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転生するなら貴族の飼い猫でしょ 〜飼い猫兼相棒として異世界を旅します〜  作者: 描空
ダンジョン編

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155話 予想外な結末

リベル、ジュナ、ルリが回復してから少しして俺たちは朝食を食べた。きっと長く苦しい戦いになるだろうと感じていた俺は、いつもより肉を多く入れて少しでも活力を得ようとした。ユディもルナも肉を多く入れることに否定しなかった。普段ならそんなに入れなくて良いほどの量を入れたのに否定しないということは、二人も心のどこかで俺と同じようなことを思っているのだろう。リベル、ジュナ、ルリはたくさん入っている肉に喜んでいた。でもこの先、長く苦しい戦いになるだろうから話しておくことにした。俺はリベル、ジュナ、ルリを見て言った。


「三人とも聞いて欲しい。俺たちは次の階層が最後だと感じてる。どういう意味かと言うと、次の階層は階層ボスが三体いて一度に相手にする感じになってると思うんだ。そしてその三体のボスはドラゴンだと俺の直感が言ってる。ユディもルナも俺の言うことに賛同してる。何と言うか、野生の勘がそう言ってるんだ。だから三人とも覚悟しててくれ。」


三人は俺の言うことを信じられないのかうまく話を飲み込めていなかった。でも理解してもらわないことには話が進まないと感じたが、そのまま続けることにした。


「だから二人一組でドラゴンを相手にしなくちゃならない。でも俺たちの中で前衛を張れるのはユディとルナだけだ。そこでリベルには前衛になってもらいたい。もし自信がないのなら俺が代わりに前衛に立つ。なぜリベルなのかと言うと、剣術が使えて雷魔法で俺の風魔法と同等の速度で移動できるからだ。でも相手はドラゴンだ。剣で受けることは死を意味する。だから雷魔法で移動しながら隙をついて切り込んで行く感じだ。」


俺がそう言い終えるとリベルはすぐに反論した。


「僕には無理だよ。雷魔法で移動してたやつは地面だからできたことだし、まだ完璧に扱えるわけじゃない。だからリフォンにお願いしたい…」


「分かった。それじゃあ二人一組だけど、誰が良いとかある?」


俺がみんなに聞くとみんなは首を横に振った。みんな誰とでもできるといった感じの表情をしていた。心強い仲間を持ったと嬉しくなった。


「それじゃあ俺とルリ、ユディとリベル、ルナとジュナで。もしヤバそうになったらすぐに逃げること。勝てないと思ったら助けを求めること。良いな?」


みんな力強く頷いた。俺はみんなの覚悟を信じて二十七階層に入った。そこは遠くに山が見えるごくごく普通の平原だった。誰もが一度は見たことあるような風景のそこに見慣れない生き物が一匹佇んでいた。そうドラゴンである。絵本やゲームなどで描かれているドラゴンと全く同じだった。子爵領を襲撃してきたワイバーンとは大きさや骨格が少し違うように感じた。ワイバーンは胴が長く尻尾も長くスリムな印象を受ける。それに比べてドラゴンは全身のバランスが良くがっしりとした印象を受ける。そんな風に思っているとリベルが俺の裾を掴み言った。


「こ、怖いよ…」


いつもは毅然としているリベルから到底出ているとは思えない、恐怖に歪んだ声色が俺を驚愕させた。ジュナとルリも足が震えていた。ユディとルナはいつも通りだったが、表情はどこか強張っていた。俺はドラゴンがまだこちらに向かってきていないことを確認して恐れている三人の目を見て言った。


「今から俺がおまじないをかけてやる。目を瞑ってゆっくり息を吸って吐くんだ。」


俺は女神に教えてもらった精神強化魔法を試してみることにした。魔法は自分に影響はないが、他の人には影響はある。だから自分に精神強化魔法を試してもできなかったのだ。でも今ならできる。俺の精神状況は三人よりも安定していて変化も見えやすい。試すにはまたとない機会だ。俺は深呼吸をしている三人に右手をかざし、俺のドラゴンに打ち勝とうとする心持ちを光魔法に乗せて使った。すると眩い光が俺たちを包んだ。すると、三人はさっきまで恐怖から震えていた足が止まり呼吸もいつものペースに戻っていた。三人は不思議そうにしていたが、さっきまで何の反応も示さなかったドラゴンが咆哮を上げた。俺たちはすぐに戦闘体制を取った。


「四人は魔法の準備を!ルナ!」


「分かってますよ!」


ユディとルナが先陣を切ってドラゴンに立ち向かった。ユディは地上からルナは翼と爪を生やして空中から攻撃をした。二人の攻撃はドラゴンの鱗に阻まれながらも何とか傷をつけることはできた。ドラゴンが空中に飛び上がると、ルリが待ってましたと言わんばかりに水魔法で身動きを制限させた。そこにリベルの雷魔法とジュナの火魔法が炸裂した。二人の魔法が強力すぎたのかルリの水魔法が消滅していた。ダメージは通っているようだったが、まだピンピンしていた。大きな翼を広げて滑空している姿に少しだけ少年心が疼いた。でもすぐに気持ちを切り替えてユディとルナに指示を出した。


