腕をすぐに回復させた。みるみるうちに三人の傷は治ったが、シュルリーダの方からバタンと倒れる音がした。俺は嫌な予感がしてすぐにそちらに向かった。ユディが全身傷だらけで倒れており、ルナも同様に傷だらけだった。俺は右手で光魔法を左手で闇魔法を使い分けて二人同時に回復させた。浅かった呼吸が次第に普段通りに戻り俺は安堵した。五人には辛い思いをさせたが、何とかシュルリーダに勝てた。そのシュルリーダの元に向かうと浅いながらも息があった。俺は何か言いたいことはないかと思い聞いた。


「遺言はあるか?」


するとシュルリーダがぽつぽつと答えた。


「と…ても、楽しい…舞踏会(殺し合い)でしたよ…」


そう言い終えるとシュルリーダの体は真っ黒になり灰となった。俺はシュルリーダが死んだのだと確信した。長く辛い人生を楽しい殺し合いで締めくくってあげられたことが救いだろう。俺は一人でシュルリーダを看取った。

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