「俺が右の翼を狙うから二人は左の翼を狙ってくれ!傷ついた翼では滑空すらできないだろ!」


俺がそう言うと二人は左の翼に一直線だ。俺はなるべく二人と攻撃タイミングを合わせたいと考えて、避けられないように火魔法をドラゴンの顔を纏わり付かせた。二人が左の翼の真下についた刹那俺は以前ワイバーンの腹を貫通させた氷魔法を二つ出現させて、その大きな翼を撃ち抜いた。二人も翼を切り破りドラゴンは痛みから声を上げて地上に落ちた。ユディとルナはその隙を見逃さず、頭部めがけて猛攻を仕掛けた。俺は先ほどの氷魔法を胴体に何本も突き刺した。リベルたちも魔法でドラゴンを攻撃した。


「やったか?」


リベルがそう言うとユディとルナが猛攻を仕掛けていた頭部辺りの土埃が晴れた。ユディの刀がドラゴンの脳天に刺さっており何とかドラゴンを討伐することができた。俺たちはドラゴンを討伐できたことから大きなため息をついた。でもまだ二体は残っているため油断はしなかった。その時遠くに見える山から空間を切り裂くような音ともに百メートルをゆうに超える超巨大なドラゴンが飛んできた。俺たちはもうお出ましかよと息を整えた。そしてそのドラゴンが俺たちの上空に来ると、翼が一度に羽ばたく風量により飛ばされそうになった。俺たちがドラゴンに立ち向かおうとした瞬間声が聞こえてきた。


「待て!」


俺たちはその声に従う他なかった。あまりの威圧感、恐怖に死が間近に迫っていることを実感させられた。そしてそのドラゴンは続けた。


「お前らは弱い。あまりにも弱い。そこの矮小なドラゴン一匹殺すのが関の山と見た。それでは足りぬ。貴様が通っている学園の長、アルフレッド・ヒューリレーンとも手合わせをしたが、あやつは強かった。これがその時の傷だ。」


そう言うとそのドラゴンは地面に降りてきて翼と腹、首にある傷を見せてきた。それぞれ違う傷跡だったため違う魔法を使ったと推測した。そしてドラゴンが続けた。


「今の貴様らではこの傷すら上書きすることは叶わん。だが、貴様らにはまだ時間が残されている。アルフレッドでは俺様を殺すことはできなかった。でも貴様らならできる。そう信じている。どうか強すぎた俺様を貴様らの手で眠らせて欲しいのだ。」


そう言うとドラゴンは頭を下げた。俺たちはその行動の真意がわからず、ただ呆然とするしかなかった。その時ルナが言った。


「我らのメリットは?」


俺は何を聞いているんだと怒りそうになったが、ドラゴンに対する恐怖心から言えなかった。するとドラゴンはルナを睨み言った。


「今は殺さないでやる。」


「はぁ…」


ルナはため息をついた。どうやら従うしかないと悟ったのだろう。俺は今死なないのなら何でも良いと思った。そしてルナが続けた。


「分った。期限は我ら全員が生きて貴様を殺すまでか?」


「いや誰が一人だけでも良い。だが、俺が見た未来では貴様ら全員が揃っていた。然るべき時はいつかやってくる。その時俺様を殺してくれたら良い。」


「なら我らを次の階層に案内してくれ。」


「次が最後だ。そこで死ぬんじゃないぞ。」


そう言うとそのドラゴンは自分の背中に乗るように促した。俺はみんなと風魔法で飛び恐る恐る背中に乗った。背中は地面のように硬く広かった。


「落ちるなよ。」


ドラゴンがそう言った刹那物凄い重力を感じた。一気に十歳ほど老けたように感じるほどの重力に俺は驚いた。みんなも目を丸くしていた。少しすると山の頂上についた。そこには空中に浮かぶ扉があった。どこに繋がっているのか見当もつかないでいるとドラゴンが早く扉に入るように急かしてきた。でも俺は一つだけ聞きたいことがあり扉を閉める前に聞いた。


「次が最後って言ってましたけど、最後の相手はどんな奴ですか?」


「さぁな。」


風圧で扉を閉められた俺は立ち尽くした。おそらくあのドラゴンのことだから知ってたのだろうが、あえて言わなかったのだろうか。そんなことを考えているとルナを除くみんなが大きなため息をついた。そして口々にさっきのドラゴンはヤバかっただの殺してくれって何だよだの言っていた。いつものみんなだと少しだけホッとした。さっきまでの恐怖心が嘘のように消えた。そして俺たちは最後の階層に向かった。

次回もお楽しみに


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